レッドブル・ホンダ:2019年 F1日本グランプリ 振り返り
バルテリ・ボッタスが優勝を飾った日本GPはアレックス・アルボンが自己最高位となる4位をゲットしたが、マックス・フェルスタッペンはオープニングラップの接触ダメージで無念のリタイアを強いられた。
台風19号「ハギビス」が猛威を振るうことが予想されたため、三重県鈴鹿サーキットの日本GPオーガナイザーチームは日曜午前に予選、その数時間後に決勝というスケジュールに変更することを決定。この結果、各チームとドライバーは非常に慌ただしい1日を送ることになった。
日曜日の決勝レース前、台風一過の抜けるような青空がチームやファン、ドライバーたちを迎えた。しかし、2019シーズンの日本GPオープニングラップは大荒れとなり、アストンマーティン・レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンにとっては特に厳しいものになった。
まず、ポールポジションから発進したセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がスタートを大失敗し、予選3番手のバルテリ・ボッタス(メルセデス)が一気にホールショットを奪う。
そして、各マシンがターン2に向けてなだれ込む中、さらなるドラマが起きる。予選5番手のフェルスタッペンが好スタートを決めて3番手を伺おうとした矢先、シャルル・ルクレール(フェラーリ)にヒットされてまさかのスピンを喫してしまったのだ。
フェルスタッペンが集団の後方でコースに復帰する一方、ルクレールはフロントウイングに大きなダメージを受けながら2番手ベッテルの背後を追走。
ルクレールの後方からは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、そして予選7番手スタートからオープニングラップで5番手まで順位を上げたカルロス・サインツ(マクラーレン)が迫る。
4周目、破損した自分のフロントウイングがコース上に飛散していたことでルクレールがピットインを強いられると、サインツが4番手にポジションを上げる。
その遥か後方には、ルクレールの過度にアグレッシブなドライビングの被害者となった怒りのフェルスタッペンがいた。RB15のフロアーに大きなダメージを受けながらも、彼は後方から追い上げを図ろうとしていた。
予選6番手だったフェルスタッペンのチームメイト、アレックス・アルボンはスタートでひとつポジションを失って7番手に落ちたが、ターン2での混乱を切り抜けてシケインへのブレーキングでランド・ノリス(マクラーレン)を仕留めると5番手に浮上。スクーデリア・トロ・ロッソのピエール・ガスリーも6番手につける。
15周目、大きくダメージを受けたマシンで17番手を走行していたフェルスタッペンはピットに戻ってリタイアを決断。アップグレードを受けたホンダのパワーユニットを得て素晴らしいレースを過ごすはずだったフェルスタッペンの日本GPはここで終わりを告げた。
その1周後の16周目、アルボンは1回目のピットストップを行い、ミディアムタイヤへ交換。ベッテルとハミルトンに対してボッタスが7秒以上のリードを築く中、ベッテルがトップ3初のピットストップを記録する。
マクラーレンのサインツがレースディスタンスの約半分を消化してピットストップを行うと、アルボンが4番手に浮上。ボッタスはベッテル&ハミルトンから10秒以上のマージンで首位を堅持し、3番手のハミルトンの優勝の可能性はほぼゼロに見えた。
35周目、2回目のピットストップを行ったアルボンはソフトタイヤに交換してサインツの前方4番手でコースに復帰。サインツの後方には最悪のスタートを経験したルクレールが終盤に強力なドライブを見せるガスリーをかわして6番手まで挽回していた。
43周目、1ストップ戦略に見えていたハミルトンはボッタスから7秒差の首位に立っていたが、たったピットストップ1回で53周を走りきるのはやはり厳しかったようだ。
結局ハミルトンは2回目のピットストップを強いられて3番手に下がる。これで再び首位に立ったボッタスにとってはやや楽なレース展開となった。
レースが残り6周となった時点で、3番手ハミルトンが2番手ベッテルを射程圏内に捉え、4冠王者 vs. 5冠王者による終盤バトルが幕を開ける。
しかし、ベッテルがハミルトンの追撃を何とか凌ぎきり今シーズン4度目の2位フィニッシュを飾った。ハミルトンはそのまま3位に終わり、ボッタスが今シーズン3勝目を挙げた。
ホンダのホームサーキットでアルボンはデビューシーズンでの自己最高位更新となる4位でチェッカーを受け、レッドブル・レーシング加入以来5戦連続ポイントを記録した。
