F1ハンガリーGP 記者会見 パート2:ルクレール、ローソン、ストロール

また、視界不良時のレース判断、カルチャー改革、フェラーリの内部体制、2026年新規則への取り組みなど、多岐にわたる話題が交わされた。
終盤にはフェルナンド・アロンソの発言を受けて、チャンピオン争い外のドライバーのモチベーションについても意見が問われた。
Q:ルクレール選手、今朝大きなニュースがありました。フレデリック・バスール代表がフェラーリと長期契約を結びました。この件についてどう思いますか?
シャルル・ルクレール:本当にうれしいよ。サプライズというほどじゃないけど、やっぱりうれしい。ここ1か月くらい、いろいろ噂が飛び交っていたからね。公式に発表されたことが何より大事だし、とても良いニュースだと思ってる。
Q:あなたはフレッド以前からチームにいますが、彼がこの30か月でフェラーリにもたらしたものは?
ルクレール:他の時代と比較するつもりはないけど、フレッドは本当に素晴らしいビジョンを持っている。フェラーリで働く上で特に難しいのは、感情が日々の仕事にすごく関わってくること。イタリア人は本当に情熱的で、そこがフェラーリの特別なところでもあるけど、フレッドはその感情をうまく切り離して、どんなに外野が騒がしくても冷静にチームの現状を見極められる。それは本当に大事なことなんだ。あとは、ファクトリーの一人一人から最大限の力を引き出すのが本当にうまい。全部が組み合わさると、大きな差になる。
Q:スパでは表彰台も獲得しました。今のマシンで安定して表彰台争いができると感じていますか?
ルクレール:結果だけ見ればそう言えるね。この6戦で4回表彰台に上がってる。でも今の段階で「グリッド上で2番目に強いチームだ」とまでは言えないと思ってる。とはいえ、その方向に向かって前進はできているし、最近のアップグレードも前のチームとの差を詰める助けになってる。ただ、今週末に関しては正直分からない。僕にとってはこのブダペストが今季で一番苦手なサーキットだからね。今回はそのジンクスを打ち破りたい。
Q:なぜハンガロリンクが苦手なのでしょうか?
ルクレール:分からないんだよ。分かってたら対処できるんだけど。これまでここではあまり成功したことがない。たぶん僕のドライビングスタイルと合ってないんだと思う。ほかのサーキットよりも努力が必要な場所だけど、それはそれでいいと思ってる。
Q:モナコではあれだけ強いのに、「壁のないモナコ」とも言われるこのコースが苦手というのは不思議ですね?
ルクレール:もしかしたら「壁」がないのが原因かもね(笑)。でも正直、理由は分からない。それでも良い週末にできる自信はあるよ。どうなるか見てみよう。
Q:ランス選手、ここでシーズン前半戦を振り返っていただけますか?13戦を終えて、3度のポイント獲得がありましたが、全体としてどんな印象でしょうか?
ランス・ストロール:僕たちは自分たちが望むほど競争力がある状態じゃない、それは間違いないよ。チームとしてはもっと前のポジションで戦いたいし、毎週末もっと多くのポイントを取りたい。スパは僕たちにとって厳しい週末だった。単純に速さが足りなかった。今もシルバーストーンのファクトリーでは、マシンを速くするための開発が続けられてる。楽しいレースもあったし、ウェットのレースでチャンスを活かしてポイントを取れたのは良かったけど、もっと速くなりたい。
Q:やはり、シルバーストンのような例外的なレースやウェットレースが、今のチームにとってのチャンスになると思いますか?
ストロール:現時点では、そう感じるね。ドライの通常の週末でも、コースがマシンにすごく合っていて、すべてを最大限に引き出せれば1〜2ポイント取れるかもしれない。でも大抵の場合、今の僕らが何かを掴むには、そういう波乱含みの週末が必要になる。
Q:マシンのパフォーマンスについて教えてください。スパでは新しいフロントウイングを投入しました。他にもアップデートがありましたが、ハンガロリンクはスパよりもパッケージに合うと思いますか?
ストロール:分からないけど、そうであってほしいね。様子を見てみよう。
Q:リアム選手、RBのアラン・パーメイン代表は、スパでのあなたのレースを「ほぼ完璧だった」と評しました。マシンの中ではどう感じていましたか?
