FIA会長スライエムがF1“V8回帰”を再主張「780馬力と美しいサウンドを」

2026年F1レギュレーション導入直後にもかかわらず、すでに2027年以降の方向性を巡る議論が活発化しているなか、ビン・スライエムは「シンプルさ」と「コスト削減」をキーワードに、持続可能燃料を組み合わせた軽量V8ハイブリッドを理想像として提示した。
“V8回帰”を諦めないFIA会長
モハメド・ビン・スライエムは『Forbes』のロングインタビューで、将来のF1パワーユニットについて次のように語った。
「モータースポーツ全体の環境負荷を考えれば、年間で0.02%程度だと思う。しかし我々FIAには責任がある。我々は常に“問題の一部ではなく、解決策の一部でなければならない”と言っている」
「そして現在は、すでに利用可能な持続可能燃料がある。我々は正しい形で未来を構築できる」
「以前のエンジン(2014〜2025年のV6ターボハイブリッド)は、実質的には現在のエンジンとほぼ同じだ。ただMGU-Hを取り除き、MGU-Kだけを残した。しかし我々にはシンプルさが必要だ。それこそが前進するための鍵だ」
「だからこそ、新しいエンジンとしてV8について議論している」
FIA内部では以前から“V8回帰論”が存在していたが、今回の発言では単なる懐古主義ではなく、“軽量・低コスト・持続可能燃料”を組み合わせた現代型V8構想として位置付けられている点が特徴だ。
2030年 コンコルド協定後を見据えた布石
ビン・スライエムは、2030年末に期限を迎えるコンコルド協定後を強く意識していることも明かした。
「2030年末には、FIAはチーム投票を経ずにエンジンを決定する権限を取り戻す」
「しかし我々は1年前倒しで実現したい。なぜならコスト削減という財務的メリットがあるからだ」
現在のF1パワーユニット開発費は、メーカー間競争の激化によって年間2億ユーロを超えるとも言われている。ビン・スライエムは、これをF1最大級の問題として捉えている。
「研究開発費は2億ユーロを超えている。今のパワーユニットは市販車にも反映されていない」
「世界全体でも、EVへの考え方が変わり始めている」
「環境改善の方法はEVだけではない。持続可能燃料もあるし、小型の電動システムを組み合わせることもできる」
現在のF1では“電動化=正義”という流れが続いてきたが、ここに来てFIAトップ自らが“完全電動偏重への疑問”を公然と口にし始めた形だ。

“780馬力・600kg台”という理想像
今回の発言で特に注目を集めたのは、ビン・スライエムが将来のF1マシン像をかなり具体的に語った点だ。
「我々は、エンジン価格が150万ユーロもしないようにしたい」
「現在はトランスミッションだけで900万ユーロもする。これが現実だ」
「だからこそFIAが介入する必要がある」
「我々は競技レベルに見合った、持続可能なエンジンを実現できると確信している」
「そして軽量であるべきだ。私は元ドライバーだから分かるが、重量はドライバーにとって最悪の要素のひとつだ」
「現在のマシンはあまりにも巨大だ。30kg軽量化されたとはいえ、まだ十分ではない」
「600〜620kg程度まで戻そう」
「780馬力、美しいサウンド、そして手頃なコスト。それこそがF1を最も良い形で支える方法だ」
この“600kg台・780馬力・V8サウンド”という構想は、現在の重量級ハイブリッドF1マシンへの反動とも言える。
F1は“V8回帰”へ本当に動くのか
現時点で2026年F1レギュレーションは始まったばかりであり、メーカー各社は巨額投資を続けている。特にアウディやホンダは、新世代パワーユニット計画を前提にF1参戦を決断しており、短期間での方向転換は簡単ではない。
一方で、FIAとFOM内部では「現在のパワーユニットは複雑すぎる」「コストが高すぎる」「車重増加が限界に達している」という危機感が急速に強まっている。
ビン・スライエムの発言は単なる理想論ではなく、2030年前後を見据えた“次のF1哲学”を示し始めたものと言えそうだ。
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