2025年F1ハンガリーGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想

2024年F1ハンガリーGPの予選はマクラーレン勢の一騎打ちになると見られていたが、最後の最後でシャルル・ルクレールが現れ、そのポールポジションを“かっさらった”。この表現以外に適切な言葉が見当たらないほどの鮮やかな逆転劇だった。フリー走行1回目から、予選トップはパパイヤカラー(マクラーレン)で塗られていたのだ。
予選後のマクラーレン陣営は、落胆というよりも困惑した様子だった。彼らのマシンは一発の速さで群を抜いており、ロングランペースもそれに劣らないように見える。ただし、ここハンガロリンクではオーバーテイクが難しく、チーム内の戦略バトルには新たな“スカーレットの変数”が加わることになった。
中団では、すでに戦略的な賭けが動き出している。いくつかのチームは日曜の決勝を犠牲にして土曜の順位取りに全振りし、トップチームは昨年の勝利戦略をあえて避け、ザウバーに至っては完全に独自路線を突き進んでいる。これだけでも興味深いのに、さらに天候による波乱のリスクも加わるというのだから、期待は高まるばかりだ。
昨年はどうだったのか?
2024年のハンガリーGPでは、トップ8台がC3(ハード)とC4(ミディアム)を使った2ストップ戦略を採用。優勝はオスカー・ピアストリで、F1初勝利をマーク。2位にはランド・ノリスが続き、マクラーレン勢が1-2フィニッシュを飾った。両者ともにミディアム→ハード→ミディアムの戦略を採っていた。
3位のルイス・ハミルトンはミディアム→ハード→ハードで走り切った。
このレースでは、スティントの最適長を狙うよりもアンダーカットの威力が際立った。たとえば、ハミルトンが16周目に最初のピットインを行うと、ノリスが17周目、ピアストリが18周目に続き、ポジションを維持した。
2回目のピットストップ時には、マクラーレン勢はハミルトンよりも大きなギャップを築いており、ハミルトンが40周目に再度ピットに入っても、すぐには反応せず、ポジションとタイヤ差の両方を維持する展開に持ち込んだ。さらには、スマートなチームオーダーを使って、3年ぶりの1-2フィニッシュを確実なものにした。
また、下位グリッドからスタートしたセルジオ・ペレスとジョージ・ラッセルはハードタイヤでスタートすることで挽回。ペレスは13番手スタートからハード→ミディアム→ミディアムの28周ロングスティントを活かして7位まで浮上。17番手スタートのラッセルもハード→ミディアム→ハードで8位に入り、33周目までピットインを引き延ばした。
角田裕毅は9位フィニッシュで、唯一の1ストップ勢の中で最速だった。戦略はミディアム→ハードで、29周目に1度だけピットイン。10位のランス・ストロールは唯一ソフトタイヤを使った上位フィニッシャーで、ソフト→ミディアム→ハードの三段構え。オープニングの14周はやや短めで、その後45周目までロングスティントを走った。2025年においても、こうしたアプローチは注目に値する。

では今年の最速戦略は?
2025年の決勝で最速と見られているのは、ミディアム→ハード→ハードの2ストップ戦略。最初のピットウィンドウは16〜22周目、2回目は40〜46周目に設定されている。
昨年成功したミディアム→ハード→ミディアムも候補となるが、この構成を実現できるのはガブリエル・ボルトレトとニコ・ヒュルケンベルグのみ。今大会、2セットのミディアムを温存しているのはザウバーだけで、マクラーレン、フェラーリ、メルセデス、フェルスタッペン、アルピーヌはすべてハードを2セット選択している。
ピレリのチーフエンジニア、シモーネ・ベッラはこう語る。
「今年はC3とC4のパフォーマンス差が小さく、レース中のマネジメント次第では差がコンマ2秒程度しかない。昨年はC4の性能差が大きく、しかも耐久性に劣っていたため、C4を選ぶ価値が高かった。今年はそのバランスが変わっている」

ハードを2セット持っている場合の代替プランは?
ハードタイヤの耐久性を活かして、オープニングにソフトを履く戦略もある。C5ソフトはスタート直後のグリップに優れ、序盤でポジションを稼げる可能性がある。その後はすぐにアンダーカット合戦に突入する。ソフト→ハード→ハードの理想的なピットウィンドウは、8〜14周目と38〜44周目。
ただし、アンダーカットの利点と同時に高いデグラデーション(摩耗)も考慮すべき点だ。過去のレースでは、若いタイヤで後方から迫るマシンのグリップが優位に働き、最終セクターでのトラクション差からターン1でのオーバーテイクが成立している。

ハードもミディアムも2セットないチームは?
アストンマーティン、レーシングブルズ、ハース、ウィリアムズ、そして角田裕毅は、予選に向けてソフトタイヤ5セットを最大投入したチームだ。アストンマーティンは2023年以来となる2台そろってのトップ6スタートを果たしており、この判断は一概に間違いとは言えない。ただし、決勝の選択肢は限定される。
その中でもソフト→ミディアム→ハードの戦略には可能性がある。こちらも最初のピットは8〜14周目、その後は32〜38周目に2回目のストップを想定。
一方、ロングショット(大穴)となるのは1ストップ戦略。ミディアム→ハードで、25〜31周目にピットイン。金曜のロングランデータでは2ストップに対して約10秒遅いとされているが、気温が下がる予報もある中で、再評価されつつある。
もちろん、これらは“捨て身の賭け”というわけではない。1ストップ勢が不利になる展開なら、ソフトに履き替えてスプリントフィニッシュに持ち込むという“バリアント”も残されている。
で、天気はどうなる?
予選で混乱を招いた風は再来し、今回は雷雨、落雷、不規則な豪雨といった“仲間”を引き連れてくる見込みだ。午前中には雨が予想されており、午後には確率が下がるとはいえ、決勝スタート時点での降雨確率は依然として40%。完全に“コインの裏表”次第だ。
とはいえ、確実なのは気温の低下であり、これが各チームのシミュレーションモデルを大きく狂わせる要因となる。
ピレリのモータースポーツディレクター、マリオ・イゾラは次のように述べている。
「今週末に見られたデグラデーションは、我々が予測していた水準と一致しており、理論上はミディアム→ハード→ハードが最速戦略だ。ただし、朝に雨が降って路面がリセットされれば……予測不能な状況が生まれる可能性もある」

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