F1ドライバーたちが語る「雨天視界ゼロ」問題 スパの教訓と将来への提言

スパでは、極端な視界不良によりレースが約80分中断され、安全面を重視したレースコントロールの判断が注目を集めた。
F1ドライバーは、それぞれの経験を踏まえて「見えない状況では誰も安全に走れない」と警鐘を鳴らしつつ、今後の対応に向けて建設的な姿勢を示した。
ピアストリはスパでの判断について、「FIAに『これ以上は限界だ』って何度も言ってきたから、そういう声が今回の判断に反映されたと思う」と語った。
「ちょっと保守的すぎるって言いたくなる気持ちも分かる。でも、もし誰かが大クラッシュしてたら、今ここで話してる空気はまったく違ってたはずだよ。最終的には、安全が最優先だ」
同じくスパで走行したオコンは、過去の経験から「視界ゼロ」のリスクを説明した。
「僕は2012年のスパでレースをしたことがあるけど、最後尾スタートで、前が全然見えなかった。反射的に右に避けたら、もう1台横にいた。もし逆方向に動いてたらクラッシュだった。スピードは時速160〜170キロで、ブレーキングポイントも分からない。正直、コントロール不能なんだ」
ガスリーも「レースをしたい気持ちはもちろんある」と前置きしながら、冷静に語った。
「でも、前のクルマが見えない中では何もできない。ケメルストレートで時速300キロで走ってても、スプレーで前が全然見えない。何かがあっても避けようがない。FIAは批判されるべきじゃないし、むしろ我々ドライバーと一緒にどうすればもっと良い判断ができるのかを考えていくべきなんだ」
ストロールは、マシンの進化による物理的な要因を強調した。
「クルマが大きくなって、タイヤも太くなって、スプレーがひどくなってる。視界の問題が一番大きい。スパみたいなコースでは、オー・ルージュで300キロ出してても、上が何も見えない。そんな状況で“レースしろ”ってのは無理がある。昔もウェットは難しかったけど、今は特にひどい。視界改善が必要だよ」
フェラーリのシャルル・ルクレールも「改善のためにはスプレーの量を減らすしかない。ホイールカバーなどのテストが行われていると聞いているが、今は条件がそろわないとウェットタイヤが使えないというジレンマもある。抜本的な技術改善が必要だと思う」と提言した。
F1では現在、FIAがホイールカバーなどスプレー低減デバイスのテストを継続しているが、実戦投入にはまだ至っていない。ドライバーたちの声は共通しており、視界の確保がなければ、今後も“走れないレース”が続くという危機感が漂っている。
今週末のハンガリーGPでは、天候が崩れる可能性もある。果たしてFIAとドライバーの間で得られたフィードバックが、次なる判断にどう生かされるか注目される。
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