アレクサンダーアルボン アメリカGPでF1参戦100戦目「他の人たちほど順調ではなかった」
トロ・ロッソでF1デビューしてから5年以上が経ち、アレクサンダー・アルボンはアメリカGPで100回目のレーススタートを迎える準備をしている。この節目のレースを前に、タイ出身のドライバーであるアルボンはF1.comのインタビューに応じ、ランド・ノリスやジョージ・ラッセルといったドライバーたちとともに成長してきた道のりの高揚感から、次の100レースがもたらすものまで、これまでの道のりの浮き沈みを振り返った。

2024年のF1シーズンは秋の休止期間中に一時中断されたが、アルボンはF1.comとのビデオ通話インタビューに応じ、コース上ではなくストリートで再び走る準備ができていることを明らかにした。タイ人ドライバーは、サンパウロで特別なデモ走行を行うGulf Speed Festivalまであと数時間だ。

「確かに違うね」と、伝統的なサーキット以外の場所でF1カーを運転した感想を尋ねると、アルボンはそう答えた。「コース上での運転以外のこともできて、ファンとの交流にもっと集中できるのは嬉しい」

「同時に、ドーナツターンやバーンアウトなど、ある意味でそういったことも、実際にはそれほどプラクティスしていないんです!だから、慣れるには少し練習が必要だ」

アルボンが、ガルフオイルがウィリアムズと提携して2年目を迎える今年、数千人のファンの前でFW45を走らせてショーを披露した後、次の祝賀会までそれほど時間はかからない。それは、オースティンでの100回目のレース出場だ。

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目アルボンは、ガルフ・スピード・フェスティバルでサンパウロの街中をFW45で走り、特別なデモ走行を行った。

「大きな節目」を振り返って
ドライバーによって、こうした節目の瞬間に対する感情は様々だ。シンガポールでの350レース目でのルイス・ハミルトンの反応を見ても、あまり考えないようにするドライバーもいるが、最近150回を達成したエステバン・オコンのように、感情的になるドライバーもいる。

一方、アルボンは100回目のレースを振り返る感覚を期待している。

「興味深いことだ。なぜなら、今は年間に非常に多くのレースが行われているので、100レースというのはあっという間だ。でも同時に、これはやはり大きなマイルストーンだ。僕のレース人生は、グリッド上の他のドライバーほど順調ではなかったと思う」

「グリッド上のほとんどのドライバーはすでに100レースを経験していると思う。100レース以下というのはそれほど多くはないので、100レースに到達しようとしている今でも、僕は比較的経験の浅いドライバーの一人だ」

「節目のレースを迎えるとき、あるいは僕がそのときを迎えるとき、これまでのF1キャリアにおける浮き沈みを少し振り返るだろう。でも、それに対してトロフィーが贈られるわけではない!」

「150レースを迎えるか、白髪が増えてきたときに、それを懐かしく思うようになるかもしれない」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像01アレクサンダー・アルボンは、アメリカGPで100回目のレース出場を祝う準備をしている。

思い出に残るスタート - 移動の混乱も
アルボンは2019年のオーストラリアGPでトロロッソの一員としてF1グリッドに到着した。当時22歳だったアルボンにとって、当初はフォーミュラEでレースをする予定だったため、この移籍は驚きだった。

アルバート・パークでルーキーとしてレースに臨む準備をしていたときの気持ちを今でも覚えているかと尋ねられたアルボンは、笑顔で次のように答えた。「昨日のことのように覚えていル。F1で走ることが自分にとってどれほど意味のあることだったかを考えると、自分のキャリアの中で最も記憶に残っているレースだと思う」

「そして何よりも、僕が覚えているのは実際のレースというよりも、緊張感やF1で走っているという感覚といった感情です。本当に素晴らしいものだった」

「そこへ向かう旅を覚えている。 飛行機の手配を間違えられてね。いつもはビジネスクラスで移動するんだけど、メルボルン行きの便はファーストクラスにしてもらったんだ」

「それも覚えているよ。もちろん、その時はよく分からなくて、ただ『わあ、ファーストクラスだ』と思った。ビジネスクラスにもほとんど乗ったことがなかったのに、ファーストクラスなんて! それで急に『わあ、これがF1だ、すごい!』と思ったんだ」