リアム・ローソン:正直に言えば、完璧だとは感じてなかった。ああいうコンディションではすごく難しいんだ。路面が変化してる中で、他のドライバーがスリックタイヤに履き替え始めたとき、僕の感覚ではまだ結構濡れてると感じてた。実際、僕たちはかなり早い段階でスリックに替えたんだけど、もしそのタイミングで僕に意見を聞かれてたら、「まだ早い」って言ってたと思う。それでもああいう展開の中ではうまくチャンスを活かせたし、最近はクルマの調子もすごくいい。どのサーキットでもフリー走行から感触が良くて、大きな問題もなかった。でも今は本当に僅差なんだ。スパの予選でも、2分近いラップタイムの中で、1〜2チームが0.1秒差で並んでるのを見ると、すごく拮抗してると感じるよ。
Q:日曜のレースは、今年の中でも最も完成度の高い週末だったと思いますか?
ローソン:どちらかというと、オーストリアの方が完璧だったと思う。予選も最大限に引き出せたし、決勝もそうだった。スパはクルマが速かったけど、予選は完璧じゃなかったし、決勝で取り返せた感じ。でも最近は全体的に安定してきていると思う。ただ、それでも2戦うまくいったくらいじゃ足りない。目標があるなら、毎週末こういう結果を出さなきゃいけない。
Q:サマーブレイクのこのタイミングで、ここまでの2025年シーズンを振り返ると?
ローソン:本当に忙しかった。とにかく慌ただしくて、特にシーズン序盤は思ってもみなかった展開の連続だった。最初はかなり不安定だったけど、今はだいぶ落ち着いてきたと思う。シーズンを通してスピードはあったし、ようやくそれが結果として現れるようになってきたのはうれしい。でも全体としては、もっとこういうレースを増やしていかないといけない。前半戦で2〜3戦良かっただけじゃ足りない。これからの後半戦では、週末ごとに細かい部分での積み重ねが結果に大きく影響する。だから毎週末、すべてを引き出すことに集中したい。
記者からの質問
Q:シャルル選手とリアム選手に質問です。ローラン・メキースについてですが、お二人は異なる立場で彼と働いた経験があります。人を動かし、関係性を築く力に長けた人物だと言われていますが、どんなふうに仕事をしていた印象ですか?
ルクレール:僕が一緒に働いていたとき、ローランはまだチーム代表ではなかったけど、それでもチーム内でとても重要な立場にいた。彼は人の気持ちを理解する力がすごくて、僕が言葉にしなくてもどう感じているかを察してくれるんだ。そういう人はなかなかいないよ。彼がチーム代表になるのは当然だと思ってたし、実際にアルファタウリに行った時もうれしかった。今ではレッドブル・レーシングにいるけど、本当にふさわしいと思う。
ローソン:シャルルが言った通りだね。ローランはまさに“人間味のある人”って感じで、チームに来た瞬間からすぐにリーダーシップを発揮していた。個人的にもよく話しかけてくれるし、僕にとってはすごく話しやすい存在だった。ドライバーに対しても、チーム全体に対してもすごくオープン。正直、僕がパドックで一番好きな人かもしれない。人間としても素晴らしいし、家族も素敵だし、本当に早朝から働くような人。努力家だし、彼が成功しているのは当然だと思うよ。
Q:リアム選手、今週末はルーキードライバー特集をしています。前半戦を振り返るのではなく、後半戦に向けてどのエリアを重点的に改善・強化したいと考えていますか?
ローソン:ひとつ挙げるなら、やっぱり予選かな。今は本当にグリッド全体が接近していて、たとえオーバーテイクが可能なコースでも、1周あたり0.1秒や0.2秒の差じゃ抜くのは難しい。だから、予選の順位がそのまま週末全体を左右するんだ。僕自身、調子が良かった週末は予選も良かった。逆に、週末が崩れた時は予選が平均的だった。クルマの状態を予選に向けて万全に仕上げて、そこから僕がすべてを引き出す。それが一番大事なポイントだと思ってる。
Q:シャルル選手、昨冬はしばらく表舞台から離れていましたが、今季ここまでルイス・ハミルトンの前で走っていることに驚いていますか? それとも想定通り?
ルクレール:正直に言うと、あまり期待はしてなかった。というのも、他のドライバーのデータを見ていても、「このコーナーで遅れてるのはドライバーのせいなのか、それともクルマの特性なのか」が常に不確かだから。だからこそ、実際に一緒のチームになって比べてみるのがすごく楽しみだった。今のところ、自分のパフォーマンスには満足してるし、このまま続けたい。もちろん、ルイスにとっては新しいチームだから、まだすべてを理解しきれていない部分もあると思う。だから判断するにはまだ早いけど、僕自身はいい感触を持っている。
Q:ランス選手に質問です。2026年には新しい風洞、新PU、新レギュレーションが導入されますが、すでに来年以降のことを強く意識し始めていますか?
