ローガン・サージェント WECで再出発「F1時代の評価は気にしない」

今季はGTカテゴリーでWECの全8戦に参戦し、来季にはフォードのハイパーカープログラムでフルタイムドライバーを務める予定だ。
F1時代には厳しい視線にさらされたサージェントだが、いま本人の口から語られるのは、証明への執着ではなく、自分の意思でレースを続けるという静かな決意だった。
F1を離れた時間が気持ちを整えた
イモラのWEC開幕戦で、サージェントはフォードのGTファクトリーチームとして実質的に機能しているプロトン・コンペティションのガレージにいた。F1を離れてからの時間について、サージェントは率直にこう語っている。
「この2年間? ビーチで座ってリラックスしていた」
「友人や家族と過ごして、フロリダらしい暮らしをしていた。すべてから少し離れる時間を持てたのはよかったし、主に友人や家族と過ごすための時間だった。家族がアメリカに戻ってきてから、長い期間ずっと一緒にいることは長いあいだなかった。だから皆とそういう時間を過ごせたのは本当によかった」
2024年の夏にウイリアムズのシートを失って以降、サージェントは表立った活動が少なく、SNS上の様子からはこのままレースに戻らないようにも見えた。しかし本人の中では、完全に競技を離れるつもりだったわけではなかったようだ。
「いずれ戻るだろうとはずっと思っていた。でも、自分の気持ちが自然にどう向かうかに任せようと思っていた。もし戻りたいと思わなければ戻らなかっただろう。でも、もちろん自然とまたそこに戻っていった。それは自分でもそうなると思っていたことだった」
インディカーではなく耐久レースを選んだ理由
気持ちを整理し、新たなマネージャーも加わったことで、サージェントには再び複数の選択肢が生まれた。そのなかで本人が選んだのが耐久レースだった。
「他の選択肢は実際のところインディカーくらいだったけど、それにはあまり興味がなかった。2021年に一度、耐久レースのパドックで時間を過ごしたことがあった」
「その雰囲気が自分に合うと分かっていた。チームメイトと一緒に協力しながらひとつの目標に向かっていくところがいいと思う。雰囲気ももっと落ち着いていて、それがいい。F1のように常に魚鉢の中にいるような感覚はない」
F1のような強い注目を集める環境から一歩引き、より協調性のあるカテゴリーへ移る決断は、サージェントにとって自然な流れだったようだ。IMSAでの2戦を経て、ほどなくしてフォードとの契約がまとまり、WEC参戦へとつながった。
高ダウンフォース車とは異なる難しさ
今季サージェントが駆るのは、近年まで慣れ親しんできたオープンホイールやLMP2とは大きく異なるフォード・マスタングだ。マシンの性格の違いについても、本人は率直に認めている。
「確かにかなり違う。僕はハイダウンフォースのクルマやLMP2を運転してきた。ハイパーカーには乗ったことがないけど、たぶんプロトタイプに近い感覚なんだと思う。正直に言えば、楽しいよ。運転していて面白いクルマだし、とても難しくて、しかもかなり違う」
「正直に言えば、ハイダウンフォースのクルマほど自分に合っているとは思わない。僕たちはオープンホイールやダウンフォースのあるクルマで育ってきたし、もちろんできる限り適応はする。でも、やっぱりダウンフォースがある方がいつも快適に感じる。ノルドシュライフェ? 将来的にはあるかもしれないけど、今すぐということではない」
ここには、F1やジュニアカテゴリーで培った感覚がそのまま通用するわけではない耐久レースの現実がある。同時に、自分にとって何が得意で何が異なるのかを冷静に把握していることも伝わってくる。

来季ハイパーカー参戦へ向けた準備
サージェントは来季、フォードのハイパーカークラスでフルタイムドライバーになる予定だ。今季をその準備期間と位置づけていることも明確にしている。
「そのためのテストは、今年のどこかの時点で始まるのは明らかだ。今年は本当にWECを理解し、選手権を理解し、すべてのサーキットを走って、来年に向けてできる限り準備を整える年なんだ」
F1では結果を急ぎ、短期間で評価される厳しさがあったが、いまのサージェントはより長い時間軸で自分のキャリアを組み立てようとしている。WECでの1年は、単なる復帰ではなく、次の本格挑戦への土台づくりでもある。
外部の評価に証明するものはない
もっとも印象的なのは、サージェントがもはや外部の視線に自分を縛られていないことだ。F1時代に浴びた批判についても、いまはまったく別の距離感で受け止めている。
「まったくない。何を証明する必要がある?」
「IMSAでLMP2に乗った3レースを見ればいい。1年も運転していなかったのに、あれはかなりうまくいった。だから、それがすべてを物語っていると思う。僕はいま、自分のために走っている。特に今はそうだ。外の世界が何を思おうと、まったく気にしない」
「以前にそういうことは経験してきたし、もう自分にとって興味のあることではない。僕はフォードを代表して走るし、自分自身を代表して走る。でも同時に、いまここにいるのは自分がここにいたいからであって、もう必ずしもここにいる必要があるからではない」
F1を去ったドライバーの物語は、しばしば“再起”や“復活”という言葉で語られる。しかし、サージェントが示しているのは、それとは少し異なる姿だ。誰かに認めさせるためではなく、自分が納得できる場所で、自分が望む形で走る。その静かなスタンスこそが、いまのローガン・サージェントの現在地なのかもしれない。
Source: GPblog
カテゴリー: F1 / ローガン・サージェント / WEC (FIA世界耐久選手権)