「でも、最初のレースから今に至るまで、ドライビング面では実際にはあまり変わっていないと思う。 経験が増えただけで、ある意味で普通のことだ。 F1ドライバーであることは、奇妙なことに、とても普通のことのように感じられる。 もちろん、それは非常に恵まれた立場ではある」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像02アレクサンダー・アルボンは2019年の開幕戦オーストラリアGPでトロロッソからF1デビューを果たした。

幼なじみとのレースという「非現実的」な感覚
アルボンのデビューは、もちろんその週末にデビューした唯一のドライバーというわけではなかった。オーストラリアでのレースは、ラッセルとノリスのF1キャリアの始まりでもあり、3人はジュニア時代に互いに競い合ってきただけでなく、フォーミュラ2からステップアップしたという共通点もあった。

3人とも、それ以来、まったく異なる道を歩んできたが、それぞれがさまざまな段階で節目を迎えている。アルボンは、彼らのF1での道のりを比較することはできないと認めながらも、3人ともF1にとどまり続けているという事実は注目に値すると認めている。

「ある意味で、僕たちがまだここにいるというのは本当に素晴らしいことだ」とアルボンは説明する。「F1ドライバーになることと、F1ドライバーであり続けることは別のことだと思う。もちろん、僕は2021年に1年間、F1ドライバーとして在籍したり、離れたりした」

「でも、素晴らしいことだよ。振り返ってみると、僕たち3人だけでなく、シャルル(ルクレール)、マックス(フェルスタッペン)、カルロス(サインツ)...エステバン(オコン)、ピエール(ガスリー)など、多くのドライバーが互いに競い合ってきた。そして、今でも互いに競い合っている。それはある意味、かなり非現実的に感じるよ」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像03アレクサンダー・アルボンは、かつてジュニアカテゴリーで競い合ったことのあるノリスとともにF1デビューを果たした。

共に歩んできた仲間たちと100回目のレースを分かち合うことで、より特別なレースになるのではないかという問いに対して、アルボンは次のように付け加えた。「たぶんね。わからないけど、100回目の記念のケーキを彼らと分かち合わないといけないかもしれない。このグループの中で、それをやるのは僕が最後だと思うから、僕のケーキが一番大きくて、一番おいしいようにするよ!」

オースティンでは、アルボンが同世代のドライバーたちとともに節目のレースを祝う機会が得られるが、シンガポールグランプリの数日後にRBチームからの離脱が発表されたダニエル・リカルドは、その場にいないため、ケーキを一切れも楽しむことはできない。

リカルドの離脱について感想を求められたアルボンは、「僕はダニエルが本当に大好きなんだ。彼は僕たちのスポーツの真のキャラクターだと思う。彼は自分自身にもとても誠実だと思うし、ダニエルが去るのは大きな損失だよ」と振り返った。

「F1コミュニティの一般的な反応を見たが、彼が去るのは寂しい。また、彼が何らかの形で戻ってこないとは言えない。彼に代わるドライバーの決定についてはコメントできないが、確かに彼がいないのは寂しい」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像04アレクサンダー・アルボンの100戦目は、オーストラリア人のリカルドがRBから即時撤退したことを受けて、2024年にリカルドがいない最初のレースとなる。

アルボンのF1キャリアにおける最も特別な3レース
リカルド同様、アルボンもまた、F1での生活がもたらす浮き沈みを身をもって経験してきた。デビューシーズン半ばでレッドブルのメインチームに昇格し、2020年にはフルシーズン残留したものの、2021年にはセルジオ・ペレスと交代することが決まった。

