マックス・フェルスタッペン完勝 レッドブルF1復活の5つの要因
レッドブル・レーシングはモンツァでマクラーレンに痛烈な敗北を与えた。マックス・フェルスタッペンは1周でもロングランでも速かった。この「奇跡」には5つの理由がある。モンツァでの勝利を受けて、今後もこの流れが続くのかという疑問が浮かぶ。

モンツァはF1の世界をひっくり返した。マックス・フェルスタッペンはイモラ以来初めてグランプリに勝利し、マクラーレンは全く歯が立たなかった。

その2戦前までは、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリがライバルを圧倒していた。マクラーレンはモンツァが少しは接戦になるだろうと予想していたが、史上最速のレースでの完敗は友も敵も驚かせた。

マクラーレンが意識していたのはフェラーリやメルセデスだった。レッドブルはまるで何もないところから現れた。前年のモンツァではチームは完全に迷走し、フェルスタッペンはマシンを「モンスター」と罵っていた。

しかし金曜フリー走行が終わる頃には、マクラーレンは発想を切り替えなければならないと悟った。脅威はレッドブルにあったのだ。予選での僅差の敗北はまだ受け入れられたが、決勝での切り札は通用しなかった。フェルスタッペンが初めてノリスより遅いラップを記録したのは15周目のこと。36周を終えた時点でフェルスタッペンのリードは5.4秒に達していた。

最終的にオランダ人ドライバーはマクラーレン勢に19.2秒差をつけてゴールした。ただしこの大きな差は実力差を誇張している。フェルスタッペンが37周目にピットインした後、マクラーレンはセーフティカーや赤旗での「無料ピットストップ」を期待してタイヤ交換をできるだけ遅らせた。その間だけで10秒を失っていた。

それでも「待ち」の戦術は、シーズン16戦中12勝を挙げていたチームがどれほど追い詰められていたかを物語っていた。チーム代表アンドレア・ステラはこう認めた。
「レッドブルは単純に速かった。その大きさには驚かされた。我々が一瞬前に出ても、彼らは追い抜いて走り去ってしまった」

レッドブルは2024年の失敗から正しい教訓を得ていた。しかしそれだけでは説明はつかない。マクラーレンも昨年より確実に進歩していたし、2025年の多くのレースではレッドブルを抑えていた。他にも理由があった。なぜ王者が突然つまずき、挑戦者が支配したのか。

1) サーキット特性
必要なダウンフォースが少ないほどマクラーレンの優位性は薄れる。一方レッドブルはそうしたサーキットで強さを発揮する。これは各チームが設計段階で「どのダウンフォース水準を最も効率的にするか」を決めているためだ。すべてのサーキットに完全対応するのは不可能である。

マクラーレンは中〜高ダウンフォース域で卓越した効率を誇るが、モンツァは最も不向きだった。マクラーレンは11コーナー中10で最速だったが、ストレートで大きく失っていた。理解を助ける比較を挙げると、モンツァの予選ラップでコーナリングに費やす時間は25%。ハンガロリンクでは47%に達する。

2) 路面
モンツァは伝統的に1ストップのレースだ。昨年だけは舗装が新しく、タイヤがグレーニングを起こして2ストップを強いられるケースがあった。だが今年はアスファルトが1年経過して状態が落ち着き、グレーニングは消えた。残ったのは極めて高いグリップ。これは空力性能が劣るマシンを助け、最強のマシンを不利にした。

Q1ではトップ20が0.865秒内に収まった。通常、長いスティントを伴う1ストップ戦略はタイヤに優しいマシンに有利だが、今回は違った。タイヤの消耗がほとんどなかったからだ。ノリスとピアストリがフェルスタッペンとの差を削り始めたのは28周目以降。すでに手遅れだった。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング) F1 イタリアGP

3) マシン
レッドブルはRB21を妥協なく開発し続けている。オーストリアGP以降、毎戦アップデートを投入してきた。他チームの多くはすでに開発を止めている。

アップデート例を挙げると、オーストリア=フロア、イギリス=ベンチュリーチャンネル&フロア、ベルギー=フロントウイング・冷却口・サイドポッド・フロントサスペンションアーム・リアブレーキダクト、ハンガリー=フロントウイング・フロントブレーキダクト、オランダ=フロントウイング、イタリア=フロントウイング・ベンチュリーチャンネル・フロア・フロアエッジ。

その結果、マシンは予測可能で安定性が増し、極端なバランス変動が消えた。これがタイヤマネジメントにも好影響を与えた。

4) セットアップ
レッドブルはセットアップで正しい賭けをした。ダウンフォースを犠牲にしてトップスピードを重視したのだ。これでマクラーレンをオーバーテイクでき、攻撃も防げた。

一方マクラーレンはMCL39の設計思想に縛られていた。モンツァ用に新しいフロント&リアウイングを投入したが効果は薄く、これ以上ダウンフォースを削ることはできなかった。結果、トップスピードはグリッド最下位に。予選1周の75%、決勝の68%を全開で走るモンツァでは致命的だった。

5) 作業方法
レッドブルはデータ一辺倒をやめた。以前はシミュレーターと計算結果が絶対だったが、2戦前からドライバーのフィードバックを重視するようになった。その結果、最適なセットアップに確実に近づいている。

金曜はパワーを強めに使い、土曜FP3は燃料を少なくして実戦に近い条件を再現する。これで予選と決勝に備えるのだ。ライバルを欺こうとして自分を誤解することもある。

スポーツ責任者ヘルムート・マルコはこう説明する。
「速く走らせればマシンはまったく違う挙動を示す。そのとき初めて学べることがある。それは計算だけでは導き出せない」

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