2008年F1
最初のフライアウェイ3戦を終えて、ぼんやりとだが2008年の各チームの傾向が見えてきた。オーストラリアは参考にはならないが、マレーシア、バーレーンのレースコンディションの中で、それなりにマシンの実力は明らかになってきた。

ヨーロッパラウンドを前に、ここで一度、開幕3レースを振り返って、2008年のF1チーム&F1マシンの実力を整理してみる。


■一歩抜き出ているフェラーリ
下馬評通り、今年もフェラーリの強さは光っている。メルボルンは例外であって、マレーシアからの圧倒的な速さは、すでに他を寄せ付けない安定感をみせている。今のところフェラーリ F2008に弱点は見当たらない。唯一、タイヤの温まりに時間がかかる点があるが、これは例年のことであり大きな問題ではないだろう。ライコネンとマッサのチームメイト対決は、単純にセッティングが決まった方が勝利するだろう。安定感ではライコネンに分があるが、決まったときのマッサは手が付けられない。今後、マッサに冷静さが身についたら、怖い存在になるだろう。


■形勢逆転?マクラーレン vs BMWの2番手争い
シーズン前はフェラーリとマクラーレンの“2強”による争いになるだろうとの見方が強かった。逆にBMW F1.08は、シーズン前のテストでは速さをみせず、「F1.08は失敗作なのでは?」との意見もあった。だが、蓋を開けてみるとテスト時のデータが嘘であったかのようなペースを発揮している。オンボード映像を見ると、両ドライバーはドライビングに苦労しているように見えるのだが、なぜか速い。F1.08に付けられた数々のウィングレットを見ると、空力面は相当センシティブなはずなのだが、バーレーンの強風にも特に大きな影響を受けていないようだった。

一方、マクラーレンはいまひとつピリっとしない。MP4-23は先代を進化させたエアロマシンであるし、ドライバビリティの高いコーナリングマシンといえる。これまでのレースを見ると、コバライネンのペースがMP4-23のデフォルトの実力であるように思う。つまり、基本性能は高い。ただし、チーム全体がまだMP4-23から最大限を引き出せず、苦労しているように感じる。今年のハミルトンは、速さに疑いないが、精神面の安定感が感じられない。ペースを掴めば恐ろしい存在であることに間違いないが、昨年終盤にみせた脆さが垣間見られる。昨年2位のドライバーが同一周回の琢磨を抜くのにいちいち中指を立てているようでは・・・。

MP4-23とF1.08のポテンシャルは、MP4-23に軍配が上がるだろう。なんとかマシンをねじ伏せているBMWと、最大限を引き出せずにいるマクラーレンという見方ではマクラーレンが有利だが、今後MP4-23の進歩が見られなければ、BMWにも可能性があるかもしれない。


■トヨタ vs ウィリアムズによるトヨタエンジン対決
今年のトヨタの好調ぶりは驚きだ。TF108は、TF107からエアロコンセプトを劇的に変化させてはいるが、相対的にみれば近年のトレンドを組み込んだスタンダードかつコンサバティブなマシンといえる。しかし、その個性のなさ(アグレッシブではないエアロコンセプト)がかえって今シーズンはうまく作用しているように思える。

そういった意味では、ウィリアムズ FW30もコンサバティブなマシンと言える。シーズン前から力強いペースを見せているし、一発の速さもロングランもよい。ロズベルグはうまく乗りこなしている。しかし、なぜか速いのはフリー走行まで。レースセッティングに改善の余地があるだろう。

バランスという点では、TF108とFW30は均等にバランスの取れたマシンだ。今後の開発の方向性でどちらが競争力をつけるかがハッキリとしてくるだろう。マクラーレン、BMWには追いつけないものの、中団グループの上位争いはこの2チームで行われるのではないだろうか。現時点ではトヨタの方が伸びる可能性を感じるし、経験面から言ってもヤルノ・トゥルーリの方がニコ・ロズベルグより競争力があると言える。