ストロール:チームとしては、今はどこも2026年に向けた開発に注力してると思う。新しいレギュレーションはすべてのチームにとって大きなチャンスだからね。僕たちにとってもすごくエキサイティングな時期だよ。新しい風洞やシミュレーターが使えるようになったし、多くの人材も加わった。エイドリアン(・ニューウェイ)も加入する。メルボルンの初戦で自分たちの立ち位置がどうなるかは誰にも分からないけど、今はそこに向けて全力で取り組んでいるところだよ。
Q:シャルル選手、チームのトップマネジメントにおける安定性は、あなたにとってどのくらい重要ですか?
ルクレール:僕が決定権を持ってるわけじゃないけど、安定性はすごく大事だと思ってる。フレッドは僕たちが頼りにしているリーダーだし、彼が今後もチームにいてくれるのはとても良いことだよ。F1というのは、特に強いチームを築くには時間がかかる世界だから、彼と長く一緒にいられるのはチームにとっても僕にとってもポジティブな要素だと思ってる。
Q:ルクレール選手、ルイスは先週「フェラーリの改善のためにマラネロのエンジニアに文書を作成して送っている」と言っていましたが、あなた自身は開発にどう関与していますか?もし関わっていないとしたら、取り残される不安はありませんか?
ルクレール:大丈夫、ちゃんと関わってるよ。僕は自分で文書を作ったりはしていないけど、マラネロに戻ったときには必ずチームとミーティングをして、次に何に取り組むべきかを一緒に話し合ってる。ドライバーごとにチームへのフィードバックの仕方は違うし、僕は僕なりのやり方をしてる。それがルイスとは違っていても、それで取り残されているという感覚はまったくない。しっかり関与してるよ。
Q:シャルル選手、今のマシンが自分の能力に見合っていないという現状の中で、フレッドの存在は「いずれ戦えるクルマを得られる」と信じさせる材料になっていますか?
ルクレール:もちろん、フレッドの存在も大きいけど、それ以上に「チームの働き方」を見て、正しい方向に進んでいると感じてるんだ。来年は新しいレギュレーションの導入で、チームにとっても大きな転機になる。こういうルール変更のタイミングで上手くスタートできないと、あとから追いつくのは本当に大変なんだ。だから来年はしっかりと“正しい一歩”を踏み出さないといけない。僕は今も全力でフェラーリを勝てるチームに戻すために集中しているし、それが実現できると信じている。
Q:ルクレール選手、フレッドがフェラーリに来てからの3年間で、チームの文化に変化があったと思いますか?
ルクレール:確実に変わった部分がある。フレッドの持つ“ビジョン”が一番の変化だと思う。それをチームに浸透させたことが大きい。フェラーリの美しさって、感情がとても強く表に出るところなんだけど、逆にそれが苦しい時にはマイナスにもなる。そんな中で、フレッドは常に冷静で、どんな状況でもチームが感情に流されすぎないように保ってくれる。英語で言うと“ルーシッド”——冷静沈着ってやつ。それをもたらしてくれたのが、フレッドだと思う。
Q:ルクレール選手、今季のフェラーリには高い期待が集まりましたが、それがシーズン序盤の失望につながり、フレッドに対する噂も過熱したように思います。この点についてどう感じていますか?
ルクレール:その通りだと思う。シーズン開幕時の期待がとても大きかったからこそ、現実とのギャップがあったときに、それが一層悪く見えてしまった。みんな「フェラーリがチャンピオンを獲る」と思っていたのに、そうならなかった。そうなると、あらゆる憶測が出てきて、それがどんどん膨らんでしまう。でも、そういったことは僕たちにはコントロールできない。フェラーリではいつも起きることだし、これからもそうだと思う。僕たちがやるべきことは、そういうノイズからできるだけ離れて、自分たちの仕事に集中すること。それが一番大切なんだ。
Q:シャルル選手、今年のクルマは扱いが難しいにもかかわらず、すでに5回表彰台に上がっています。今のあなた自身のパフォーマンスはキャリアの中でもトップレベルだと感じていますか?
