F1イギリスGP:記者会見 Part.2 - ルクレール、角田裕毅、ラッセル
2025年F1イギリスGPを前にした木曜恒例のドライバーズプレスカンファレンスの「PART TWO」には、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、角田裕毅(メルセデス)、そして地元イギリス出身のジョージ・ラッセル(メルセデス)の3人が登壇。3人はシーズン前半の評価や今後の課題に加え、チーム内での立場や将来に関する率直な思いを語った。

ルクレールはフェラーリのアップグレードに期待を寄せつつも、マクラーレンの優位性を認め、「差を詰めるには複数の要素が必要だ」と冷静に分析。

角田裕毅は「RB21への適応には時間がかかる」としつつも手応えを感じ始めていると述べ、サポートを強調。ラッセルは契約問題への集中報道にも動じる様子を見せず、「パフォーマンスがすべてだ」と強調した。

Q:では今日はシャルル選手から始めさせていただきます。直近4戦で3回の表彰台を獲得されていますが、今回のイギリスGPに向けて、フェラーリとご自身の自信のほどはいかがでしょうか?

シャルル・ルクレール: そうだね。まず最初に、最近の傾向にはかなり満足している。僕らは一歩一歩前進している。でもまだ完全には満足していない。というのも、最終的な目標はレースに勝つことだから。とはいえこのレースは、過去にも僕たちがけっこう競争力を発揮していたサーキットだと思う。ルイスはここでいつも素晴らしい走りをしているし、今週末はいい週末になることを願っているし、優勝を狙えたらと思っている。最後に優勝争いをしたのはかなり前だから、今回こそはそのチャンスになるといいね。

Q:まだ満足されていないとのことですが、今季は折り返し地点に来ました。これまでフェラーリとして何を成し遂げてこられたか、また後半戦に向けての展望を教えていただけますか?

ルクレール: 今シーズン前半は、僕たちが予想していたよりもずっと厳しかった。去年はシーズン終盤にかけて優勝争いをして、コンストラクターズ争いもしていたから、今年は少なくとも同じ位置からスタートできると期待していたけど、実際はそうじゃなかった。もう少し苦戦していたね。でも今は、開発によって自分たちの方向性が見え始めていて、前に進めている。これからさらにアップグレードもあるし、できるだけ早く投入されれば、マクラーレンやレッドブルとの差を縮める助けになると思う。メルセデスは少しアップダウンがあるように見えるけど、結局は僕たちがほかよりもいい仕事をして、前のチームに追いつかないといけない。

Q:後半戦はどのようになりそうでしょうか?

ルクレール: わからないけど、前半戦よりは明るい展開になることを願っている。

Q:ありがとうございます。それでは角田選手にうかがいます。オーストリアGPでは厳しいレースとなりましたが、当時抱えていた問題についてはご理解されましたか?

角田裕毅: レース中の問題は自分自身の判断ミスでした。オーバーテイクを試みたときに、たぶんあと1周待ってもよかったと思うんですけど、あの場面であそこまで全開で行く必要はなかったですね。なので、あのときのレースクラフトは自分にとって理想的じゃなかったです。

ペースに関しては、フロントウイングを交換してからは正直そんなにいい参考にはならなかったと思っています。ただ、今自分が一番集中して取り組んでいるのがこの部分で、特にロングランは、これまでいつも苦手だったので、今回の週末に向けて何ができるかをこの数日間すごく考えてきました。これまでやったことがなかったアプローチもいくつか試そうと思っているので、今は前向きな気持ちです。ショートランについても、自信を持てるようになるまで、もう少しのところまで来ていると思います。

Q:一部の方は、レッドブルは「1台体制」だと見ておられます。レッドブル・レーシングの全員から全面的なサポートを受けているという実感はおありでしょうか?

角田裕毅: はい、もちろんです。特に最近は、クリスチャンやヘルムートから、これまで以上にサポートを感じています。たとえば、気分をリセットするためにレッドブル・レーシングのフィジオと一緒にイギリス南部に行ったんですけど、それも2人の提案で、自然の中でリフレッシュすることが目的でした。それが自分のリズム作りにすごく役立ちました。

それに、今まで試したことのないことをいろいろやらせてもらっていて、普通なら許可されないようなこともやらせてくれているので、本当に感謝しています。

Q:ありがとうございます。ジョージ選手、お会いできてうれしいです。新しい契約は決まりましたか?

