レッドブルF1特集:佐藤琢磨&マックス・フェルスタッペン 特別対談
レッドブル・レーシングのポッドキャスト『Talking Bull』にインディ500ダブルウイナーである佐藤琢磨がゲスト出演し、マックス・フェルスタッペンとレースに関する様々な話題について語り合った。
アストンマーティン・レッドブル・レーシングのポッドキャスト『Talking Bull』の最新エピソード(英語音声)に2度目のインディ500制覇を成し遂げた元F1ドライバー佐藤琢磨がゲスト出演し、マックス・フェルスタッペンフェルスタッペンとホンダやレースの話で盛り上がった。
ホンダのF1初優勝マシンRA272(1965年)をドライブ
マックス・フェルスタッペンと佐藤琢磨が初めて出会ったのは、2019シーズンの日本GP前に行われた企画だった。
「マックス・フェルスタッペンがF1マシンをドライブして僕がRA272をドライブしたんですが、実にスペシャルな体験でしたね」と佐藤琢磨は振り返った。
マックス・フェルスタッペンも、当日少し試乗できたRA272の印象について、1960年代のF1マシンはそれまで慣れ親しんできたマシンとは全く異なるものだったと振り返った。
「RA272はマニュアルシフトだから、クラッチを使わなきゃいけなかった。こういうマシンをドライブできるチャンスは滅多にないから、素晴らしい体験になったよ。コックピットに収まるには僕の身長は高すぎると思ったけど、なんとか収まることができてよかったよ。腕が窮屈だったけれど、なんとか押し込んだ」
佐藤琢磨は次のように付け加えた。
「僕はスペースにかなり余裕がありましたね(笑)。現代のマシンとはドライビングポジションが全然違いますし、信じられないことにシートベルトもありません。このマシンに乗った当時のドライバーたちがどうやってニュルブルクリンクやインディ500を限界ギリギリで走っていたのか想像もつきませんね。インディはターマックではなくレンガでしたし。このマシンでレースしていたなんて驚きです。RA272は名車ですし、美しいマシンなので、マックス・フェルスタッペンも僕もドライブ中は満面の笑みでした」
エアロスクリーンを装備したインディカーマシンのドライブ
マックス・フェルスタッペンと佐藤琢磨は、F1ドライバーがインディカーに乗り換えた際のフィーリングについて語り合った。佐藤琢磨は次のように語った。
「F1とインディカーはルックスこそ似ていますが、完全な別物です。インディアナポリス・モータースピードウェイのインフィールドに立って、予選アタックするインディカーマシンを見れば分かりますが、インディカーは時速245マイル(約394km/h)でコーナーに進入し、あっという間に抜けていくんです。ものすごい迫力ですよ。僕はインディカーのすべてを学ぶためにとにかく努力しました。F1での7年間は忘れ、このマシンをオーバルコースでドライブする方法を楽しみながら学んでいこうという感じでしたね」
マックス・フェルスタッペンはシミュレーターでしかインディカーを走らせた経験がないが、インディカーを気に入っている。
「F1とは別物だけど、ドライブはすごく楽しい。様々なタイプのマシンをドライブするのは面白いし。F1マシンばかりドライブしていると少し行き詰まりを感じてしまうから、他のマシンにトライするのは良いことだよ。自分に負荷をかけてそこから学びを得られれば、より優れたドライバーになれる。シミュレーターにはGフォースもないし、クラッシュしてもボタンを押してリセットするだけだから、シミュレーターと現実が違うのは分かっている。現実の方がはるかにチャレンジングだ。インディカーはロードコースなら楽しめるけど、オーバルでは楽しめないと思う」
2人の話題はそのままレッドブル・アドバンスド・テクノロジーが開発したインディカー用エアロスクリーンへ移った。
「エアロスクリーンは安全性が優れているらしいね。ハロも最初は慣れる必要があったし、決してルックスが良いとは思えなかったけど、結局のところ安全性のためにあるものだし、実際かなり役立っているから素晴らしいよね」と語るマックス・フェルスタッペンが、「ところで佐藤琢磨、エアロスクリーンだとマシンの中が少し暑いんじゃない?」と尋ねると、佐藤琢磨は次のように回答した。
「そうだね、相当暑いよ。インディカーのコックピット内は約65°Cになると言われています。実はヘルメットに導風装置が取り付けられいて、かなり効果があるんです。オープンコックピットより風通しが良いくらいですよ。ですが、マックス・フェルスタッペンが言うように安全性が最優先で、オープンコックピットでデブリが飛んでくるのは恐怖ですので、今はドライバーがしっかりと保護されています。だから、マックス・フェルスタッペン、君がインディカーに転向してウォールにクラッシュしても心配は無用だよ。すごく安全だから(笑)」
F1の表彰台に立つ感覚
佐藤琢磨はBAR在籍時の2004シーズンにF1の表彰台を経験している。当時はフェラーリが最強マシンとして君臨していたため、佐藤琢磨は現在のマックス・フェルスタッペンが置かれている境遇に理解を示した。
