メルセデスF1 カナダGP圧勝の裏に“ホイール加熱トリック” 寒冷対策が的中

Auto Motor und Sportによると、メルセデスはモントリオールを襲った気温低下を見越し、予選前の段階でマシンに変更を加えていたという。その狙いは、ライバルたちが苦しんだフロントタイヤのウォームアップ問題を回避することだった。
ライバル勢を苦しめたタイヤ温度問題
カナダGP決勝ではマクラーレンとフェラーリがフロントタイヤの温度管理に苦戦した。
オスカー・ピアストリとランド・ノリスはタイヤを適正温度まで持ち上げることができず、冷たく滑りやすい路面で度重なるロックアップを喫した。
シャルル・ルクレールも同様の問題を抱えた一方、ルイス・ハミルトンだけは比較的安定したペースを維持。メルセデスのエンジニアは、フェラーリとの差を1周あたり約0.3秒と見積もっていたという。
レッドブルもさらにわずかに遅く、マックス・フェルスタッペンはドライビングで差を補いながら2位争いを続けていた。
しかし、メルセデス勢だけは別次元だった。
予選前から進められていた“寒冷対策”
ジョージ・ラッセルはポールポジション獲得後、予選前にセットアップ変更を実施していたことを明かしていた。
「マシンにいくつか変更を加えた。正しい方向だったかは見てみないといけない。その変更は明日の予報を考慮したものだった。もしかすると今日の予選では少し不利になったかもしれない」
その具体的な内容については当初明かされなかったが、Auto Motor und Sportによれば、メルセデスはホイールの加熱効果を強化する方向で調整を行っていたという。
勝敗を分けたホイール加熱システム
現在のF1では、ブレーキから発生する熱をホイールへ伝え、その熱でタイヤ内部のカーカスを温める技術が活用されている。
通常はタイヤ温度の上昇を抑えるため、各チームは独自設計のホイールによって冷却効果を高める方向へ開発を進めている。
ところがカナダGPでは状況が逆だった。
メルセデスはブレーキダクト周辺の構成を調整し、より多くの熱気をホイールへ導く仕様を選択。これによりタイヤ内部から温度を上昇させることに成功した。
スタート前のグリッド走行や追加フォーメーションラップの段階で、エンジニアはセンサーを監視していたという。
「温度がしっかり上昇していることを確認できた。それが正しい方向だった。問題なく作動することが分かった」
2026年レギュレーション変更が追い風に
この技術が実現できた背景には2026年レギュレーション変更もある。
これまでF1では標準ホイールが使用されていたが、今季からは各チームが独自設計のホイールを使用できるようになった。
その結果、ホイール内部の熱管理に関する自由度が大きく拡大。メルセデスは寒冷条件に合わせて加熱量を段階的に調整できるシステムを構築したとみられている。
さらに2026年型パワーユニットでは回生ブレーキの割合が増加し、リアブレーキの負担が大幅に減少。ブレーキ自体の発熱量も少なくなったことで、多くのチームは「いかに熱を逃がすか」を課題としていた。
そんな中でメルセデスは逆転の発想を採用した。
メルセデスが掴んだ“寒い日専用の武器”
今回のモントリオールでは、通常なら冷却対象となる熱を積極的に利用することで、ライバルよりも早くタイヤを作動領域へ持ち込むことができた。
メルセデスのエンジニアによれば、決勝でもタイヤ温度は作動領域の下限付近に留まっていたという。それでもライバル勢よりは十分高く、安定したグリップを確保できていた。
ラッセルは予選で多少の犠牲を払った可能性を示唆していたが、その代償は決勝で大きく回収された。
週末全体を見据えてセットアップを選択した判断が、モントリオールでの圧勝を支えた重要な要因だったようだ。
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