ただし、そういえるのは両チームのエースドライバーのみで、セカンドドライバーとなるとまた別の話となる。ティモ・グロックに関しては、レッドブル、アロンソあたりとの戦いになるだろう。中嶋一貴に関しては、もう一段下位での争いとなるだろう。フジテレビが期待するほど、現実は甘くないと思う。


■不気味な存在のレッドブル
今シーズンのレッドブルは不気味な存在だ。信頼性という面で、RB4は昨年マシンより改善されている。エイドリアン・ニューウェイの空力デザインは予想に反してスタンダードだが、エアロ効率が高いマシンと言える。反面、マレーシアではトラクション性能の弱さがみえてきた。RB4は、今シーズンのマシン陣の中では個性的な特性をもったマシンともいえる。1発の速さはあり、「きちんと走れば速い」のが今年のレッドブル。セッティングが決まれば、中団グループの上位争いをするだろう。


■どちらが抜け出すか、ルノー vs ホンダ
ルノーの首脳陣も認めるとおり、現時点のR28には速さが足りない。昨年マシンR27の空力面の失敗が尾を引いている印象は否めない。フェルナンド・アロンソの実力で一段上の戦いをしてはいるが、マシンのポテンシャルはそう高くないだろう。

逆に、ホンダ RA108は予想外に良いマシンに仕上がっている。失敗作RA107の全てを捨ててのゼロからの開発の方向性は間違っていなかったようだ。ただし、運がない・・・。開発の遅れを取り戻すという意味でも、今後の進歩が期待できるだろう。

現時点では、勢いという点ではホンダの方が勝っている印象。ルノーはバルセロナで“アロンソ仕様”のアップデートを入れるとしている。それが巧くはまれば、何レースかはレッドブルより上でバトルができるかもしれない・・・。


■アップデートが鍵、トロ・ロッソ vs フォース・インディア
何気にフェラーリエンジン対決でもあるトロ・ロッソとフォース・インディア。両チームとも昨シーズンのシャシーでの戦いとなる。その点、VJM01が実質昨年のスパイカーマシンであることを考えると、フォース・インディア進歩の幅は大きい。ベテランドライバー、ジャンカルロ・フィジケラは新天地で輝きを取り戻している。昨年の2倍とも言われる予算による開発、またシームレス・シフトのギアボックスが導入されれば、Q2進出も夢ではないかもしれない。

トロ・ロッソ STR2Bは、エアロ面が強くないことは明らかだ。また信頼性も不足している。信頼性はレッドブル RB3がベースとなっており、ギアボックスも昨年の改良版ということを考えれば納得はできるだろう。ただし、トルコGPあたりでレッドブル RB4(STR3)が導入されれば、また違ってくるはず。若手有望ドライバー、セバスチャン・ベッテルのアグレッシブなドライビングにRB4のソリッドな走りが加われば、中団を脅かす存在になるかもしれない。


■開発力はあるスーパーアグリ
マグマ・グループとの提携が発表されたものの、テスト不足・パーツ不足=資金不足の影響が露骨に現れているスーパーアグリ。ただし、あのRA107をここまで仕上げてくるのだから、スーパーアグリの開発力は大したものである。レースを完走しているところも評価したい。速さがないだけなのである(致命的だが)。今年しっかりした走りをみせているRA108が手に入れば、SA08Bは今シーズン終盤には下位争いを面白くしてくれると期待している。新しい体制の発表が待たれる。


■今後の展開
多くのチームがスペインGPまでに大きなアップデートを予定してる。ここで大きく抜けだすチームはないとは思うが、トルコGPあたりで大方の勢力図は固まってくるだろう。なぜなら、多くのチームは、早ければ5月から2009年のレギュレーションを踏まえた来季マシンの開発を進めるからだ。当面の注目は、やはりBMWとマクラーレン。アロンソがどこまでR28を育ててくるかも気になるところだ。(F1-Gate.com)


2008年F1チーム紹介


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カテゴリー: F1 / F1関連