フェルスタッペン&アルボン、1000分の1秒単位で並ぶ予選タイムを記録
ホンダのホームサーキットで行われた予選では、ホンダ製パワーユニットを搭載するアストンマーティン・レッドブル・レーシングの2台が5番手・6番手グリッドを獲得したが、そのタイムはこれ以上ないほど接近していた。
予選Q3セッションでマックス・フェルスタッペンとアレックス・アルボンは1000分の1秒単位で並ぶ1分27秒851を記録し、アルボンよりも先に計測したフェルスタッペンが5番手グリッドを獲得した。
決勝では明暗分かれたフェルスタッペンとアルボン
53周で行われた決勝レースでは、ランド・ノリス&カルロス・サインツのマクラーレン勢との戦いに集中して落ち着いたレース運びを見せたアレックス・アルボンがF1デビューイヤーのベストリザルトを更新した。
レースペース、アグレッシブなオーバーテイク、クレバーなピット戦略などを見せたアルボンはほとんど単独走行だったが、初見参の鈴鹿サーキットで上出来の4位を獲得した。
レース後、アルボンは次のようにコメントした。
「重要だったのは最後までタイヤを持たせることだけだった。マックスがリタイアを強いられてしまったから、チームにポイントを持ち帰れたのは良かったし、4位は最善の結果だ」
「まだ新しい環境に慣れようとしているところだけど、自分のペースと進歩には概ね満足しているし、また一歩前進できた」
一方、フェルスタッペンは5番手グリッドから好発進を見せ、スタート直後のターン2で3番手シャルル・ルクレール(フェラーリ)に並びかけたが、アウトサイドから抜きにかかったフェルスタッペンとインサイド側のルクレールのホイール同士が接触。フェルスタッペンに非がないのは明らかだった。
このインシデントについて、フェルスタッペンは次のようにコメントした。
「かなり良いスタートを決めて、3番手を狙えると思った。そこまでは良かった。僕はターン2でアウトサイドにいたんだけど、シャルルが僕に向かって寄せてきた」
「シャルルは落とした順位をリカバーしようとしていたんだろうけど、レースは長いんだし、あのタイミングで大きなリスクを冒す必要はなかった」
逆境に置かれたフェルスタッペンが常にそうであるように、彼はここでも後方から挽回を図ろうとした。しかし、RB15が負ったダメージは甚大で、フェルスタッペンは15周目で今シーズン2回目のリタイアを強いられた。
大型台風によるスケジュール変更
台風19号「ハギビス」の接近に備えてレースオーガナイザーは金曜日の早い段階で土曜日の全セッションをキャンセルする決断を下していたため、土曜日の鈴鹿サーキットは無人となった。しかし、日本GPではこのような判断は異例ではない。
日本GPでは2004シーズンも台風22号「マーゴン」の影響で土曜日の全セッションがキャンセルされ、日曜日午前に予選が行われた。また、2010シーズンも三重県地方を襲った豪雨の影響で土曜日の全セッションがキャンセルされた。
この結果、レースクルーたちは午前5時に起床し、暗闇の中でのガレージ再整備から始まるタフな日曜日を過ごした。
山本尚貴のF1初ドライブに高評価
日本のトップカテゴリーのスーパーフォーミュラとスーパーGTで2018シーズン王者に輝いた山本尚貴が、日本GPのFP1でピエール・ガスリーの代役としてホンダ製パワーユニットを搭載したトロ・ロッソSTR15をドライブするチャンスに恵まれた。
山本は現在2019シーズンのスーパーフォーミュラでポイントリーダーに立っており、スーパーGTでは2009シーズンのF1ワールドチャンピオン、ジェンソン・バトンとコンビを組んでいる。
日本人ドライバーを再びF1グリッドへ送り出したいという希望をホンダ側が持っているのは明らかだ。
金曜日午前のFP1でガスリーのマシンを託された山本はレギュラーのダニール・クビアトにわずか100分の1秒差まで迫る印象的な速さを見せ、かねてから彼を評価していた
フランツ・トスト(トロ・ロッソ チームプリンシパル)の目が正しかったことを証明した。
山本のFP1起用についてトストは次のようにコメントしている。
「彼は才能あるドライバーで、日本で最重要とされる2シリーズの現チャンピオンでもある。また、鈴鹿を知り尽くしている」
「今シーズンの “ナオキさん” はヨーロッパラウンド数戦で我々に帯同し、鈴鹿で一緒に働くエンジニアたちとコミュニケーションを築きながら、トロ・ロッソのシミュレーターで時間を過ごしてきた」