ルクレール:自分自身のパフォーマンスには満足してるよ。でも「キャリア最高の瞬間か」と言われたら、それは違う。だって僕は勝ちたいからね。もちろん、常に改善したいとは思ってるし、たとえばシルバーストンの週末は自分としてもかなり悪かった。そういう週末は少なくしたい。それ以外ではかなり満足してるし、良い傾向だと思う。クルマのアップグレードによって、ドライバーである僕やルイスにとっての“扱いやすさ”も改善されてきた。それによって限界を引き出しやすくなったし、序盤のように極端なセッティングに頼る必要も減った。それがミスの減少にもつながってると思うし、結果にも表れてきている。
Q:シャルル選手、フレッド・バスール代表はユーモアのある人物という印象があります。彼の人柄はフェラーリの雰囲気づくりにどんな影響を与えていますか?何か裏話があれば教えてください。
ルクレール:確かにフレッドはすごく面白い人だよ。そのユーモアセンスがチームの雰囲気にも良い影響を与えていると思う。もちろん僕たちはプロフェッショナルとして仕事をしているけど、チームディナーのときなんかは本当に和やかで、まるで家族のような雰囲気になる。僕自身、フェラーリと一緒に育ってきたような感覚があるし、今もそこに居続けられることがうれしい。フレッドもその一員として完全に溶け込んでいるし、難しい状況でも彼のジョークが場を和らげてくれる。今回の契約延長は、本当に良いニュースだったよ。
Q:シャルル選手、現在コンストラクターズ選手権でメルセデスと接戦ですが、2位で終えることにどれほどの意味があると考えていますか? 来季の風洞使用時間が減ることを考慮しても、やはり2位を狙うべきでしょうか?
ルクレール:間違いなく、3位よりは2位の方がいいと思ってる。もちろん、2位になると風洞時間が少なくなるという側面はあるけど、レースをしてる以上は、トラック上で1つでも上を目指したい。それが自然な姿勢だよ。最終的に来年どれだけの開発時間が使えるかは、その結果次第だけど、それは後で対応すればいい。僕たちの目標は明確で、まずはレースで勝てるチームに戻ること。そのためにも、今は1戦1戦を大事にして、少しでも高い順位を目指す。それが何より大事だと思う。
Q:シャルル選手、現時点でのクルマやアップグレードの理解を踏まえて、今後のカレンダーの中で「ここは自信がある」と思えるサーキットはありますか?
ルクレール:正直、今の時点では「ここならマクラーレンより速い」と思えるサーキットはないかな。マクラーレンはどの週末でも安定して強い。レッドブルは週によって上下があるし、僕たちフェラーリやメルセデスも同じような状況だけど、マクラーレンだけは常に一定のパフォーマンスを出してる。だから今は、「ここなら勝てる」と思えるサーキットはないけど、逆にそう思ってなかった場所で驚けることを期待してるよ。
Q:3人全員に質問です。フェルナンド・アロンソ選手が最近「今後シーズン後半は、チャンピオン争いをしているマクラーレンの2人以外にとっては退屈な時間になる」と発言していました。この見方に同意しますか?
ストロール:確かに、マクラーレンの2人にとっては僕たちよりエキサイティングな展開になると思う。でも、どのレースでも何が起きるか分からないし、僕たちにもそれぞれの戦いがある。例えば僕たちにとっては、1ポイントでも獲得できたらそれは大きな成果だし、マクラーレンは毎週末勝利を目指して戦っている。それぞれ違う戦いがあるってことだよ。僕は毎週末を楽しみにしてるし、何が起きるか分からないから面白い。来年のことを考えると、すべてのチームにチャンスがある。そこが楽しみなところでもあるね。
ルクレール:僕も同意するよ。でも「マクラーレンの2人以外は楽しめない」ってのはちょっと極端かな。僕たちにも戦いはある。もちろん、ワールドチャンピオン争いをしているとは言えないけど、僕たちはレースで再び勝つために努力している。そのために走るのはすごくモチベーションがあるし、早くそうなれることを願ってる。レースがある限り、やる気もあるし楽しみもあるよ。
ローソン:2人が言ったことに同感だね。今の中団はすごく接戦だから、僕たちから見ても毎週末の展開がすごくエキサイティングなんだ。順位も、週末の流れ次第で大きく変わる。それぞれの立場で違った戦いがあるし、僕たちはその戦いに集中してる。だから、退屈という感じではないよ。
Q:ランス選手に最後の質問です。あなたはF1の異なる世代のマシンでウェットレースを経験していますが、なぜ現在のマシンはここまで視界が悪いのでしょうか?2008年のような“名レース”はもう期待できないのでしょうか?
ストロール:条件の話だよね?僕の印象では、マシンが大きくなって、タイヤも太くなってきたことで、スプレーが年々ひどくなってる。今は視界が一番の問題。特にクルマとタイヤが大きいせいで、巻き上げる水しぶきも大きくなってる。たとえばスパで、オー・ルージュを時速300キロで駆け上がるときに、何も見えない状態なんて、レースできる状況じゃない。昔より悪化しているかは分からないけど、スプレーと視界が最大の課題なのは確か。本当の意味でウェットレースを成立させるには、視界改善にもっと取り組む必要があると思う。
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