インディ500予選1日目 アレックス・パロウ最速 コルトン・ハータ奇跡の復活劇

0.0198秒差の首位争いと、10マイル・4周の末に0.0028秒差で明暗が分かれた予選劇――インディアナポリス500の予選は、時速370kmを超えるスリルとともに、今年も圧巻のドラマを生んだ。
土曜日には13番手から30番手までのグリッドが確定し、1番手から12番手のドライバーは日曜のポールポジション決定戦に進出。下位4台は、決勝最後の3枠をかけて「ラスト・チャンス・クオリファイ」に臨むこととなった。
首位にはおなじみの名前が並んだが、6位には大番狂わせのルーキーが登場。さらに30位争いは、今年も痛烈で手に汗握る展開に。以下、この日の注目トピックを追っていく。
快進撃のプレマ
ロバート・シュワルツマンが初めてオーバルを走ること、そしてルーキーチームのプレマが火曜の走行準備すら整っていなかったことを考えれば、土曜に6番手を獲得したことはまさに驚異的。
火曜の走行を逃した後も、プレマは地道な作業を続けてきた。シュワルツマンのマシンはチームメイトのカラム・アイロットよりも好調に見えたが、インディカー常連チームからの技術支援もなく、チームとしてもオーバル初挑戦の中で6位と23位を記録したのはまさに快挙だった。
予選後のシュワルツマンは、インディカー中継で近年まれに見るほど喜びを爆発させたインタビューを披露。
「正直、最高の気分だった」
「神経をくすぐられるような感覚だった」
「これまでさまざまなカテゴリーを経験してきたけど、今回の予選は間違いなくキャリアで最も難しい予選だった。F1カーにも乗ったことがあるけど、ここまでチャレンジングなことはなかった。1周じゃなくて4周、しかも毎周ミスできない」
「最初の1周で“233マイルか、速い!いい感じだ”って思った。でも3周目からマシンがちょっとナーバスになって、“ちょっと工夫しなきゃ”と。でも、なんとか踏ん張った。ゴールしてホッとしてタイムを見たら、パト(・オワード)にかなり近くて、“これはいい走りだったかも!”って思った」
今季まで在籍していた元テクニカルディレクターのマイケル・キャノンの功績かもしれないが、それはプレマの努力に失礼かもしれない。ヨーロッパから来たクルーと現地スタッフを融合させて急成長を遂げたのは間違いなくチームの力だ。
デビュー戦でトップ25に入れれば成功と言えるが、6位と23位はまさに驚異だ。
奇跡の復活劇
現地時間12時5分、コルトン・ハータはターン1で激しくクラッシュし、マシンは裏返しのまま火花を散らして滑走した。そして午後4時45分、彼はインディ500の出場権を勝ち取っていた。
2022年と2024年にも似たようなクラッシュを経験していたハータだが、それを乗り越えて29番手のタイムを出したことは、その勇気と不屈の精神を物語っている。
さらに驚くべきは、出走マシンがショートオーバル用のスペアカーで、しかもわずか4時間足らずで準備されたという点。メインカーは1年かけて仕上げてきたものだった。インストレーションラップも行わず、クラッシュ現場のターン1に再び230マイルで飛び込んでいく胆力は称賛に値する。
本来ならポールや優勝を狙える速さを見せていただけに、満足な結果ではないかもしれないが、昼過ぎの惨状からここまで持ち直したことは本当に見事だった。
同様のケースとして、マーカス・アームストロングも土曜朝のプラクティスでクラッシュし、復帰の許可が下りたのは終盤。ラストチャンス予選に回るものの、クラッシュ後に再びコースに戻っただけでも大きな一歩だ。

ポールを狙う12名
インディ500予選では「早い出走順が有利」と言われるが、アレックス・パロウはまたしてもその常識を覆した。ポイントリーダーである彼は25番目の出走にもかかわらず、見事トップタイムを記録。スコット・マクラフリンの記録を0.0198秒上回った。
ポールポジション決定戦進出の12名:
1. アレックス・パロウ(233.043mph/2:34.4781)
2. スコット・マクラフリン(233.013mph/2:34.4979)