2020シーズンに山本のF1デビューが実現するのだろうか? 今後の展開に期待したい。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / F1日本GP
台風19号「ハギビス」が猛威を振るうことが予想されたため、三重県鈴鹿サーキットの日本GPオーガナイザーチームは日曜午前に予選、その数時間後に決勝というスケジュールに変更することを決定。この結果、各チームとドライバーは非常に慌ただしい1日を送ることになった。
日曜日の決勝レース前、台風一過の抜けるような青空がチームやファン、ドライバーたちを迎えた。しかし、2019シーズンの日本GPオープニングラップは大荒れとなり、アストンマーティン・レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンにとっては特に厳しいものになった。
まず、ポールポジションから発進したセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がスタートを大失敗し、予選3番手のバルテリ・ボッタス(メルセデス)が一気にホールショットを奪う。
そして、各マシンがターン2に向けてなだれ込む中、さらなるドラマが起きる。予選5番手のフェルスタッペンが好スタートを決めて3番手を伺おうとした矢先、シャルル・ルクレール(フェラーリ)にヒットされてまさかのスピンを喫してしまったのだ。
フェルスタッペンが集団の後方でコースに復帰する一方、ルクレールはフロントウイングに大きなダメージを受けながら2番手ベッテルの背後を追走。
ルクレールの後方からは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)、そして予選7番手スタートからオープニングラップで5番手まで順位を上げたカルロス・サインツ(マクラーレン)が迫る。
4周目、破損した自分のフロントウイングがコース上に飛散していたことでルクレールがピットインを強いられると、サインツが4番手にポジションを上げる。
その遥か後方には、ルクレールの過度にアグレッシブなドライビングの被害者となった怒りのフェルスタッペンがいた。RB15のフロアーに大きなダメージを受けながらも、彼は後方から追い上げを図ろうとしていた。
予選6番手だったフェルスタッペンのチームメイト、アレックス・アルボンはスタートでひとつポジションを失って7番手に落ちたが、ターン2での混乱を切り抜けてシケインへのブレーキングでランド・ノリス(マクラーレン)を仕留めると5番手に浮上。スクーデリア・トロ・ロッソのピエール・ガスリーも6番手につける。
15周目、大きくダメージを受けたマシンで17番手を走行していたフェルスタッペンはピットに戻ってリタイアを決断。アップグレードを受けたホンダのパワーユニットを得て素晴らしいレースを過ごすはずだったフェルスタッペンの日本GPはここで終わりを告げた。
その1周後の16周目、アルボンは1回目のピットストップを行い、ミディアムタイヤへ交換。ベッテルとハミルトンに対してボッタスが7秒以上のリードを築く中、ベッテルがトップ3初のピットストップを記録する。
マクラーレンのサインツがレースディスタンスの約半分を消化してピットストップを行うと、アルボンが4番手に浮上。ボッタスはベッテル&ハミルトンから10秒以上のマージンで首位を堅持し、3番手のハミルトンの優勝の可能性はほぼゼロに見えた。
35周目、2回目のピットストップを行ったアルボンはソフトタイヤに交換してサインツの前方4番手でコースに復帰。サインツの後方には最悪のスタートを経験したルクレールが終盤に強力なドライブを見せるガスリーをかわして6番手まで挽回していた。
43周目、1ストップ戦略に見えていたハミルトンはボッタスから7秒差の首位に立っていたが、たったピットストップ1回で53周を走りきるのはやはり厳しかったようだ。
結局ハミルトンは2回目のピットストップを強いられて3番手に下がる。これで再び首位に立ったボッタスにとってはやや楽なレース展開となった。
レースが残り6周となった時点で、3番手ハミルトンが2番手ベッテルを射程圏内に捉え、4冠王者 vs. 5冠王者による終盤バトルが幕を開ける。
しかし、ベッテルがハミルトンの追撃を何とか凌ぎきり今シーズン4度目の2位フィニッシュを飾った。ハミルトンはそのまま3位に終わり、ボッタスが今シーズン3勝目を挙げた。
ホンダのホームサーキットでアルボンはデビューシーズンでの自己最高位更新となる4位でチェッカーを受け、レッドブル・レーシング加入以来5戦連続ポイントを記録した。
フェルスタッペン&アルボン、1000分の1秒単位で並ぶ予選タイムを記録
