SUPER GT スポーツランドSUGO
SUPER GT 第4戦「SUGO GT 300km RACE」の決勝レースが23日(日)、スポーツランドSUGOで行なわれた。雨が降ったりやんだりする難しいレースは、GT500クラスが予選7位から昨年のチャンピオン、No.1 DENSO SARD KOBELCO LC500(ヘイキ・コバライネン/平手晃平)が今季初優勝。GT300クラスも予選17位から大逆転でNo.11 GAINER TANAX AMG GT3(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)が勝利した。

予選日は好天からの下り坂、それでも路面がウエットになるような本格的な雨に降られることなく一日を終えたSUPER GT第4戦スポーツランドSUGO。そして迎えた決勝日は、予報通り朝から雨時々曇り。まだ梅雨明けをしていないことを実感する一日となった。

GT500クラス

雨は降ったり止んだりを繰り返し、スタートではNo.19 WedsSport ADVAN LC500、No.24 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R、No.12 カルソニック IMPUL GT-R、No.38 ZENT CERUMO LC500の4台がスリックタイヤをチョイスした。だが、フォーメーションラップを行っている段階で雨は強くなる。そして、午後2時36分、81周で行われる決勝レースがスタートとなった。

スタート直後の1コーナーで4番手スタートのNo.19 WedsSport ADVAN LC500(関口雄飛)がオーバーラン。一方10番手スタートのNo.64 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット)が追い上げ、トップ5台がNSXという展開となるのだが、ホームストレートへ戻ってきたNo.17 KEIHIN NSX-GT(小暮卓史)のリアカウルが外れて飛び上がるアクシデントが発生。17号車はピットへ戻ったもののリタイアとなってしまう。

2周目にはNo.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴)がトップに立ち、No.16 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀)、そしてポールのNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀)、64号車がこれに続き、NSX-GTの4台が争う展開に。7周目、GT300のマシンによるクラッシュでセーフティカーが導入され、10周終わりのところでリスタートしたものの、16周目には8号車が馬の背コーナーでスピンして脱落。雨脚は変わらず、時にはさらに強くなり、スリックタイヤを装着していた24号車らは耐え切れずルーティン(所定)のピットインを待てずに、タイヤ交換のためにピットへ戻っていく。一方トップを快走する100号車は徐々に後続を引き離しにかかる。一方の2番手争いはし烈となり、64号車と1号車とそれに続く5台の争いが繰り広げられたこともあり、トップと2番手のギャップは15秒以上にも及ぶこととなった。

少し雨脚が弱まってラインが乾き始めた37周目、真っ先にルーティンのピットインを行ったNo.24 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)が、再度スリックタイヤに履き替えてコースへ戻るが、その直後にコースアウトしてクラッシュ。この日2度目のセーフティカーが導入された。トップを快走してきた100号車のマージンは、残念ながらここで消滅してしまう。

レースも半分以上を消化した46周の終わりでセーフティカーが戻り、リスタート。ここでNo.6 WAKO'S 4CR LC500(アンドレア・カルダレッリ)、No.37 KeePer TOM'S LC500(ニック・キャシディから平川亮)、8号車、No.12 カルソニックIMPUL GT-R(ヤン・マーデンボロー)、19号車(国本雄資へ)の5台が同時にピットイン。さらに翌周にはNo.1 DENSO SARD KOBELCO LC500(ヘイキ・コバライネンから平手晃平)、No.46 S Road CRAFTSPORTS GT-R(千代勝正から本山哲)がピットインしたが、このタイミングでGT300のマシンの接触とコースアウトがあって、またしてもセーフティカーが導入される。順位は、100号車、64号車、23号車、36号車、1号車、46号車が同一周回。つまりここまでにルーティンのピット作業を終えているNo.1 DENSO KOBELCO SARD LC500とNo.46 S Road CRAFTSPORTS GT-Rが最も有利な状況となった。

