ステファノ・ドメニカリ F1の“ショー化”批判に反論「革新こそ成長の原動力」
F1の最高経営責任者(CEO)ステファノ・ドメニカリは、シンガポールGP放送をめぐる“ショー化”批判の声に対し、F1の成長には「革新とコミュニケーションの進化が不可欠だ」と強調した。

カーロス・サインツがシンガポールGPでのテレビ中継において、セレブやドライバーのパートナーを過剰に映し出したと苦言を呈したことから、F1の演出をめぐる議論が再燃。F1のメディア部門は「常にレースのベストショットを届けることを最優先としている」と反論し、「オン・トラックの出来事を犠牲にしているわけではない」とコメントした。

一方で、独『Auto Motor und Sport』誌は先週のアメリカGP(オースティン)中継が「意図的にセレブの映像を避けた」と報道。フィニッシュライン上空のドローン映像やピクチャー・イン・ピクチャーによる走行比較など、技術的な映像演出が称賛された。

「スプリント導入も“革新”の一環」ドメニカリが語る成長戦略
イタリア・ミラノで開催されたデロイト主催「Brand Connection」イベントで、ドメニカリは伊『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙の取材に応じ、F1の成長には常に革新があったと語った。

「我々はすべての面で革新を試みてきた。スポーツ面ではスプリントの導入が象徴的な例だ。フォーマットを変えることで注目を高め、異なるアプローチでサーキットを見せることができた」とドメニカリは述べた。

彼によれば、この哲学はF1の発信方法にも通じているという。

「同じことはコミュニケーションにも言える。異なる形のコンテンツを、特に若い世代に向けて届けることだ。こうしたトレンドを読み取り、F1というプラットフォームをより大きな存在にできたことを誇りに思う」と続けた。

伝統と新世代ファンの両立が鍵
伝統的ファンと新規層のバランスについて問われると、ドメニカリはこう答えた。

「ファンベースは確実に拡大している。長年支えてくれたコアなファン層があり、同時に新しい世代にも届いている。重要なのは、異なる形で正しい情報を伝えることだ。技術データを重視するファンにも応えられるよう努めている。結局のところ、挑戦の舞台は常にサーキット上にある。それこそが我々にとって最も重要な部分だ。」

「進化を止めず、関連性を保つことが挑戦」
ドメニカリは今後もF1が時代に合わせて進化し続ける必要があると述べた。

「我々が直面する挑戦は、あらゆる次元で“関連性”を保ち続けることだ。テクノロジー面では持続可能な燃料や新レギュレーションなどで主導的な役割を果たすことになるだろう」

「もう一つの側面はエンターテインメントだ。これまで以上に包括的で、サーキットやデジタルなどあらゆる形でファンに独自の体験を提供する必要がある」と締めくくった。

F1の“ショー化”は危険か、それとも進化か
今回のドメニカリの発言は、F1が“スポーツかショーか”という二項対立を超える視点を示したものだ。サインツの批判が象徴するように、F1中継の「演出過多」への懸念は根強いが、一方でNetflix『Drive to Survive』の成功が示すように、映像と物語による発信は新たなファン層を生んできた。

F1のメディア戦略は今後も、「競技の純度」と「観る側の体験価値」の両立を模索する局面にある。
そしてドメニカリが言うように、「進化を止めない」ことこそがF1の存続条件である以上、2026年の新時代に向けてF1は“伝統の再定義”を迫られている。

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カテゴリー: F1 / リバティ・メディア