2025年F1 カナダGP:モントリオールで注目の5つのポイント
スペインGPでの激戦と論争をもって幕を閉じた3連戦。その余韻を残したまま、F1パドックは1週間のインターバルを挟んで大西洋を渡り、北米ラウンド初戦となるF1カナダGPへと向かう。舞台は、例年ドラマに満ちた展開が繰り広げられるジル・ヴィルヌーヴ・サーキット。高速の市街地型レイアウトと狭いバリアが緊張感を高め、カナダグランプリはシーズン中でも屈指の波乱要素をはらむ一戦として知られている。

スペインでは、マックス・フェルスタッペンが3ストップ戦略で果敢に攻めながらも、終盤のセーフティカー導入と接触により失速。ペナルティポイント累積という新たなリスクを背負うことになった。一方、アストンマーティンのランス・ストロールは右手の痛みにより母国レースを前に欠場を強いられ、その出場可否が注目されている。

さらに、ドライバーズ選手権のトップを争うマクラーレンのオスカー・ピアストリとランド・ノリスのバトルも過熱。加えて、気温や路面特性が味方する可能性があるメルセデスが、カナダで再び台頭できるのかも注目点のひとつだ。

2025年シーズンの折り返し地点が近づく中で迎えるカナダグランプリ。今週末のF1カナダGPは、ドライバーたちの心理、チームの判断、そして天候までもが勝敗を左右する展開となりそうだ。タイトル争いに大きな影響を及ぼすこと必至の重要な一戦が、いよいよ幕を開ける。

フェルスタッペンはどう立ち直るか
マックス・フェルスタッペンはスペインGPの大部分で見事な走りを見せていた。レッドブルとともに攻勢に出て、3ストップの積極的な戦略でマクラーレンにプレッシャーをかけ続けた。

しかし、終盤に導入されたセーフティカーがすべてを狂わせた。レッドブルは新品のハードタイヤしか残っておらず、それを装着したフェルスタッペンは次第にポジションを失っていった。さらに、ジョージ・ラッセルとの接触が物議を醸し、最終的にタイムペナルティを科されて10位でフィニッシュする結果となった。

フェルスタッペンはレース翌日にSNSで「起きるべきことではなかったし、起きてはならなかった」と投稿。この件に対する見解は分かれるところだが、現実としてフェルスタッペンにはこの一件で3つのペナルティポイントが加算され、累積でレース出場停止まであと1ポイントに迫っている。

そのため、カナダとオーストリアの2戦では一切の罰則を回避する必要がある。アプローチを変えるのか、それとも「考えすぎない」ことこそがベストなのか――注目される。

ストロールは出場できるのか
バルセロナの週末からもう一つの疑問が浮上した。それはランス・ストロールの参戦可否だ。彼は土曜夜に右手と手首の痛みを理由に医師の判断で出場を取りやめていた。

アストンマーティンの発表によれば、この痛みは2023年のプレシーズントレーニング中に起きた自転車事故後に受けた手術に関連していると考えられている。スペインGPでは予選に出走していたため代役を立てることができず、翌週のモントリオールについても判断は保留されたままだ。

2023年のバーレーンGPでは、ストロールは怪我を抱えながらも強行出場しており、今回もその根性が問われることになるが、もし間に合わなければフェリペ・ドルゴヴィッチを筆頭とするリザーブ勢か、経験豊富な代役が急きょ起用されることになるだろう。

カナダグランプリ F1 ランス・ストロールスペインGPを欠場したストロールが母国カナダGPに出場できるかは依然不透明

続くマクラーレンのチーム内バトル
スペインでは後方で多くの混乱があったものの、マクラーレンの2人のドライバーはレッドブルの追撃にも動じず、オスカー・ピアストリがシーズン5勝目を挙げた。

この勝利は、1週間前のモナコGPでポール・トゥ・ウィンを果たし、ドライバーズ選手権の差を3ポイントにまで詰めていたランド・ノリスを再び10ポイント差に突き放す重要なものだった。

両者は互いにポールや優勝を狙える位置にあり、どちらが優勢かはレースごとに入れ替わる状況だ。マクラーレンもいつか両者が接触する可能性を認識しているが、ここまではクリーンに戦い続けている。シーズン中盤に差し掛かる中で、この均衡がいつまで保たれるかが注目される。

カナダGP F1ドライバーズ選手権トップ争いではピアストリとノリスがほぼ互角の接戦を繰り広げている

メルセデス再浮上のチャンス
今季の見どころの一つは、異なるサーキットごとに異なるチームがマクラーレンに対抗していることだ。マイアミではメルセデスのキミ・アントネッリがスプリントのポールを獲得し、イモラではフェルスタッペンが勝利。モナコではフェラーリのシャルル・ルクレールが挑戦権を握った。

そしてスペインでは再びレッドブルが前方を脅かしたが、カナダは近年メルセデスにとって好相性のサーキットだ。低い気温とコースレイアウトが彼らの強みを引き出す傾向にある。

もちろん、モントリオールの天候は予測不可能で、暑いレースになることもあるが、現時点の予報では気温は控えめ。それがメルセデスにとって追い風となる可能性は高い。昨年のカナダGPでは、ラッセルがフェルスタッペンと同一タイムを記録し、先に出したことでポールポジションを獲得している。予選のトップ7がわずか0.28秒差だったあの緊迫した展開が再現されるかもしれない。

前戦でコンストラクターズランキング2位をフェラーリに譲ったメルセデスにとって、反撃の週末となる可能性がある。

2025年のF1世界選手権 カナダグランプリ(カナダGP)昨年のカナダGP予選ではラッセルとメルセデスが輝きを見せた

ドライバーが戦いを楽しめるサーキット
昨年のカナダGPでは予選だけでなく決勝もスリリングな展開だった。雨により全チーム・全ドライバーにとって難しいコンディションとなり、複数のドライバーに勝利のチャンスがあった。最終的に勝利したのはフェルスタッペンだったが、トップ4がわずか5秒差でフィニッシュする接戦となった。

仮に今年は雨が降らなくても、ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットはドライバーがレースを楽しめる好レイアウトだ。長いストレートからシケインやヘアピンに飛び込む構造により、オーバーテイクのチャンスが豊富にある。特にターン1、ターン10のヘアピン、そして「ウォール・オブ・チャンピオンズ」が待ち受けるターン12~13の最終シケインが鍵となる。

これらのシケインの外側にはコンクリートウォールが迫っており、ミスすれば代償は大きい。ドライバーは常に完璧な集中を求められ、小さなミスがリズムを崩し、後続の標的になってしまう。

さらに、レースを心から歓迎する都市モントリオールの熱狂的なファンも加わり、カナダGPは毎年特別な雰囲気を作り出している。



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カテゴリー: F1 / F1カナダGP