52周終わりのリスタートのタイミングで、トップ4台はピットワークのためいったん戦線を離脱。そしてピットインした各車がコースに戻った時点で、順位は、トップを行く1号車と46号車に続き、No.6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也)、No.100 RAYBRIG NSX-GT(伊沢拓也)、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生)、No.16 MOTUL MUGEN NSX-GT(中嶋大祐)、No.8 ARTA NSX-GT(小林崇志)、No.37 KeePer TOM'S LC500(平川 亮)、No.64 Epson Modulo NSX-GT(松浦孝亮)、No.36 au TOM'S LC500(中嶋一貴)というオーダー。トップ2台以外はほぼ1ラップ以上のギャップを抱えての走行となってしまう。

レースは残り10周となって、コース上に再び雨が降り始める。1号車と46号車の2台の距離は徐々に狭まっていき、いつしかテール・トゥ・ノーズへ。昨年のチャンピオンであり2度の王者経験のある平手と、3度の王者を獲得しているミスターGT-Rの本山によるサイド・バイ・サイドのバトルは、最終ラップ、馬の背コーナー先の突然の強い雨により、SPコーナーで2台そろってコースアウトという展開となる。コースに戻った1号車に、46号車が接触。共にギリギリスピンすることなくコース内に踏みとどまり、ここで一瞬失速した46号車に対して、早く立ち直った1号車が先行し、そのまま最初にチェッカーを受けることとなった。

No.1 DENSO KOBELCO SARD LC500は今季初優勝。レクサスLC500は開幕4連勝を達成した。2位には最後尾スタートのNo.46 S Road CRAFTSPORTS GT-R。GT-R勢にとっては今季初表彰台獲得となった。3位にはNo.6 WAKO'S 4CR LC500が入り、ドライバーズランキングではトップに立った。レース序盤から悪夢の展開となってしまったNSX-GT勢での最高位は、No.8 ARTA NSX-GTの5位だった。

No.1 DENSO KOBELCO SARD LC500
ヘイキ・コバライネン
スタートする時には完全なドライでもなければ完全なウエットでもない、非常に難しいコンディションでした。僕たちはハード目のウエットを選んでスタートしましたが、それがベストチョイスになりました。今シーズンのクルマは最初から高いパフォーマンスを見せていたし、今日はタイヤチョイスに加えてセーフティカー(SC)のタイミングも僕たちにべストでしたね。本当は表彰台に上がれれば、と思っていましたが最高の結果になりました。今シーズン用のクルマが速いことは、ここまでの(LEXUS勢各車の)結果で充分アピールできていると思います。でも僕たちはなかなか良い結果を出すことができませんでした。速さは見せてきたつもりで、開幕戦では表彰台に上ることはできましたが、富士とオートポリスでは外してしまいました。でも今回勝つことで改めて、自分たちをアピールすることができました。勝ったことによって次回の富士ではウェイトが重くなったり(燃料)リストリクターが絞られたり、とBoPの制限を受けることになると思いますが、これがSUPER GTというレース。こんな条件の中で、その時その時のコンディションに強いクルマに仕上げる、とてもやりがいのある仕事です。次回の富士でも表彰台が確保できるよう、頑張ります。

平手晃平
スタートした後、天候はどう変わって行くのか? そのためにどんなタイヤを選ぶのか? 考えてみればSUGOではこういった難しいレースが多いですよね。僕たちは今日、ハードのウエットを選んでスタートしましたが、まずそれが大正解でした。そしてSCが入るタイミングがベストでルーティン(ピット)を終えてピットアウトして以降は、46号車との一騎打ちになっていました。大先輩の本山さん(本山哲選手)が相手で、タイヤをマネージメントしながら、タイム差をコントロールしながら逃げましたが、最後の最後、ファイナルラップの1コーナーは厳しかったですね。それを何とかかわして、これで勝った! と思ったんですが、コース後半でパラついていた雨が、最終ラップにどっと来て(苦笑)。馬の背では慎重に、早めにブレーキングしたんですが滑って姿勢を乱してしまいました。でミラーを見たら本山さんも同じように滑っていたので…。ラッキーだったな、と。それで何とか逃げ切ることができました。去年のSUGOは、そこまでにポイントを積み上げてきて、5位入賞くらいが目標だったのに2位表彰台。今年はシーズン序盤戦でなかなか思ったようなレースができずにポイントもあまり積み上げてこなかったので何とか表彰台を、と思っていたら優勝することができました。第二の故郷であるSUGOですがシリーズの中でのキーポイントでもあります。ここで勝てて嬉しいですが、続く富士と鈴鹿に向けて、ちゃんと戦えるクルマをつくることができれば、連覇も見えてくると思います。

