F1シンガポールGPで「ヒートハザード」発令 ドライバーへの影響を解説
FIA(国際自動車連盟)は、2025年F1第14戦シンガポールGPに向けて「ヒートハザード(高温危険)」を宣言した。これは気温が31度を超えると予測される場合に発令されるもので、シンガポール特有の高温多湿な環境がドライバーに与える影響を考慮した新制度だ。

これにより、全チームはドライバー用冷却システムをマシンに搭載することが義務付けられる。

最低重量規定の変更や、ベスト着用の選択など、ドライバーの快適性と安全性に直結する今回の宣言は、過酷な市街地レースであるシンガポールGPにおいて大きな注目を集めている。

「ヒートハザード」宣言とは?
背景として、2023年のカタールGP週末に特に高温多湿な状況が発生したことを受け、FIAは今後同様のケースにどう対処するかを分析し始めた。

2025年シーズン開幕前には、スプリントや決勝のいずれかで気温が31度以上になると予報された場合、「ヒートハザード」を宣言できると確認された。

チームはFIAから宣言の通知を受け、このシンガポールGPでも同様に通知されており、「ドライバー・クーリング・システム」を搭載する必要がある。

F1 シンガポールGP上空からのマリーナベイ。高温多湿で知られるシンガポールGPはドライバーに大きな試練を課す

シンガポールはどのくらい暑いのか?
シンガポールは、F1カレンダーの中でも肉体的・精神的に最も過酷なレースのひとつとして知られている。市街地コースをF1マシンで走るだけでなく、高温多湿の環境が加わるためだ。

マリーナベイ・ストリート・サーキットでは、フリー走行2回目、予選、決勝が夜に行われるにもかかわらず、週末の3日間を通じて気温は30度以上、湿度も高いと予想されている。

「ドライバー・クーリング・システム」とは?
これは「ヒートハザード」下でドライバーに追加の冷却を提供する「唯一の目的」を持つシステムと定義されている。
ポンプ、配管、熱媒体タンクなど複数の要素で構成され、システムが生成する冷却液が耐火素材のベスト内のチューブを通じてドライバーに供給される。

この週末、すべてのマシンにコアシステム部品を搭載することが義務付けられているが、ベスト自体を着用するかどうかはドライバーの判断に委ねられている。設計の改良は継続中だ。

シンガポールグランプリ追加の冷却装置の一例。写真はランド・ノリスのクーリングベスト

最低重量への影響は?
この装置が義務付けられることにより、標準の最低重量800kgに加算が行われる。フリー走行、予選、スプリント予選では+2kg、スプリントや決勝では+5kgとなる。

セッションごとに増加幅が異なるのは、フリー走行や予選のように短い走行では液体を入れずにシステムを装着できるようにするためだ。

FIA F1競技規則の第26.19条にはこう記されている。

「いかなるドライバーも、ドライバー・クーリング・システムの一部を構成する個人装備品を着用しないことを選択できる。その場合でも、冷却媒体を含むすべての他の部品は装着しなければならない。さらに、通常使用する個人装備とシステムの一部である装備との質量差は、コックピットに0.5kgのバラストを搭載することで補わなければならない」

ドライバーたちの反応は?
メルセデスのジョージ・ラッセル(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーションの理事)は、すでにこのシステムを試用済みだ。バーレーンGPでは気温30度、路面温度50度近くの環境で着用したという。

ラッセルは「僕たちは今シーズン、暑いレースで何度かクーリングベストを使ってきた。でも今回が初めて『ドライバー・クーリング・システム』が義務化された。これはいいニュースだと思う」と語った。

「湿度90%の環境で、コックピットの温度が60度近くにもなると、まるでサウナの中にいるようなんだ。だから、このシステムを歓迎しているよ」

注目は金曜のフリー走行1回目に集まる。このセッションで20人の全ドライバーがシステムを試すことになる。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / F1シンガポールGP