F1シンガポールGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想
2025年F1 シンガポールGP 決勝で各ドライバーが使用可能な持ちタイヤ数と予想されるタイヤ戦略を公式タイヤサプライヤーのピレリが発表した。

ジョージ・ラッセルが通算8回目、今季2回目のポールポジションを獲得し、重要なシンガポールGPグリッドは例年と少し異なる顔ぶれとなった。彼の隣にはマックス・フェルスタッペンが並び、チャンピオンシップの勢いを保ちながらも、やや精彩を欠くマクラーレン勢の前からスタートする。

マリーナ・ベイでは例年、スタート位置の重要性が非常に高いが、近年のレイアウト変更によってストレートが1本増え、DRSゾーンが4つに拡大されたことで、オーバーテイクの可能性がわずかに広がっている。

昨年はどうだった?
昨年はP17までの全ドライバーが1ストップ戦略を採用し、ほとんどがミディアム→ハードの順で走行した。トップ10のうち9人がこのルートを選び、ピットインのタイミングは13〜38周目までと幅広かった。興味深いのは、最も早くピットに入ったカルロス・サインツも、最も遅くまで引っ張ったオスカー・ピアストリも、いずれもポジションを上げてフィニッシュしたことだ。

ランド・ノリスはポールからスタートし、全周回をリードして優勝。戦略はシンプルで、2位のフェルスタッペンをカバーする形だった。フェルスタッペンは29周目にピットイン、ノリスは翌周に反応してピットに入り、首位を守り切った。

その後方では戦略が複雑化した。ルイス・ハミルトンは3番手スタートからソフト→ハード戦略を試したがうまくいかず、チームメイトのラッセルとピアストリに抜かれ、最終的に6位でフィニッシュ。

角田裕毅はミディアム→ソフトで33周目にピットインし、12位でフィニッシュ。さらに後方のストロール、ジョウ、ボッタスはハード→ミディアムを選んだが、いずれも順位を上げることはできなかった。

F1シンガポールGP

今年の最速戦略は?
ピレリは2025年シーズン、2024年に明確な1ストップだったサーキットで全体的に柔らかい配分を試している。しかしシンガポールではオーバーヒートの懸念があるため、今年もC3・C4・C5を選択した。

したがって、今年も基本的にはミディアム→ハードが主流になる見込みだ。
最適なピットウィンドウは26〜32周目あたりとされている。昨年同様、アンダーカットを巡る戦略的な駆け引きが予想される。

トップ10に別の選択肢はある?
昨年、ハミルトンが採用したソフト→ハード戦略は失敗に終わったが、今年のタイヤはより耐久性が高い。マリーナ・ベイはオーバーテイクが少し容易になったとはいえ、依然として「トラックポジション」が最重要だ。

そのため、オープニングラップでポジションを稼ぐ目的でC5ソフトを使う誘惑もあるだろう。

この場合、ピットウィンドウは20〜26周目と早まり、柔軟性は落ちるが、ミディアムスタート勢に早めの反応を迫ることもできる。

ピレリのモータースポーツディレクター、マリオ・イゾラはこう説明する。

「このソフトタイヤは十分レースに使える。ミディアムよりグリップレベルが高いので、スタート直後に良いポジションを得るためにソフトでスタートするドライバーがいてもおかしくない」

シンガポールグランプリ

グリッド後方勢の戦略は?
昨年はハード→ミディアムの逆戦略が成功しなかったが、それはセーフティカーが一度も出なかったという、シンガポールでは極めて珍しい展開によるものだ。

今年は予選失格となったウィリアムズ勢、そして角田裕毅らが、ハード→ミディアムで後半のペースを活かす可能性がある。
この場合、最適なピットウィンドウは32〜38周目あたり。

2ストップはあるか?
2ストップは現時点で有力とは言えないが、トータルペースではそこまで不利ではない。今年からピットレーンの制限速度が60km/hから80km/hへ引き上げられ、ロスタイムが減少したからだ。

プラクティスのデータでは、グリーンフラッグ下のピットストップ損失が28.5秒から22.8秒へ短縮。セーフティカーまたはVSC下では15秒から11.5秒にまで減るという。

ドライバーたちはいずれもミディアム1セット、ハード1セットのみを決勝に持ち込んでおり、2ストップはあくまで状況次第の「機会的」な選択にとどまるだろう。
もっともあり得るのは、ソフトスタート勢が距離を稼げず、途中で方針転換するケース。ソフト→ミディアム→ハードの場合、1回目のピットは13〜19周目、2回目は34〜40周目になる。

F1 シンガポールGP

天候は?
レース中ににわか雨が降る可能性はあるが、シンガポールGPでは常に存在する「お約束程度の確率」にすぎない。

気温は約30℃で安定し、路面温度はスタート時の36℃からフィニッシュ時にかけて34℃まで緩やかに下がる見込み。湿度は極めて高く、ピットレーンに立つ誰もが「服を着たままシャワーを浴びている」ような状態になる。

FIAは「ヒートハザード」を発令し、史上初めてドライバー冷却システムの装着を義務化。ただし使用は任意であり、装着義務のみが課されている。いずれにしても、マリーナ・ベイの夜の光の下で、ドライバーたちにとっては過酷なレースとなることは間違いない。

2025年のF1世界選手権 シンガポールGP

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カテゴリー: F1 / F1シンガポールGP / ピレリ