GT300クラス

曇りながら雨の降らなかった予選日とは打って変わり、決勝日は雨模様。お昼頃には一旦小康状態となるが、スタート間近になるとまた降り出す。ある程度、気温もあるだけに路面は乾きだし、グリッド上の各車はタイヤ選択に頭を悩ませていた。グリッドの上位はレインタイヤを選んだが、中団以降の3台ほどがスリックでのチャレンジを行ったようだ。

また、昨日クラッシュして、予選を走れなかったNo.5 マッハ車検 MC86 GTNETも修復を終えて、最後尾からのスタートとなった。

スタートではポールポジションのNo.25 VivaC 86 MC(山下健太)が好スタートを切り、No.18 UPGARAGE BANDOH 86(中山友貴)、No.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3(飯田章)と予選上位が順当にスタート。4周(GT300の周回)で、GT500クラスのNo.17 KEIHIN NSX-GTがストレートでリアを壊して、破片が散乱したためにセーフティカーが入った。10周目にリスタートとなったが、ここで2番手を争っていた18号車とNo.3 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹)の競り合いにNo.19 WedsSport ADVAN LC500が絡んでしまい、18号車はコースアウトしてトップ争いから脱落。

これで25号車は楽になったかと思われたが、猛追してきたのはこの雨の路面にブリヂストンタイヤがマッチしたNo.51JMS P.MU LMcorsa RC F GT3(中山雄一)、そしてNo.65 LEON CVSTOS AMG(黒澤治樹)だ。予選7位の51号車がトップの25号車を抜きあぐねていると、65号車がベストラップを連発しながら、一気にトップを奪い取る。65号車のペースはその後も変わらず、36周目には20秒近いマージンを51号車に対して築いてみせた。この時、GT500のNo.24 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rがクラッシュ。これで2度目のセーフティカーランとなり、65号車のマージンは帳消しに。

そして、このセーフティカーランが終わった44周目に上位4台の65号車、51号車、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(山内英輝)、No.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一)以外の有力チームはピットに飛び込んだ。

トップ4台もセーフティカー直後の混乱を避け、間もなくピットインをするはずだったが、その後わずか2周でNo.48 植毛 GT-R(高森博士)とNo.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一)が相次いでコースアウト。これでこの日3度目のセーフティカーが導入された。これで上位4台はポジションの優位どころか、必須のピットインをすれば後方に下がることが決定的になるアンラッキーを引いてしまった。

3度目のセーフティカーが50周目に戻ってリスタートとなるとピットインをしていない4台に続いていたのは、No.50 Ferrari 488 GT3とNo.11 GAINER TANAX AMG GT3だった。先行する4台が51周目までにピットインすると、トップになったのは50号車を抜いた11号車だ。Q2に進めず予選は17位に終わったNo.11 GAINER TANAX AMG GT3は、序盤の雨ではダンロップタイヤがコンディションに合い、ビヨン・ビルドハイムが6番手までポジションを上げ、ピットイン前には一時8番手に下がるものの、2度目のセーフティカー明けにピットイン。素早いピットワークが功を奏した結果だ。50号車も予選16番手で、コントロール性の良いフェラーリ488GT3の特性を新田守男がポジションを上げ、3度目のセーフティカー直前にピットインしたことが、このポジションに繋がった。