「F1の表彰台に立つのはとにかく最高の気分です。表彰台に立つまで長い時間がかかりましたが、観客全員が目の前で手を振ってくれている様子や、チームのみんなが涙を流して感情をあらわにしていた姿は一生忘れられません。あの表彰台に辿り着くまで、途方もない努力と時間を重ねてきましたからね。僕の場合は3位でしたが、ミハエル・シューマッハ、ルーベンス・バリチェロと並んで表彰台に立つというのは本当に特別な瞬間でした」
マックス・フェルスタッペンは次のように続けた。
「表彰台の頂点に立つのが最高なのは間違いないんだけど、現実的になる必要もあるよね。自分が全力を尽くした実感があれば、2位や3位で満足できる。圧倒的な強さを持ったチームがいることを認めなければならないし、表彰台に立てたことに感謝しなければならない。表彰台でシャンパンを振りまくのはいつだって良い気分だよ」
レースができるのなら過密スケジュールも苦ではない
世界が激変している2020年を踏まえ、マックス・フェルスタッペンと佐藤琢磨はこの異例の状況でもレースができる幸せについて語った。
佐藤琢磨は次のように語った。
「実際にレースができていることに感謝すべきですね。たとえば、パンデミックの影響でオリンピックアスリートたちは競技活動ができていませんが、僕たちはレースができています。無観客は寂しいですが、ファンが自宅で安全にレースを観戦できていることが重要です。今年はダブルヘッダーが続く異例のスケジュールで、次から次へ予選と決勝がやってくるのでストレスが溜まりますが、レースができることに感謝すべきだと思いますし、来年は通常に戻ることができればと願っています」
マックス・フェルスタッペンも観客がいないサーキットは雰囲気が異なるとし、次のように続けた。
「ドライブ中はまるでテストセッションのように感じてしまうけれど、ドライブができていて、ほぼ予定通りにシーズンを進められていることに満足しなきゃならない。ファンがサーキットにいないのは残念だけど、僕たちはできるだけ最高のショーを提供できるように頑張っている。できるだけ早く通常に戻れることを願っているよ」
『Talking Bull』では、マックス・フェルスタッペンと佐藤琢磨のキャリアの始まりやトロフィーの変遷、佐藤琢磨がヨス・フェルスタッペン(言わずと知れたマックス・フェルスタッペンの父)とレースした時の思い出などについても触れられている。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / 佐藤琢磨 / マックス・フェルスタッペン
アストンマーティン・レッドブル・レーシングのポッドキャスト『Talking Bull』の最新エピソード(英語音声)に2度目のインディ500制覇を成し遂げた元F1ドライバー佐藤琢磨がゲスト出演し、マックス・フェルスタッペンフェルスタッペンとホンダやレースの話で盛り上がった。
ホンダのF1初優勝マシンRA272(1965年)をドライブ
マックス・フェルスタッペンと佐藤琢磨が初めて出会ったのは、2019シーズンの日本GP前に行われた企画だった。
「マックス・フェルスタッペンがF1マシンをドライブして僕がRA272をドライブしたんですが、実にスペシャルな体験でしたね」と佐藤琢磨は振り返った。
マックス・フェルスタッペンも、当日少し試乗できたRA272の印象について、1960年代のF1マシンはそれまで慣れ親しんできたマシンとは全く異なるものだったと振り返った。
「RA272はマニュアルシフトだから、クラッチを使わなきゃいけなかった。こういうマシンをドライブできるチャンスは滅多にないから、素晴らしい体験になったよ。コックピットに収まるには僕の身長は高すぎると思ったけど、なんとか収まることができてよかったよ。腕が窮屈だったけれど、なんとか押し込んだ」
佐藤琢磨は次のように付け加えた。
「僕はスペースにかなり余裕がありましたね(笑)。現代のマシンとはドライビングポジションが全然違いますし、信じられないことにシートベルトもありません。このマシンに乗った当時のドライバーたちがどうやってニュルブルクリンクやインディ500を限界ギリギリで走っていたのか想像もつきませんね。インディはターマックではなくレンガでしたし。このマシンでレースしていたなんて驚きです。RA272は名車ですし、美しいマシンなので、マックス・フェルスタッペンも僕もドライブ中は満面の笑みでした」
エアロスクリーンを装備したインディカーマシンのドライブ
マックス・フェルスタッペンと佐藤琢磨は、F1ドライバーがインディカーに乗り換えた際のフィーリングについて語り合った。佐藤琢磨は次のように語った。