その年、アルボンはレッドブルのテスト兼リザーブドライバーとなり、2022年にウィリアムズでグリッドに復帰し、それ以来、活躍している。

そのため、これまでの99レースの中で特に特別に感じたレースがあるかと尋ねられた際、アルボンは、F1での道のりの異なる段階でそれぞれ行われた3つのレースを挙げた。

「最初のレースは、どのドライバーも同じことを言うと思う。」とアルボンは言う。「先ほど話したように、初めてF1ドライバーになったときの感情だ。2つ目は、ムジェロ(2020年)での初の表彰台だ」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像05アレクサンダー・アルボンは、2020年のムジェロでの初の表彰台を、F1で最も特別なレースのひとつとして挙げている。

「自分にとって簡単なレースではなかったし、自分にとって簡単な年でもなかったが、その週末は本当に素晴らしいレースができた。残念ながら、それは肩の荷が下りたという感覚の方が強く、その瞬間を味わっているという意味ではなかったと思う。それでも、表彰台に上り、背後にタイの国旗が見えたときは素晴らしい気分だった」

「そして、最後のレースは、実はもう少し曖昧なものでした。ウィリアムズでF1に復帰した最初のレースだったけど、レースそのものではなく、予選だった」

「その年はすでに後れを取ってスタートしたようなもので、予選では19位と20位になるだろうと考えていたが、結局はQ2に進出することができた。 現時点では、それほど大したことではないように思えるけどね。でも、当時、僕は自分自身に挽回して、人々に自分が何ができるかを証明しなければならないという、ある意味で自分自身へのプレッシャーがあったことを覚えている」

「そして、それは自分自身に対する課題でもあった。ある意味で、自分が素晴らしい仕事をしたという感覚と、自分がここにふさわしいという感覚を持つことだった。だから、その瞬間は際立っていた」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像062022年にウィリアムズでグリッドに戻ってきたアルボンは、バーレーンでの最初の週末のパフォーマンスに満足していた。

F1でのプレッシャーへの対処
100回目のレースへの道のりを、プレッシャーから解放された感覚でより楽しめたかどうかという点については、特にウィリアムズとの長期契約が締結されたことを踏まえて、アルボンは次のように認める。

「そうだね、楽しめたと思う。F1では、年末で契約が終了しないと言い切れるのは本当に贅沢なことだと思う」

「それはある意味でプレッシャーであり、公平に見て、すべてのレーシングドライバーが経験しているプレッシャーだ。 少なくとも多くのドライバーは、8歳や9歳の頃から毎年、継続することに苦労している。 そういう意味では、珍しいことではない」

「でも、長期契約を結ぶということは、F1のリズムに身を置き、F1を理解し、その仕組みを理解しているということだ。車の仕組みも理解しているし、自分もうまくやっていると感じている。そう、間違いなくある意味でそれをより楽しむことができるんだ」

そして、ここまでの道のりには浮き沈みがあったが、アルボンは過去の経験の多くをポジティブな形で活かすことができた。例えば、2021年にレッドブルで戦列を離れていた時期には、角田裕毅のメンターを務めたが、ウィリアムズでチームリーダーとして成長する上で有益なものとなった。

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像072021年にレッドブルで控えを務めた1年間、アルボンは角田裕毅のメンターとして行動した。

「ウィリアムズでの僕の役割は、特にレッドブルでの僕の役割とは異なるものだったと言える」とアルボンは説明する。「レッドブルでの僕の役割は、ただパフォーマンスを発揮することだけだった」

「ウィリアムズでは特に、自分勝手な行動が許される立場にはないことは明らかだ。チームを前進させるためには、一緒に協力する必要がある」

「だから、もっとオープンになって、一緒にクルマを理解しようと努力すること、特に、自分の経験や、ガレージの反対側も含めたチーム全体とのコミュニケーションを改善して、クルマやタイヤの使い方、来年のクルマの開発を改善すること、何であれ、僕はそれに問題はないし、それはかなり異なっていると思う」

「そして、僕はその役割を楽しんでいるし、必要だと感じている。僕たちは上昇中のチームであり、ある意味でオープンな関係を築くことで、車の開発や成功がより早く実現できると信じている」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像08アレクサンダー・アルボンは、過去の経験がウィリアムズのチームメイトたちとのコミュニケーションを円滑にするのに役立っていると感じている。

ウィリアムズとともに未来を見据える
ウィリアムズは、確かに上昇傾向にあるように見える。モンツァの後、アルボンはチームがコンストラクターズランキングでアルピーヌを追い抜き、8位になれるのではないかと期待を口にした。それからわずか2週間後、バクーでダブルポイントフィニッシュを達成し、その目標を達成した。

ミッドフィールドの戦いは依然として熾烈であることに疑いの余地はないが、目標は7位のハースを追い抜くことへとシフトしたのだろうか?

