「F1はかつて技術論争がスパイスを与えていた」とドメニカリが懐古

ドメニカリは、F1のCEOに就任する以前、フェラーリに長年在籍し、1991年に入社後、スポーティングディレクター、そして5年間にわたりチーム代表を務めるなど、チームの中核を担った経歴を持つ。
在任中、彼は多くのスポーティングレギュレーションにまつわる物議を現場で経験。その中でも特に有名なのが、1999年マレーシアGPにおけるフェラーリのバージボード問題だ。エディ・アーバインとミハエル・シューマッハがワンツーフィニッシュを果たしたものの、マシンのバージボードが違法と判断され両者が失格。これにより、ミカ・ハッキネンがドライバーズタイトルを手にしかけたが、フェラーリが控訴し、ルールの不明瞭さが認められたことで結果は覆った。最終的にハッキネンがドライバーズ王者となったものの、フェラーリはコンストラクターズタイトルを獲得する結果となった。
この出来事を例に挙げ、ドメニカリはAutosportのインタビューで、当時のF1に対して大きな愛着を持っていると述べた。
「私はそういったことをたくさん経験してきた。1999年のマレーシアGP、ダブルディフューザー、FRIC(前後連動サスペンション)、マスダンパー、Fダクト…。すべてがF1の歴史の一部だ」と振り返り、「当時は技術・スポーティング規則に関して、毎週末のように議論していた。かつては今よりずっと広範なグレーゾーンが存在していたが、今でもF1の人々は限界を突き詰める能力を持っている」と語った。
「正直なところ、今の論争は比較的軽微だ。もう少しあってもいい。あれこそがスポーツのスパイスだった」

変化するF1の「景色」
現在のF1のアイデンティティと時代への適応についても、ドメニカリは言及した。
ギアボックスを例に挙げ、F1の特定技術分野がもはやファンの興味を引く要素ではなくなっていると指摘。将来的に標準化(ワンメイク化)を検討すべきとの考えを示した。
「我々の世代のファンも、パフォーマンスや技術的関心を何が生み出すのかを再考しなければならない」と述べ、「持続可能な燃料への取り組みは絶対に正しい方向だ」と強調した。
一方で、「これが挑発的に聞こえるかもしれないが、チームが巨額を投じて独自設計するギアボックスは、もはや理にかなわない。性能差はごくわずかだし、ファンもそれを興奮の対象とは見ていない。技術とエンターテインメントが交差する領域に焦点を当てるべきだ」と続けた。
最後に、「かつて最先端だったものでも、今や巨額投資を正当化できないものが多い。時代が変わったことを受け入れる勇気が必要だ」と語った。
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