「F1とインディカーはルックスこそ似ていますが、完全な別物です。インディアナポリス・モータースピードウェイのインフィールドに立って、予選アタックするインディカーマシンを見れば分かりますが、インディカーは時速245マイル(約394km/h)でコーナーに進入し、あっという間に抜けていくんです。ものすごい迫力ですよ。僕はインディカーのすべてを学ぶためにとにかく努力しました。F1での7年間は忘れ、このマシンをオーバルコースでドライブする方法を楽しみながら学んでいこうという感じでしたね」
マックス・フェルスタッペンはシミュレーターでしかインディカーを走らせた経験がないが、インディカーを気に入っている。
「F1とは別物だけど、ドライブはすごく楽しい。様々なタイプのマシンをドライブするのは面白いし。F1マシンばかりドライブしていると少し行き詰まりを感じてしまうから、他のマシンにトライするのは良いことだよ。自分に負荷をかけてそこから学びを得られれば、より優れたドライバーになれる。シミュレーターにはGフォースもないし、クラッシュしてもボタンを押してリセットするだけだから、シミュレーターと現実が違うのは分かっている。現実の方がはるかにチャレンジングだ。インディカーはロードコースなら楽しめるけど、オーバルでは楽しめないと思う」
2人の話題はそのままレッドブル・アドバンスド・テクノロジーが開発したインディカー用エアロスクリーンへ移った。
「エアロスクリーンは安全性が優れているらしいね。ハロも最初は慣れる必要があったし、決してルックスが良いとは思えなかったけど、結局のところ安全性のためにあるものだし、実際かなり役立っているから素晴らしいよね」と語るマックス・フェルスタッペンが、「ところで佐藤琢磨、エアロスクリーンだとマシンの中が少し暑いんじゃない?」と尋ねると、佐藤琢磨は次のように回答した。
「そうだね、相当暑いよ。インディカーのコックピット内は約65°Cになると言われています。実はヘルメットに導風装置が取り付けられいて、かなり効果があるんです。オープンコックピットより風通しが良いくらいですよ。ですが、マックス・フェルスタッペンが言うように安全性が最優先で、オープンコックピットでデブリが飛んでくるのは恐怖ですので、今はドライバーがしっかりと保護されています。だから、マックス・フェルスタッペン、君がインディカーに転向してウォールにクラッシュしても心配は無用だよ。すごく安全だから(笑)」
F1の表彰台に立つ感覚
佐藤琢磨はBAR在籍時の2004シーズンにF1の表彰台を経験している。当時はフェラーリが最強マシンとして君臨していたため、佐藤琢磨は現在のマックス・フェルスタッペンが置かれている境遇に理解を示した。
「F1の表彰台に立つのはとにかく最高の気分です。表彰台に立つまで長い時間がかかりましたが、観客全員が目の前で手を振ってくれている様子や、チームのみんなが涙を流して感情をあらわにしていた姿は一生忘れられません。あの表彰台に辿り着くまで、途方もない努力と時間を重ねてきましたからね。僕の場合は3位でしたが、ミハエル・シューマッハ、ルーベンス・バリチェロと並んで表彰台に立つというのは本当に特別な瞬間でした」
マックス・フェルスタッペンは次のように続けた。
「表彰台の頂点に立つのが最高なのは間違いないんだけど、現実的になる必要もあるよね。自分が全力を尽くした実感があれば、2位や3位で満足できる。圧倒的な強さを持ったチームがいることを認めなければならないし、表彰台に立てたことに感謝しなければならない。表彰台でシャンパンを振りまくのはいつだって良い気分だよ」
レースができるのなら過密スケジュールも苦ではない
世界が激変している2020年を踏まえ、マックス・フェルスタッペンと佐藤琢磨はこの異例の状況でもレースができる幸せについて語った。
佐藤琢磨は次のように語った。
「実際にレースができていることに感謝すべきですね。たとえば、パンデミックの影響でオリンピックアスリートたちは競技活動ができていませんが、僕たちはレースができています。無観客は寂しいですが、ファンが自宅で安全にレースを観戦できていることが重要です。今年はダブルヘッダーが続く異例のスケジュールで、次から次へ予選と決勝がやってくるのでストレスが溜まりますが、レースができることに感謝すべきだと思いますし、来年は通常に戻ることができればと願っています」
マックス・フェルスタッペンも観客がいないサーキットは雰囲気が異なるとし、次のように続けた。
「ドライブ中はまるでテストセッションのように感じてしまうけれど、ドライブができていて、ほぼ予定通りにシーズンを進められていることに満足しなきゃならない。ファンがサーキットにいないのは残念だけど、僕たちはできるだけ最高のショーを提供できるように頑張っている。できるだけ早く通常に戻れることを願っているよ」
『Talking Bull』では、マックス・フェルスタッペンと佐藤琢磨のキャリアの始まりやトロフィーの変遷、佐藤琢磨がヨス・フェルスタッペン(言わずと知れたマックス・フェルスタッペンの父)とレースした時の思い出などについても触れられている。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / 佐藤琢磨 / マックス・フェルスタッペン