キャデラックF1、フェラーリ旧型車で実走テスト開始「チーム一体化に効果」
キャデラックF1の2026年F1参戦に向けた準備が本格化している。チーフテクニカルアドバイザーのパット・シモンズは、チームがすでに2年前のフェラーリマシンを使用して実践的なテストを行ったことを明らかにした。

オースティンで記者団に語った元ウィリアムズ/ルノーのベテランであるシモンズは、このテストがチームのメカニックたちに貴重な実務経験をもたらしたと説明した。

「我々は2年前のマシンを使ってテストに参加することができ、メカニックたちがチームとして協力しながら作業する良い機会になった」とシモンズは語った。「油圧のエア抜きや燃料補給といった基本的な作業を学ぶことが目的なんだ。

この初回テストはチームスピリットの醸成にも非常に有効だったし、日常的なオペレーション面でも有意義だった。今後もう1回同様のテストを行う予定だ」

アメリカを拠点とするキャデラックは、フェラーリ製のパワーユニットを搭載して2026年にF1の11番目のチームとして参戦予定。シモンズは、シャシーが「数週間以内に」FIAによるクラッシュテストを経てホモロゲーション(認証)を受ける段階にあると明かした。

「私のキャリアの中でも、こんなに早く準備が整うのは初めてだ」とシモンズ。「だが我々にとってはこれが正しいやり方だ。何よりも準備不足で開幕テストに間に合わないチームを、過去に見たことがあるだろう。我々は同じ轍を踏むわけにはいかない」

アメリカ3拠点+欧州連携、万全の布陣
チームの拠点はアメリカ国内のシャーロットとフィッシャーズ、そしてイギリスのシルバーストーンに分かれており、空力開発はトヨタのケルン風洞で実施されている。

「我々はアメリカのチームだ」とシモンズは強調する。「アメリカをベースにしているが、ヨーロッパの知見を活かすことは理にかなっている。地理的に離れていることは問題ではないし、精神的にはひとつのチームとして機能している」

フェラーリとの提携は限定的、「カスタマーではない」
キャデラックの技術提携はフェラーリのエンジンとギヤボックスカセットに限られるとし、ハースのような“カスタマーチーム”とは異なると強調した。

「我々が受け取るのはエンジンとギヤボックスカセットだけだ」とシモンズは説明する。「だがギヤボックスキャリアやリアサスペンション、フロントサスペンションなど、他のチームがサプライヤーから購入している部品は自前で開発している。

私は“自分たちの運命を自らの手で掴むべきだ”という信念を持っている。カスタマーチームのままでは世界チャンピオンにはなれない」

ペレスとボッタスが開発に協力、ステアリング特性も調整
シモンズはさらに、キャデラックのシミュレーター開発にはセルジオ・ペレスとバルテリ・ボッタスの両ドライバーが協力していることを明かした。

「ペレスは『ステアリングのフィーリングを少し変えてほしい』と言っていた」とシモンズは説明する。「すでにこうした細かい要望に対応できる段階にあるのは素晴らしいことだ。

メルセデスの協力も得ており、ボッタスのシート形状やステアリングホイールの好みなど、いくつかの点を明確にすることができた」

アメリカ発チームの「欧州融合」戦略が成否の鍵
今回の発言から見えてくるのは、キャデラックF1が単なる“新規参入チーム”ではなく、GMグループの総力を挙げた本格的なワークス体制を構築している点だ。シモンズの言葉どおり、「アメリカ拠点+欧州技術提携」のハイブリッド構成は、地理的な分散を超えて一体運営することを目指している。

また、エンジン以外を自社開発とする方針は、将来的な完全ワークス化への布石ともいえる。ペレスとボッタスという経験豊富なドライバーがシミュレーター段階から関与している点も、マシンの完成度を初年度から高める重要な要素となりそうだ。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / キャデラックF1チーム