2026年F1はクリッピングが消える? FIAが導入する「バーン・フォー・チャージ」
2026年F1レギュレーションに向けて、FIA(国際自動車連盟)はエネルギーマネジメント面での大きな課題となる「クリッピング」への対策を進めている。

その中核をなすのが、内燃エンジンを積極的に活用して電力回生を行う新たな運用概念「バーン・フォー・チャージ(burn for charge)」だ。これはMGU-Kで回収・使用されるエネルギーを安定的に管理し、急激な出力低下を防ぐために設計された仕組みである。

電動比率拡大が招く“慢性的クリッピング”の懸念
2026年F1では、バッテリー容量(デルタ・ステート・オブ・チャージ)が最大4MJに制限される一方、電動出力は最大350kWに達する。これはパワーユニット全体に占める電動要素の比重が大きくなることを意味する。

理論上、ストレートでMGU-Kの出力をフルに使い続けると、約11秒でバッテリーが枯渇する計算になる。この状況が続けば、ストレート終盤で電動出力が途切れる「慢性的クリッピング」が発生し、推進力が大きく低下する。これはチームにとって許容できないシナリオだ。

フェルスタッペンが示した危機感
この問題については、以前からドライバー側からも懸念が示されてきた。2025年シーズン中、マックス・フェルスタッペンは次のように語っている。

「モンツァのストレートを全開で走って、ブレーキングの400〜500メートル手前でエネルギーが切れてしまい、シフトダウンを強いられるような状況は、正しい方向だとは思えない。」

この発言が指していたのは、電動出力が突然失われることで起きる極端なクリッピングだ。過去にはスパ・フランコルシャンでも、似た現象が見られていた。

2026年はソフトウェア管理が決定的要素に
FIAは、2026年以降はエネルギーマネジメントを担うソフトウェアの重要性が飛躍的に高まると見ている。各チームのピットウォールには、エネルギー回生と配分を専門に担当する技術者が配置される予定だ。

これにより、フェルスタッペンが懸念したような極端な状況は緩和される見込みである。さらにFIAは「ランプダウン」と呼ばれる制御も導入し、電動出力が瞬間的にゼロになることを防ぐ。これは中央制御ユニットによって管理され、急激な性能低下で特定のマシンが不利になる事態を避ける狙いがある。

国際自動車連盟 F1 2026年のF1世界選手権

段階的な出力低下と回生の現実
新レギュレーションでは、電動出力は時速290kmを超えると徐々に低下し、355km/hで完全にゼロになる。この仕組みによって、ドライバーが感じる加速低下はより穏やかなものになる。

一方で、理論計算では約11〜12秒のフルブレーキングがあればバッテリーを満充電できるとされる。しかし2026年マシンは制動効率が非常に高く、多くのサーキットではそこまで長い減速時間を確保できない。そのため、ブレーキングだけに頼った回生では不十分となる。

「バーン・フォー・チャージ」という解決策
そこで導入されるのが「バーン・フォー・チャージ」だ。これは内燃エンジンに通常以上の負荷をかけることで、コーナリング中などでもエネルギー回生を可能にする仕組みである。

当然ながら燃料消費は増加するため、エネルギー回生量と燃費のバランスをどう取るかが技術陣の腕の見せ所となる。この妥協点を見極める上で、パワーユニット全体の効率が極めて重要になる。

有利と見られるメーカー、そして拮抗の構図
エネルギー回生と蓄電効率に優れるパワーユニットを持つメーカーは、自然と有利な立場に立つ。現時点ではメルセデスがこの分野で優位と見る声が多い。

ただし、フェラーリも自社パワーユニットに強い自信を示している。パワーユニット部門を率いるエンリコ・グアルティエリは、効率面で競争力のある特性を備えていると強調している。

FIAの技術責任者であるニコラス・トンバジスの主導のもと進められるこれらの対策が、2026年F1でどこまで均衡した戦いを生み出すのか。その答えは、実戦が始まるまで待つしかない。

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カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟) / F1マシン