フェラーリEV「ルーチェ」に批判殺到 元会長モンテゼーモロ「跳ね馬を外して」

4ドア・5シーターという従来のフェラーリ像から大きく逸脱したコンセプトに加え、アップル元デザイン責任者ジョニー・アイブ率いる「LoveFrom」が手掛けた未来的なデザインも賛否を呼び、発表直後にはフェラーリ株が一時8%超下落。政界、元経営陣、投資家、そして熱狂的ティフォシまで巻き込んだ“フェラーリらしさ”を巡る論争へと発展している。
“フェラーリではない” イタリア国内で批判噴出
イタリアの副首相兼運輸相マッテオ・サルヴィーニは、SNSでルーチェを痛烈に批判した。
「電動で、極めて高価(55万ユーロ/約1億175万円)で、見た目も見ての通りだ。まるでフェラーリには見えない。これが“革新”なのか? エンツォ・フェラーリが見たら何と言うだろうか?」とサルヴィーニは投稿した。
この発言は、フェラーリ最大株主であるエルカーン=アニェッリ家との政治的緊張をさらに高める可能性も指摘されている。
さらに、元フェラーリ会長ルカ・コルデロ・ディ・モンテゼーモロも強い危機感を示した。
「我々は神話を破壊しようとしている。あのクルマには跳ね馬(プランシングホース)のエンブレムを外してほしい」
モンテゼーモロはさらに「少なくとも中国メーカーは真似しないだろう」と皮肉交じりに語っている。
イタリアの中道系政治家カルロ・カレンダも、フェラーリやステランティスを支配するアニェッリ家を批判し、「イタリア産業の象徴を破壊している」と攻撃した。
フェラーリ株は急落 市場も“困惑”
市場の反応も冷淡だった。
フェラーリのミラノ上場株は発表翌日に8.4%下落。ニューヨーク市場でも5%超の下落となった。
投資会社AcomeA SGRのファビオ・カルダートは「フェラーリは今、美的失望感によって罰せられている」と指摘した。
さらに「EVモデル拡大への懸念が以前から存在していた」と述べ、今回の反応は単なるデザイン問題に留まらないとの見方を示している。
SNS上でも、
■ 「フェラーリに見えない」
■ 「アップルカーみたいだ」
■ 「SUVでもGTでもない中途半端な存在」
といった声が相次いだ。

“アップル的フェラーリ”という挑戦
ルーチェ最大の特徴は、その従来路線との決別にある。
4ドア・5人乗りという実用性重視の構成に加え、ボディカラーには淡いライトブルーを採用。鋭いエアロや攻撃的な造形を特徴としてきた従来フェラーリとは大きく異なる。
デザインを担当したのは、アップルでiPhoneやMacを手掛けたジョニー・アイブ率いるLoveFromだ。
フェラーリの最高商務責任者エンリコ・ガリエラは「既存モデルに単にバッテリーを載せるだけでは意味がない」と説明した。
さらに「我々はゲームチェンジャーとなる存在を目指している。まったく異なる言語で語るクルマだ」と語っている。
フェラーリ側は従来顧客を維持しつつ、新しい富裕層への拡大を狙っている。
狙いは“中国とシリコンバレー”
ルーチェは単なるEV化ではなく、顧客層の刷新も狙っている。
フェラーリは、中国市場で急拡大する高級EV需要を重視しており、さらにシリコンバレーを中心としたテック業界の富裕層もターゲットに据えている。
ロイターによれば、フェラーリ購入者の多くは複数台を所有するコレクター層であり、同社はその“第2、第3のフェラーリ”としてルーチェを位置づけている。
ただし、問題は「フェラーリのブランド価値を維持したまま電動化できるのか」という点だ。
フェラーリはこれまで、
■ 内燃エンジンの官能的サウンド
■ 軽量・高回転型スポーツカー
■ レース由来の情熱
をブランドの核としてきた。
ルーチェは、その哲学そのものを書き換える挑戦でもある。
F1でも進む“電動化”とのリンク
興味深いのは、ルーチェ発表にルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレールが参加した点だ。
現在のF1はハイブリッド化が進み、2026年からは電動比率50%の新PUレギュレーションが導入される予定となっている。
つまり、フェラーリはロードカーとF1の双方で“電動化時代”へ舵を切っている。
しかし皮肉にも、そのF1パドックでは今まさに、
■ V8回帰論
■ EV比率見直し
■ “F1らしい音”の復活
を巡る議論が激化している。
ルーチェへの拒否反応は、単なるデザイン論争ではなく、“フェラーリとは何か”“モータースポーツとは何か”というイタリア的価値観そのものへの抵抗とも言える。
フェラーリは今、EV市場への参入以上に、“伝統と未来の両立”という極めて難しい戦いに踏み込んでいる。
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