ホンダのホームサーキットで行われた予選では、ホンダ製パワーユニットを搭載するアストンマーティン・レッドブル・レーシングの2台が5番手・6番手グリッドを獲得したが、そのタイムはこれ以上ないほど接近していた。
予選Q3セッションでマックス・フェルスタッペンとアレックス・アルボンは1000分の1秒単位で並ぶ1分27秒851を記録し、アルボンよりも先に計測したフェルスタッペンが5番手グリッドを獲得した。
決勝では明暗分かれたフェルスタッペンとアルボン
53周で行われた決勝レースでは、ランド・ノリス&カルロス・サインツのマクラーレン勢との戦いに集中して落ち着いたレース運びを見せたアレックス・アルボンがF1デビューイヤーのベストリザルトを更新した。
レースペース、アグレッシブなオーバーテイク、クレバーなピット戦略などを見せたアルボンはほとんど単独走行だったが、初見参の鈴鹿サーキットで上出来の4位を獲得した。
レース後、アルボンは次のようにコメントした。
「重要だったのは最後までタイヤを持たせることだけだった。マックスがリタイアを強いられてしまったから、チームにポイントを持ち帰れたのは良かったし、4位は最善の結果だ」
「まだ新しい環境に慣れようとしているところだけど、自分のペースと進歩には概ね満足しているし、また一歩前進できた」
一方、フェルスタッペンは5番手グリッドから好発進を見せ、スタート直後のターン2で3番手シャルル・ルクレール(フェラーリ)に並びかけたが、アウトサイドから抜きにかかったフェルスタッペンとインサイド側のルクレールのホイール同士が接触。フェルスタッペンに非がないのは明らかだった。
このインシデントについて、フェルスタッペンは次のようにコメントした。
「かなり良いスタートを決めて、3番手を狙えると思った。そこまでは良かった。僕はターン2でアウトサイドにいたんだけど、シャルルが僕に向かって寄せてきた」
「シャルルは落とした順位をリカバーしようとしていたんだろうけど、レースは長いんだし、あのタイミングで大きなリスクを冒す必要はなかった」
逆境に置かれたフェルスタッペンが常にそうであるように、彼はここでも後方から挽回を図ろうとした。しかし、RB15が負ったダメージは甚大で、フェルスタッペンは15周目で今シーズン2回目のリタイアを強いられた。
大型台風によるスケジュール変更
台風19号「ハギビス」の接近に備えてレースオーガナイザーは金曜日の早い段階で土曜日の全セッションをキャンセルする決断を下していたため、土曜日の鈴鹿サーキットは無人となった。しかし、日本GPではこのような判断は異例ではない。
日本GPでは2004シーズンも台風22号「マーゴン」の影響で土曜日の全セッションがキャンセルされ、日曜日午前に予選が行われた。また、2010シーズンも三重県地方を襲った豪雨の影響で土曜日の全セッションがキャンセルされた。
この結果、レースクルーたちは午前5時に起床し、暗闇の中でのガレージ再整備から始まるタフな日曜日を過ごした。
山本尚貴のF1初ドライブに高評価
日本のトップカテゴリーのスーパーフォーミュラとスーパーGTで2018シーズン王者に輝いた山本尚貴が、日本GPのFP1でピエール・ガスリーの代役としてホンダ製パワーユニットを搭載したトロ・ロッソSTR15をドライブするチャンスに恵まれた。
山本は現在2019シーズンのスーパーフォーミュラでポイントリーダーに立っており、スーパーGTでは2009シーズンのF1ワールドチャンピオン、ジェンソン・バトンとコンビを組んでいる。
日本人ドライバーを再びF1グリッドへ送り出したいという希望をホンダ側が持っているのは明らかだ。
金曜日午前のFP1でガスリーのマシンを託された山本はレギュラーのダニール・クビアトにわずか100分の1秒差まで迫る印象的な速さを見せ、かねてから彼を評価していた
フランツ・トスト(トロ・ロッソ チームプリンシパル)の目が正しかったことを証明した。
山本のFP1起用についてトストは次のようにコメントしている。
「彼は才能あるドライバーで、日本で最重要とされる2シリーズの現チャンピオンでもある。また、鈴鹿を知り尽くしている」
「今シーズンの “ナオキさん” はヨーロッパラウンド数戦で我々に帯同し、鈴鹿で一緒に働くエンジニアたちとコミュニケーションを築きながら、トロ・ロッソのシミュレーターで時間を過ごしてきた」
2020シーズンに山本のF1デビューが実現するのだろうか? 今後の展開に期待したい。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / F1日本GP