FIAがF1予選の“抜け穴”を封鎖 メルセデスとレッドブルの手法に制限

2026年F1レギュレーションは、導入直後からいくつかの抜け穴を浮かび上がらせてきたが、今回の件はその象徴的な事例といえる。
安全確保のために定められた電力制御機能が、予選専用のパフォーマンス獲得手段として使われ始めたことで、FIAは本来の目的外使用を認めない姿勢を明確にした。
予選終盤で使われていた“緊急オーバーライド”
2026年F1の複雑なパワーユニット規則では、マシンが突然大きく減速して危険を招くことを防ぐため、電力は段階的に減少させることが義務づけられている。
しかし、この制御はMGU-Kを停止し、緊急用のオーバーライド機能を用いてエネルギーを一気に使い切ることで回避可能だったという。本来であればライン通過に向けて毎秒50kWずつ出力が下がるところ、この方法を使えば50〜100kWの上乗せ効果が得られるとされた。
その代償として、MGU-Kは60秒間ロックアウトされる。ただ、予選ラップ終了後はドライバーが大幅にペースを落として走るため、この不利益は実質的な痛手になりにくかった。
オーストラリアと日本で実戦使用
この手法は、該当するパワーユニットを搭載する複数チームによって、オーストラリアGPとF1日本GPで使われていたとされる。いずれもラップ終盤、フィニッシュラインまでの区間で活用されていたという。
効果自体は大きなものではなかったとみられるが、実際に採用されていた以上、現場では明確なメリットがあると判断されていたことになる。
日本GPでは、この方法に伴う副作用も表面化した。アレクサンダー・アルボンは予選シミュレーション後のトラブルによってコース上でストップを強いられ、他のドライバーたちもMGU-Kのロックアウトによる影響を受けたとされる。
FIAは“本来の用途に限る”と通達
今回、Crash.netによると、FIAは各チームに対して文書を送り、標準電子制御ユニットのソフトウェア内にあるこの機能は、あくまで本来想定された緊急用途に限って使用されるべきだと通知したという。
その中では、予選でこれを常態的なパフォーマンス獲得手段として使うことは認められないと明記されたとされる。形式上はルール文言の範囲内であったとしても、統括団体としては競技上の慣行として広がることを問題視した格好だ。
一方で、60秒のロックアウト措置そのものは維持される見通しとなっている。テレメトリーによって、本当に緊急事態だったのかどうかは容易に判別できるため、FIAとしてはそれ自体が十分な抑止力になると考えているようだ。
フェラーリも懸念を示していた
この手法については、フェラーリが特に強い懸念を示していたという。フェラーリ側も、規則の文言上は合法であること自体は認めていたが、こうした使い方が常態化していくことには否定的だった。
2026年F1では、エネルギーマネジメントと安全性の両立がレギュレーションの根幹にある。その中で、緊急用の制御が予選アタックの一部として使われるようになれば、制度設計そのものの意図が揺らぎかねない。今回の通達は、レギュレーションの解釈をめぐる駆け引きがすでに新たな段階に入っていることを示している。
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