F1ドライバーが語る2026年F1“ヨーヨー現象”とは 新たな駆け引きの実態

F1、FIA、そしてメルセデスやフェラーリのような“勝っている側”は、オーバーテイク増加という点でこの変化を評価している。
一方で、従来のような限界ブレーキングや接触寸前の攻防とは異なる、人工的にも映る展開だという声もある。現場でステアリングを握るドライバーたちの受け止め方は、一枚岩ではない。
シャルル・ルクレール「思っていたよりずっと楽しい」
シャルル・ルクレールは、開幕前には懐疑的だったと認めつつも、実際にレースを戦ってみると印象は変わったと語った。
「シーズンの初めはとても懐疑的だったし、テストの後にシーズンへ向けて抱いていた期待も、レースに関してはあまり良いものではなかった」とルクレールは語った。
「でも、良い意味で驚かされた。少なくとも前方で戦っている僕たちにとっては、実際には思っていたよりずっと楽しかった。確かに、去年のDRSのときのように人工的なオーバーテイクもある。ただ、実際には限界での戦いになっているオーバーテイクも多いし、異なる状況で同じ地点に来たときにバッテリー残量が似たような状態になることもあって、それが実際にはかなり面白い。オーストラリアでもそうだったし、上海でもそうだった。最初に思っていたより、ずっと楽しめた」
一方で、予選については課題を感じているとした。
「予選に関しては、今までで一番楽しいものではなかった。だから、そこは見直す必要があるかもしれない。でも、バトルという点では思っていたよりずっと楽しめた。なぜそうなるのかというと、主にメルセデスが僕たちよりかなり強い一方で、バッテリーの最適なウインドウを外れると、一気にラップタイムを失うからだ。そのせいでマシン同士の差が縮まるし、順位変動が多くなる。さらに、後ろのクルマの方が前のクルマより多く回生できる。この2つが特に、戦いの中で一度入るとなかなか逃げ切れない理由になっている」
また、ヨーヨー現象が今後減っていくのか、それともレギュレーションの本質なのかと問われると、ルクレールは見方が揺れていることも明かした。
「オーストラリアの後にも同じことを言ったけど、上海ではスプリントレースと通常の決勝があった。だから、スプリントはそうした戦略を試して、決勝に向けて良いウインドウにいることを確認する良い方法だったと思う」
「実際、決勝でもかなり多くのオーバーテイクがあった。だから、今後は少し減っていくかもしれない。ただ、スプリントから決勝になっても、良い意味でそれほど改善しなかったことには驚いた。オーバーテイクに関しては同じくらい良かった。だから、僕の中でも少し複雑だ。最初のレースの後は、どんどん少なくなっていくとかなり確信していた。確かにヨーヨー効果自体は少しずつ減っていくだろう。でも、上海の後では、かなりの部分がクルマそのものから来ているとも思うし、それは残るだろう」
フランコ・コラピント「それほど人工的には感じなかった」
フランコ・コラピントは、異なるパワーユニットを搭載するマシンとのバトルで面白さを感じたと説明した。
「かなり長い周回数にわたって前に留まることができたから、僕にとってはかなり楽しかった」とコラピントは語った。
「僕にとっては、違うPUを積んでいるクルマと戦う方が、より良くて楽しく感じた。エネルギーマネジメントのやり方がチームごと、PUメーカーごとに違うからだ。そうなると、戦うのが少し楽になるし、守るのは少し難しくなるかもしれないけど、各チームがどこでエネルギーを使うかがすごく違うから、バトルがより接近して少し面白くなる」
「全体的には追従するのは難しい。でも、何台かのクルマをかなり近くで追ってみて、乱気流とかそういう面では去年より良く感じた。正直、楽しかった」
「中国は良いレースだったし、本当にかなり楽しめた。守っている時も、誰かを攻めている時も楽しめたし、全体的にかなり良かった。それほど人工的には感じなかった。オーバーテイクは常にギリギリのところにあったと思う。少し人工的に見えるものもあったけど、それもこのスポーツが行った変化の一部だし、まだ改善の途中で、正しい方向に進んでいると思う」
さらにコラピントは、まだ評価を下すには早いとしつつ、方向性そのものには前向きだった。
