トヨタ
FIA世界耐久選手権(WEC)第3戦 第82回ル・マン24時間レースが終了。6月15日(日)午後3時に長く、過酷な24時間レースのチェッカーが振られた。トヨタ・レーシングのTS040 HYBRID #8はサバイバル戦の様相を呈した終盤戦を戦い抜き、3位でフィニッシュ。トヨタ・レーシングは、2年連続の表彰台を獲得した。

アレックス・ブルツとステファン・サラザン、中嶋一貴の3名がドライブしたTS040 HYBRID #7は、ポールポジションからスタートを切り、レースが折り返しを過ぎるまでは、2位に90秒以上の差をつけてレースをリードした。

しかし、中嶋がドライブ中に予測不能な電気系トラブルに見舞われ、#7は夜明けを待たずにアルナージュコーナーの先で停止。ピットへと戻ることは出来ず、13時間53分を戦い正式にリタイア届けを済ませた。

一方、3番手グリッドからスタートを切り、同じく勝利への期待がかかっていたTS040 HYBRID #8だったが、スタートから90分後に見舞われた突然の豪雨の中、スリックタイヤを装着していたニコラス・ラピエールがミュルサンヌ・ストレートでの多重クラッシュに巻き込まれ、事実上優勝争いからは脱落してしまった。

このアクシデントにより、#8は大きなダメージを負うこととなったが、ピットへと自力で戻った#8は、チームの迅速な修復作業により、前後のボディカウルと左フロントのサスペンションを交換。およそ50分間のピット作業の後、#8は首位から8周遅れでコースへ復帰した。ほぼ最後尾近くまで後退していた#8だったが、少しでも多くのポイントを獲得すべく追撃を開始。

レースが8時間を消化したところで、#8はクラッシュに起因する空力的なバランスの不調に見舞われ、修復するために8分間ほどのピット作業を余儀なくされた。

しかし、アンソニー・デビッドソンとラピエール、そしてセバスチャン・ブエミの3名は、着実なペースで順位を上げて、レース終盤にはトップ4まで浮上。ゴール1時間40分前にライバルがテクニカルトラブルに見舞われたこともあり、3位表彰台をその視界に捕らえた。

序盤戦の2時間の不運で、上位フィニッシュから大きく遠のいたように見えた#8であったが、チームの懸命な努力と、終盤戦の2時間で局面が大きく動いたことで、トヨタ・レーシングに3位表彰台をもたらすこととなった。

3位でフィニッシュした#8のドライバー3名は、それぞれ30ポイントを獲得し、2位との差を20ポイントへと広げ、WECのポイントリーダーを堅守した。

木下美明 チーム代表:
ル・マンでの3位は大変喜ぶべき名誉だが、我々のTS040 HYBRIDは勝てるスピードを持っていただけに、今日は複雑な気持ちだ。予想外の出来事が多く、改めてこれがル・マンなんだと実感した。幸運は要らないが、もう少し、アクシデントが少なければ、と思う。しかし、それがモータースポーツであり、結果は厳粛に受け止めなければならない。この経験を糧に、我々はより強くなって帰って来る。加えて、世界選手権に照準を合わせ、次のアメリカ・オースティン戦から再び全力を尽くす。#8の酷いダメージを短時間で修復してくれたチームメンバー、またその車で諦める事無く走り続け、3位表彰台を獲得したドライバーに心から感謝したい。自分は、このチームを誇りに思う。最後に、アウディ、ポルシェの素晴らしいパフォーマンスを讃えたい。このレースに参加した全員が非常に激しく戦い、素晴らしいスピリットを見せてくれた。

TS040 HYBRID #7:
(アレックス・ブルツ/ステファン・サラザン/中嶋一貴)
決勝: リタイア、219周、ピットストップ17回、最速ラップ3分23秒112

アレックス・ブルツ:
本当に残念だという以外に言葉がない。我々はレースをリードしたが、トラフィックの回避などでも、過度のリスクは冒さないように心がけてきた。運に恵まれた部分もあるが、レースをコントロール下に置きながらリードを広げることが出来たし、それこそがル・マンでは必要なことだ。日中におけるタイヤの性能は抜群だったので、日の出を迎えるのを楽しみにしていた。しかし、それは叶わなかった。レースウィークの早い時期に話したが、我々がル・マンに勝つのではなく、ル・マンが我々を勝たせてくれるのであり、今回は勝たせてくれなかったと言うことだ。

ステファン・サラザン:
メカニック、エンジニアを始め、チームの仲間全員に本当に申し訳なく思う。誰もが皆、今日だけでなく、これまでのあらゆる準備過程で最大限の努力をしてくれた。我々はスタートからずっとレースをリードしていた。TS040 HYBRIDは本当に素晴らしい仕上がりだったので、必要以上の激しいプッシュもせず、リスクも冒さず、無理しない走りに努めた。しかし、今年のル・マンでは勝利の女神は報いてくれず、我々をコース上に止めてしまった。我々は最大限の努力と、レースに勝つため万全を尽くして来たのに非常に残念だ。しかし、ル・マンは長いレースで、何が起こっても不思議ではない。たまたま今日は不運が我々に起こってしまったということだ。

中嶋一貴:
こういうのを痛恨の極みというのだろうか。言葉が見つからない。我々を支えてくれた全ての人達に申し訳ない気持ちで一杯だ。あの瞬間までは素晴らしいレースをしていたと思っている。良いペースでレースをリードしていた。こういうことがあり得るとは思っていたが、今回実際に起こってしまった。しかし、これがル・マンであり、だからこそ挑戦し甲斐もあるのだと思う。また挑戦する。

TS040 HYBRID #8:
(アンソニー・デビッドソン/ニコラス・ラピエール/セバスチャン・ブエミ)
決勝:3位 374周、ピットストップ31回、最速ラップ3分23秒117

アンソニー・デビッドソン:
本当に波乱万丈のレースだった。我々のTS040 HYBRIDは全ての面においてスピードがあったが、トリッキーなコンディションに翻弄され、車体に大きなダメージを負ってしまった。そして後方からの追い上げを余儀なくされた。今回起きたことは誰にでも起こりえることの一つに過ぎない。こうして表彰台に立てたことに驚いている。アクシデントの直後にはほぼ最後尾近くまでポジションを落としたが、そこから表彰台を獲得出来たということで、速さは示せたと思う。今回のレースでは、勝利はつかむのではなく、やってくるものだった。

ニコラス・ラピエール:
ル・マンでの3位という結果は、序盤に起きたことを考えれば悪くない。#8のクルーのおかげで、我々は世界選手権でのポイントリードを広げることが出来た。しかし、とても残念だ。#7は週末を通して素晴らしい働きを見せてきて、それに見合うだけの結果が得られても良かった。我々は表彰台フィニッシュを果たしたが、それは決して望んでいた結果ではない。トヨタと我々は何年にもわたってル・マンで勝つために戦ってきて、今年は勝てる大きなチャンスだった。それだけに非常に残念な結果となってしまった。

セバスチャン・ブエミ:
ここル・マンには、優勝候補としてやって来たのに、それが勝ちにつながらなかったという点では、私は失望している。しかし一方では、多くの周回数を残してコースへ復帰し、それで3位が獲れたのでまだ救われた。アクシデントの直後は、とても表彰台など望めなかったからだ。我々は長い道のりを戻って来て、良い仕事をしたと思う。しかし、明らかにもっと行けたと思うので、今日は本当にタフな1日だった。我々はチャンピオンシップでは依然リードしており、少なくとも前向きにはなれる。

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カテゴリー: F1 / トヨタ / ル・マン24時間レース