この後、しばらくは逃げる11号車に50号車の都筑が追いすがるが、終盤に入るとジワジワと差が開いてしまう。だが、3番手を争うNo.4 グッドスマイル 初音ミク AMG(片岡龍也から谷口信輝)とNo.25 VivaC 86 MC(松井孝允)は40秒以上後方。トップの1号車、続く50号車は自らのペースを乱すことなく、終盤に再度強くなった雨もしのぎ、相次いでゴールした。No.11 GAINER TANAX AMG GT3の2人にとっては、2014年の最終戦もてぎ以来3年ぶりの、メルセデスAMG GT3では初の優勝となった。2位のNo.50 Ferrari 488 GT3も開幕戦岡山で大きなクラッシュを喫し、第2戦を欠場してマシンを改めるアクシデントを乗り越えての2位表彰台を得た。

3位争いだが、4号車と25号車が3度目のセーフティカー明けから75周以上も接戦を繰り広げた。64周目の1コーナーで25号車の松井が、4号車の谷口を交わしてポジションを入れ替える。だが、その後は谷口が松井のテールを脅かし続けるが、辛くも25号車が逃げ切って3位となった。この3位で、No.25 VivaC 86 MCの松井/山下組はドライバーズランキングのトップを堅持。ランキング2位にはこのレースを優勝したNo.11の平中/ビルドハイム組、そして平中組と同ポイントでNo.4 谷口/片岡組が追う形となった。

No.11 GAINER TANAX AMG GT3
平中 克幸
前半のスティントを走ったビヨン(・ビルドハイム)が良い走りですぐにトップ10圏内に上がったこと。そしてピットストップでチームが凄く頑張ってくれたこと。AMGは燃費の関係もあって、ピットストップ(の燃料補給)に時間が掛るのがウィークポイントなんですが、今日はとても速くて25号車の真後ろでピットレーンに出て4号車の前でピットアウトすることができました。それに今回はダンロップタイヤの温まりが早く、ピットアウトした次の周の2コーナーで25号車を抜くことができたし31号車もパスできて、これが今日の大きな勝因になりました。あと、セーフティカー(SC)にも助けられたラッキーな面もありました。勝てる手応えがあって、確信を持って走るのは本当に久しぶりで、それがプレッシャーになった部分もありましたが、優勝できてホッとしています。僕たちはダンロップタイヤを使用していて、その開発も担当しています。同じAMG勢では65号車が去年の開幕戦で勝っていて、今年の開幕戦では4号車が勝っていますが、AMGとダンロップタイヤのマッチングが上手く進まず、僕たちはなかなか勝てませんでした。でも6月のテストで良いセットを見つけることができました。そのテストでは自分のミスからエンジンを壊してしまいましたが、チームスタッフは誰も、僕を責めることなくクルマを直し、圧倒的なパフォーマンスを引き出してくれました。今回の優勝でチームのモチベーションも一層高まると思うので、これからも頑張ってチャンピオンを目指したいですね。

ビヨン・ビルドハイム
今日はとても難しいスタートでしたがダンロップタイヤにとっては最適なコンディションでした。スタートから10周くらいはトラフィックがとてもビジーだった(=コース上が混雑していた)のですが、速く、かつ慎重に走って6位までポジションアップすることができました。その後コンディションが変わって少し後退してしまいましたが、序盤のコンディションでのダンロップタイヤのパフォーマンスと、SCが出た際にすぐピットインする作戦が、ベストな結果に繋がりました。久々に優勝できてハッピーです。前回優勝したのは2014年(の最終戦・もてぎ)でしたが、相変わらずSUPER GTはタフなレースが続いています。今年も開幕から前回のオートポリスまでは、上手いセットアップが見つからなかったり、タイヤチョイスを誤ったり、あるいは不運なトラブルもあったりして納得できるレースができませんでした。でもSUGOや鈴鹿のテストで走って良いセットが見つかりました。今回、勝ったことでランキング3位になったと思いますが、今日のようなレースを続けて行けば、再びタイトル争いができると信じています。

関連:【SUPER GT】 第4戦SUGO 結果:DENSO KOBELCO SARD LC500が優勝

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カテゴリー: F1 / SUPER GT