ピアストリ マクラーレンF1内で揺らぐ“主導権” 元F1王者が危惧した無線一言

ピアストリはマシンのセットアップに依然として苦しみ、納得のいかない状態のままレースに臨むことを余儀なくされた。
しかも、週末の議論を呼んだペナルティにより決勝は5位。ノリスとの差は24ポイントに拡大し、残り3戦で追う立場が一段と厳しくなっている。
ヒルが懸念した「無線の一言」──“What's the plan?”
デイモン・ヒルとジョニー・ハーバートは、ポッドキャスト『Stay on Track』でインテルラゴス週末を振り返った。
ヒルは、ピアストリの無線内容に強い違和感を覚えたという。
「ブラジルでのレース中、ピアストリが『What’s the plan?(どうすればいい?)』と言ったんだ」とヒルは語った。
「その瞬間、“彼は自分が何をしたいのかすら見えていないのか?” と感じてしまった」
「レーシングドライバーから聞きたい言葉じゃない」
この言葉には、近年F1で加速する“エンジニア主導のセットアップ文化”への皮肉も含まれている。
ヒル自身、1999年の最終年に「データがすべて」という流れが強まり、ドライバーの裁量が奪われていくことに危機感を抱いていた。
一方、ハーバートはエンジニアリング偏重に一定の理解を示しつつも、こう付け加えた。
「完璧を求めるのは分かる。けど、完璧が良いレースを生むとは限らない」とハーバートは語った。
「ドライバーが主導権を持つべき時もある」
この“主導権”こそ、ヒルがピアストリに欠けていると感じた部分だ。
メキシコGP無線で露呈したプレッシャー
ピアストリは、このタイミングで最悪の形でスランプに陥っている。
メキシコGPでQ3最後のアタックが8番手に終わると伝えられた際、無線は沈黙。すでに大きな精神的負荷を背負っている様子が生々しく伝わった。
最後の表彰台はイタリアGP。その後はノリスとマックス・フェルスタッペンが完璧に近い形でポイントを積み重ねており、ピアストリはポイント差以上の“勢いの差”にさらされている。

3戦でタイトル奪取は可能か?
残りはラスベガス、カタール(スプリントあり)、アブダビの3戦。ピアストリが全勝+スプリント勝利でも、ノリスが2位を並べるだけでタイトルはノリスの手に渡る。
つまり、ピアストリに必要なのは
「完璧な週末×3」
かつ
「ノリスの失速」
という極めて厳しい条件だ。
しかし、デイモン・ヒルは一筋の希望を口にしている。
それは、マネージャーのマーク・ウェバーがピアストリに与える“精神的バックアップ”だ。
「ウェバーが裏で支えてくれているのは間違いない」とヒルは語った。
「ただ、最終的にマシンに乗るのはピアストリ自身。MCL39の力を100%引き出せるかどうかは、彼次第だ」
ピアストリはこの言葉をどう受け止めるのか。
マクラーレン内で揺れ始めた“主導権の構図”を取り戻せるかどうかは、ラスベガスでの走りにかかっている。
カテゴリー: F1 / オスカー・ピアストリ / マクラーレンF1チーム
