キャデラックF1 セルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスを抜擢した経緯を説明

キャデラックはそのアイデンティティを誇りにしているが、同時に10の既存チームと渡り合う上での困難さも現実的に認識している。
すでにロードンのほか、エグゼクティブ・エンジニアリング・コンサルタントにパット・シモンズ、最高執行責任者にロブ・ホワイト、テクニカルディレクターにニック・チェスターといった経験豊富な人材を揃えており、ドライバーラインアップに関しても経験重視の姿勢を示した。
その結果選ばれたのが、バルテリ・ボッタスとセルジオ・ペレスだ。両者は合わせて527戦出走、16勝という実績を持ち、スタート数と勝利数の合計でキャデラックを上回るのはフェラーリ(531戦、113勝)、アストンマーティン(594戦、32勝)、そして勝利数でレッドブル(65勝)、マクラーレン(17勝)だけである。
ただし、当初アンドレッティが掲げていた「アメリカ人ドライバーを必ず起用する」という方針からは一歩後退することになった。コルトン・ハータはスーパーライセンス取得の目処が立たず、他のインディカー勢も選考を突破できなかったからだ。
TWGモータースポーツ兼キャデラックF1チームCEOのダン・トーリスは「コルトンに関してはスーパーライセンスのポイントが足りない。しかし結局のところ重要だったのはF1での経験だ。我々には多くの経験豊富なスタッフが揃っているが、チームとしては全員が初めて一緒に仕事をする。だからこそドライバーが持つ経験こそが最も重要だと考えた」と説明した。
「もちろんアメリカ人ドライバーへの道をつくることは我々にとって大切で、それに取り組んでいく。しかし初年度に関しては、チームが必要とするもの、そしてこの2人がもたらすものを考えれば、最良の組み合わせだった」
キャデラックはGMとTWGの支援を受けており、インディカー、IMSA、NASCAR、WECといった北米モータースポーツの豊富なつながりを持つ。その中でGM社長マーク・ロイスは、現在の候補者の中で最も確実性を持つ存在としてボッタスとペレスが際立ったと語る。
「この2人は表彰台と勝利の経験を持ち、それを我々は非常に重視している。新しいマシンを開発する上で、特にモータースポーツにおいてはドライバーとエンジニアとの関係が極めて重要だと私は知っている」
「TWGとGMが巨額の投資を行い、開発ツールも人材も揃った。そこにF1サーキットを知り尽くした経験豊富なドライバーが加わることは大きな意味を持つ。この経験あるドライバーたちからのフィードバックが、キャデラックがF1という大舞台にフルワークスチームとして初参戦する上で歴史的な意味を持つと考えている」
「コミットメント、投資、人的リソース、そしてドライバー。この組み合わせは勝利を狙えるものだと確信している。2026年の参戦に向けて非常に手応えを感じている」

アメリカ人ドライバーについては、インディカーからの転向が難しいわけではなかった。ただ現時点でボッタスやペレス以上の確実なパフォーマンスを保証できる存在はいなかった。ロイスは「文化の違いは確かにあるが、重要なのは経験と勝利の記録。そしてドライバーとチームの間の技術的なやり取りだ」と強調する。
一方で、アメリカ人若手のジャック・クロフォードはスーパーライセンス取得が近づき、アストンマーティンとの関係を通じて2026年規則に触れているが、まだF1出走経験はない。ボッタスはメルセデスで2026年規則の開発に関わり、パドックに継続的に出入りしている点も評価された。ペレスについては、2024年末にレッドブルを離れシートを失っていたが、会談を通じてモチベーションに不安がないことを確認できた。
トーリスは「複数の候補の中から選ぶのは難しい決断だった」と認めるが、ロードンが集めた顧問陣と共にドライバープロフィールを精査し、最終的にボッタスとペレスに収束したという。
「最終的にはマークと私の会話に基づいて決定した。GMの幅広いモータースポーツ経験も非常に貴重だった。複数の観点から検討した結果、我々は一致して『この2人が2026年に我々を導くドライバーだ』と確信した」
2026年は経験豊富な2人のレース勝者を起用することで盤石のスタートを切り、将来的にはアメリカ人ドライバーを参戦に備えさせる──キャデラックはそうした方針を明確に打ち出している。
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