「まだ改善すべき領域はたくさんあると思う。でも大事なのは、彼らがそこを見ていて、理解していて、かなり明確に見ているということだ。そしてレースを重ねながら良くしていくだろう。まだ2レースしかしていない。好きかどうかを言うには本当に早すぎる。でも、全体的にはレースを重ねるごとに、そして年を追うごとに良くなっていくと思う」
ランド・ノリス「見ている側には良いが、乗っている側は違う」
ランド・ノリスは、ショーとしての面白さは認めながらも、ドライバーの実感としては従来のレースとは違うと指摘した。
「レースでのヨーヨー現象? これについては、みんな違う意見を持つと思う」とノリスは語った。
「ただバッテリーを使って、次のストレートではもうバッテリーがない。問題なのは、テレビで見るとすごく良く見えるし、視聴者はそれを気に入っているように見えることだ。多くの人が好きみたいだ。単に違うタイプのレースなんだ。僕自身、先週末は外からフェラーリのバトルなんかを見ていて楽しめた。正直、見ていてクールだった。だから、ある意味では良いことだとも思う」
「でも、そのレースの一部は、追い抜く側がバッテリーを使わなければならないから、その次の瞬間にはもうバッテリーが完全になくなっていて、ただの乗客になってしまい、何もできなくなることで成り立っている。そういう状況では、以前のような意味でレースをしているわけではない」
「何を求めるか、どう見たいか次第だと思う。FIAはこういう点を改善しようとしているし、時間とともにそうなっていくと思う。今は、まだこれがベストの状態だとは思っていないけど、時間を与えるべきだろう」
オリバー・ベアマン「ショーとしては素晴らしい」
オリバー・ベアマンは、ドライバーとしてのもどかしさを認めつつ、観客にとっては魅力的なレースになっていると評価した。
「ショーとしては本当に良いと思う」とベアマンは語った。
「レースは見た目として素晴らしい。でも、時には厳しい。中国でフランコと戦った時に少し経験したけど、1周かけてどこで仕掛けるかを考えて、ようやく動いたと思ったら、次のストレートで彼がものすごく多くのバッテリーを持っていて、そのまま飛ぶように抜き返していく」
「だから、うまくやれないと本当にフラストレーションがたまる。我々がキャリアを通じて慣れてきたものではない。普通なら、より良い立ち上がりをして、そのままストレートで良い走りにつなげる。でも、今は必ずしもそうならない。それが奇妙なんだ」
それでも、ベアマンは将来性に期待している。
「でも全体としては、ショーにとって本当に良かったと思うし、少し最適化して、少し手を入れれば、FIAはその点に非常に耳を傾けてくれている。ショーとして同じくらい良くしながら、ドライバーにとってはもう少し報われるものにできると思う。このハードウェアで何ができるかを見るのが楽しみだ。素晴らしいポテンシャルがあると思う」
リアム・ローソン「本物のレース感覚は少し違う」
リアム・ローソンもまた、ポテンシャルは認めつつ、ドライバーとして慣れ親しんできた感覚との差を口にした。
「正直、僕も同意する」とローソンは語った。
「明らかにポテンシャルはあるし、まだ本当に初期段階だから、もっと良くなっていくはずだ。でもドライバーの視点からすると、我々が慣れ親しんできた本物のレース感覚は、今年は少し違う。どうやって仕掛けるかを計画しなければいけないし、時には、たとえ賢くやってバッテリーを正しく使っても、オリーが言ったように結局また抜き返されてしまうことがある。だから、我々はそれに慣れていっているところだ」
“人工的”と“面白さ”が同居する過渡期
今回の各ドライバーの発言から見えてくるのは、2026年F1のレースが「面白くなった」と「従来のレースとは違う」の両方を同時に抱えているということだ。ルクレールやコラピントは実際のバトルを前向きに捉え、ノリス、ベアマン、ローソンはショーとしての価値を認めながらも、ドライバーとしての違和感を隠さなかった。
現時点では、ヨーヨー現象は単なる過渡期の副作用なのか、それともこのレギュレーション時代の本質なのか、まだ結論は出ていない。ただ少なくとも、FIAが改善に耳を傾け、現場も試行錯誤を続けている以上、この“新しい戦い方”はまだ完成形ではない。2026年F1は、まさにその途中にある。
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