「目標は間違いなく前進することだ」とアルボンは言う。「後ろを振り返り始めると、満足してリスクを負わなくなり、常に前を走る車を追い越すことを目標にすべきだと思う」

「少なくともここ数戦は、週末の大半において、我々のマシンの方がハースよりも速かったと思う。 もし我々のマシンの方が速くなかったとしても、それはたいてい、その週末に何かがうまくいかなかったとか、何か理由があるはずだ」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像10アゼルバイジャンでのウィリアムズのダブルポイントフィニッシュは、コンストラクターズランキングでアルピーヌを追い抜くのに役立った。

「アストン(マーティン)は、少し調子の波がある。 彼らは時々本当に速く、速くないときは我々が彼らを打ち負かすことができる。 でも、僕たちはアストンを打ち負かさなければならない。ハースやRBを打ち負かすためには、アストンを打ち負かす必要があるからだ。一般的にポイントは5番目に速いチームに与えられるからだ。だから、9位、10位というのが僕たちの目標だ」

「だから、僕たちはミッドフィールドのすべてより速くならなければならない。今のところ、もしあなたが数学的に考えれば、毎週末1ポイント、あるいは2ポイントを獲得するだけでは、ハースやRBに追いつくことはできない。だから、実際には、よりダイナミックなレース、より混沌としたレースを求めている」

「これから数レースを戦うことになるが、オースティンは含まれないだろう。天候のことを考えると、ブラジルも考えなくてはならない。タイヤのことを考えると、もでもたらカタールもだ。メキシコも独特なサーキットだ」

「だから、良い順位でフィニッシュできる可能性がある。そして、それが我々が集中していることでもある。もし5番目に速いチームになれれば、クレイジーなレースを期待できるし、9位が6位かそれ以上に変わる可能性もある。そうすれば、すぐに戦いに戻れる」

アレクサンダー・アルボン F1参戦100戦目 画像10次の100レースでアルボンが経験することは何だろうか?

次の100レースへ
コース上での目標は明確だ。でも、100回目のレースを記念して何か特別な計画があるか、例えば特別なヘルメットデザインなど、と尋ねられたアルボンは笑いながら答えた。「今はヘルメットデザインをキャッチアップする必要がある。普通はそうすべきだと思うが、ここ数週間は少し忙しかったんだ!」

「だから通常はヘルメットをデザインする。それ以上のこともするつもりだったが、それは本当にワクワクするものだったが、残念ながらそれは実現しなかった。でも今は、それがすべてだ。チームはいつも通り何かをしようとするかもしれないが、うん、それだけだ」

その後、アルボンのFW46がオースティンでの週末に特別な記念ロゴを身にまとうことが確認された。また、ファンゾーンイベントでファンと交流し、限定版グッズが販売される予定だ。
ウィリアムズとの複数年契約を締結したことで、アルボンは今後、さらなるマイルストーンを祝う機会が数多く訪れることを期待している。そうなると、次の100年への希望や目標は何かという疑問が浮かんでくる。

「次の100レースかぁ...」とアルボンは答え、しばらく考え込んだ。「つまり、このスポーツに、あと4年ほどはいるということだね」

「どうかな。まだウィリアムズにいる可能性が高いと思う。将来が楽しみだ。200回目のグランプリでは、表彰台を争い、さらに上位を狙えるようになっていることを期待している」

「でも、200回目を祝うには、とてもシンプルでいい方法だと思う。そして、もっと大きなケーキだ!」

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カテゴリー: F1 / アレクサンダー・アルボン / ウィリアムズ・レーシング / F1アメリカGP