3. ジョセフ・ニューガーデン(233.004mph/2:34.5036)
4. パト・オワード(232.820mph/2:34.6257)
5. スコット・ディクソン(232.659mph/2:34.7327)
6. ロバート・シュワルツマン(232.584mph/2:34.7828)
7. デイビッド・マルーカス(232.546mph/2:34.8080)
8. フェリックス・ローゼンクビスト(232.449mph/2:34.8726)
9. 佐藤琢磨(232.415mph/2:34.8591)
10. ウィル・パワー(232.144mph/2:35.0760)
11. マーカス・エリクソン(232.132mph/2:35.0843)
12. クリスチャン・ルンガー(231.809mph/2:35.3004)
マクラフリンは2周目のギアシフトミスでレブリミッターに当たったと悔やみつつ、昨年のポールを守る自信を口に。予選後の解説席ではシュワルツマンを称賛するなど、終始リラックスしていた。
ジョセフ・ニューガーデンは33番目の出走だったが、並び順から一度離脱してクルマを冷やし、効率よく走行して3番手タイムをマーク。昨年パト・オワードを逆転して勝利したドライバーらしい戦略だった。
マルーカスも注目に値する存在だ。昨年はマクラーレンとの契約が破棄され、TikTokで姿を見る程度だったが、見事な復活劇で7位に食い込んだ。
佐藤琢磨も、テスト中に大破したマシンを立て直してRLLから9位で突破。エリクソンも昨年のラストチャンス組から一転して11位通過。ルンガーは自己最高の28位を大きく上回る12位となった。
残る3枠をかけたラストチャンス
日曜のラストチャンス予選では、4台が4周のアタックを行い、1時間以内であれば複数回の挑戦も可能。インディ500の伝統的な「バンプデー」は、毎年ハラハラの展開を生む。
ラストチャンス予選の4名:
・ジェイコブ・アベル
・マルコ・アンドレッティ
・マーカス・アームストロング
・リヌス・ヴィーケイ
セッション中はグレアム・レイホールが30位のバブルラインに位置し、ギリギリの状況だった。残り12分でマルコ・アンドレッティを0.0028秒差でしのぎ、命拾い。
ヴィーケイとアームストロングは続けて失敗し、アンドレッティも走行準備が間に合わずタイムアップ。最終的にダレ・コイン勢のアベルとヴィーケイ、アームストロング、アンドレッティの4台が3枠をかけて戦う。
カイル・ラーソンの現状
昨年は5番グリッドだったカイル・ラーソンだが、今年はテスト・金曜と2度のクラッシュ。ファストフライデーではアロー・マクラーレンの苦戦も目立った。
それでも、ラーソンはまったく動じる様子を見せず、1回目のアタックで低迷した直後に改善し、最終的には21番手で通過。昨年よりも後方だが、クラッシュから立ち直って予選を終えた点は評価されるべきだ。
13~30位の通過者一覧:
13. コナー・デイリー(231.725mph)
14. アレクサンダー・ロッシ
15. キフィン・シンプソン
16. エド・カーペンター
17. サンティノ・フェルッチ
18. デブリン・デフランチェスコ
19. スティング・レイ・ロブ
20. クリスチャン・ラスムッセン
21. カイル・ラーソン
22. ルイ・フォスター
23. カラム・アイロット
24. エリオ・カストロネベス
25. カイル・カークウッド
26. ノーラン・シーゲル
27. ライアン・ハンターレイ
28. ジャック・ハーヴィー
29. コルトン・ハータ
30. グレアム・レイホール
なかでも衝撃だったのは、プラクティスで常に好タイムを記録していたカークウッドが25番手に沈んだこと。同じアンドレッティのエリクソンがトップ12入りを果たしただけに、選手権2位のカークウッドとしては不本意な結果となった。
また、史上初のインディ500・5勝を狙うカストロネベスにとっても、24位という結果はやや期待外れだった。
カテゴリー: F1 / インディカー