マクラーレンが提起したレッドブルのコストキャップ問題、F1コミッションで協議

『The Race』が最初に報じた通り、マクラーレンはレッドブルがインテルラゴスでフェルスタッペンのパワーユニットを交換した行為が、コストキャップの内側か外側かをFIAに正式に確認している。
問題が浮上したのは、「どのタイミングのPU変更がコストキャップに含まれ、どのタイミングが除外されるか」という点がF1の財務レギュレーションに明確に規定されていないためだ。
代わりにFIAは「PU交換をコストキャップ外に扱うには、十分な合理的理由が必要」とチームにガイダンスを示している。
一部のチーム、特にマクラーレンは、「信頼性上の懸念が理由ならコストキャップ外、だが性能向上を目的とした自主的な変更ならコストキャップ内」と理解している。しかしこれはグレーゾーンであるため、マクラーレン代表のアンドレア・ステラがブラジルGPでFIAの判断基準を求めた。
ステラはこう説明した。
「このようなパワーユニット交換は、レギュレーションの解釈を揺さぶるんだ。私は、このエンジンのコストがコストキャップに含まれるのか理解したい。
もし性能向上を理由に交換したなら、キャップに含めるべきだ。
だからこれが該当するのかどうか、見てみよう。ただ、我々がそれを確認できるわけじゃない。すべてレッドブル側の問題だから。
でも、これが我々が同じ判断をしない理由のひとつでもある。コストキャップに入ってしまうからだ。」
タイトル争いにも影響しうる判断
ステラの発言は単なる“レッドブル揺さぶり”ではなく、終盤戦のタイトル争いに直結する背景がある。
マクラーレンはオスカー・ピアストリ、ランド・ノリスともに主要PUコンポーネントの自由使用数を使い切っており、残り3イベントを現在のプールだけで戦い抜ける保証はない。
信頼性問題で強制交換となれば仕方がないが、性能向上を目的とした交換を検討する可能性も否定できない。
特に予選で不発だった場合、すでに下位スタートが避けられない状況なら、グリッド降格の痛手が相対的に小さくなる。
ただし、マクラーレンはコストキャップに収まらないPU交換は避けたい意向で、追加費用が制限を超える“リスク”となる。
2026年の財務規定が示す参考値では、パワーユニット一式の信頼性アローワンスは以下の通り。
■ 内燃エンジン:100万ドル(約1億5000万円)
■ ターボチャージャー:15万ドル(約2250万円)
■ MGU-K:17.5万ドル(約2625万円)
■ コントロールエレクトロニクス:21.5万ドル(約3225万円)
■ エナジーストア:21.5万ドル(約3225万円)
合計すると 約175.5万ドル(約2億6325万円)。
MGU-Hも含まれる現行PUは、約200万ドル(約3億円)と推定される。
マクラーレンが性能向上のためにPU交換を行うなら、ノリスとピアストリの両方に適用する必要があり、その総額は“約400万ドル(約6億円)”。これはチームのコストキャップに極めて大きい負担となる。
一方、フェルスタッペンがブラジルGPで示したように、ピットレーンスタートや下位からでも大幅に挽回できる。だからこそ、性能目的のPU交換がコストキャップ外と認められるかは、タイトル戦略にも直結する。

F1コミッションが議論するその他の項目
今回のF1コミッションでは、以下の複数のテーマも議論される予定だ。
■ F1が“1ストップレース”を防ぐためのルール変更の必要性
・3種類のタイヤ全使用義務
・1セットあたりの走行距離制限
などの案があるが、支持は広くないとされる。
■ スプリント週末のプラクティスにおける赤旗処理の扱い改善案
■ 2026年に向けた予選Q1/Q2時間調整案
■ レース全体の所要時間をより均一化すべきかという議題
以上の議題とともに、マクラーレンが提起したPU交換のコストキャップ問題が取り上げられる。
今回の争点がF1界に与える影響
PU交換の扱いは、タイトル争い、コストキャップ運用の透明性、そして各チームの戦略の幅に直結する。
特に2025年終盤のノリス対フェルスタッペン対ピアストリという優勝争いにおいて、判断ひとつで戦局が大きく動く可能性がある。
また、FIAが今回どのような基準を示すかは、2026年以降のPUコスト管理全体の先例にもなる。
F1は今、競技・財務・戦略の境目で揺れる大きな判断を迫られている。
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / マクラーレンF1チーム