ジョージ・ラッセル: いきなり直球だね。前回話したときから何の進展もない。正直に言うと、今シーズンのほとんどで話してきたように、僕はただドライビングに集中している。この週末は僕にとってもチームにとっても特別なレースだし、母国グランプリは一年の中で一番好きなレースだから、全神経を集中して勝利を狙いたい。去年はここでポールポジションを取って、レースの最初の3分の1をリードしていた。今年は気温も僕たちにとってやや有利になりそうだ。去年ほど良い条件ではないけど、少なくとも先週のオーストリアよりは良い。明らかに、あそこで僕たちは苦しんだからね。とにかくこの週末を楽しみにしている。

Q:パフォーマンスには期待しています。ただ、契約に話を戻させていただくと、これだけ話が長引くと、チームの忠誠心に疑問を持ったりなさいますか?

ラッセル: 公になっていないけど、裏ではたくさんの会話をしているし、彼らがどこに忠誠を置いているかは分かっている。公表する必要もないし、世間に伝える必要もない。確かに今週は、いろいろなニュース記事や憶測が出たことで会話が増えたけど、僕の立場からすると、それによって変わることは特にない。前にも言った通り、自分が今これまでで一番良いパフォーマンスをしていると感じているし、それがすべてを物語っている。それだけだ。

Q:他チームと話をされていますか?

ラッセル: いや、してない。

記者からの質疑応答

Q:ジョージ選手、これがF1でのベストシーズンだと感じておられますか? その一方で噂の渦中にあることについて、不公平だと思うことはございますか?

ジョージ・ラッセル: それは周りが判断することだと思う。僕自身はけっこう図太い方だし、ニュースも噂もほとんど読まない。ただ事実に集中して運転している。今年の初めにも言ったけど、契約があってもパフォーマンスがなければシートを失うし、パフォーマンスを出せば自然と状況は整う。だから、僕としてはこれ以上言うことはあまりないし、これまで通りドライビングに集中するだけだ。

Q:他チームと契約について話されるご予定はありますか? また、そうした動きがあった方がよいとお考えですか?

ラッセル: すべてのチームには2つのシートがあるし、各チームが将来の可能性を探っているのは当然のことだと思う。それを個人的に受け止めたりはしていない。僕は最初から誰とでもチームメイトになる準備があると言ってきた。もちろんいろいろな会話や噂があるし、それが僕に向けられているのも理解している。でも僕自身の立場は変わらない。これからもメルセデスと一緒にやっていきたい。トトは僕を裏切ったことは一度もないし、いつも約束を守ってくれている。ただ、彼はチーム全体のことを考えなければならない。それは僕だけじゃなくて、メルセデスで働く何千人もの人々のためでもある。だから僕にとっては心配することではないし、チームメイトが誰になるかも気にしていない。ただドライビングに集中するだけだ。

Q:FIA会長選で新たな候補者が出てくる可能性があるようですが、GPDAの代表として、ビン・スライエム会長との争いが起きることについて、どうお考えでしょうか?

ラッセル: 競争があるというのは、人生において常に良いことだと思う。人のベストを引き出してくれるからね。過去には我々もその点について声を上げてきたことがあるけど、最近は状況が改善してきていると感じている。それはこのスポーツに関わるすべての人にとって良いニュースだと思う。最終的には、1つのポジションをめぐって2人が争うなら、ベストを尽くすしかない。ドライバー契約と似たようなものだ。

Q:契約の話に戻って恐縮ですが、メルセデスはご自身にとってチャンピオン獲得のために最適なチームだとお感じですか?

ラッセル: そう思っている。来年に向けては不確定要素が多すぎる。クルマのことも、エンジンや燃料のことも、すべてが未知数だ。その中で、両者にとってベストな選択は、今の体制を継続することだと思っている。僕たちはサーキットで高いレベルでパフォーマンスを発揮できているし、僕自身も良い状態だ。来年でメルセデスに加入して5年目になるけど、マクラーレンのランドや、フェラーリのシャルルのように、長くチームにいるドライバーにとっては、レギュレーションが大きく変わる局面では一貫性が最大の武器になる。

Q:シルバーストンはF1にとって特別な場所ですが、ご自身にとってこのサーキットはどれほど重要で、最初の思い出は何でしょうか?

ラッセル: すごく鮮明に覚えているのが、2009年のグランプリのスタートだ。当時はコプスコーナーの外側、ターン1のあたりに座っていた。あのときの音とスピードが本当に鳥肌もので、衝撃的だった。当時はカデットクラスでカートをやっていたけど、あの瞬間に「いつかここに立ちたい」と思った。その後、ここで初レースをして、初勝利もあって、F1マシンでの初テストもこのサーキットだった。思い出がたくさんある。

角田裕毅 F1 イギリスグランプリ

Q:角田選手にお伺いします。レッドブルはドライバーに対してプレッシャーをかけるチームでもあると思いますが、今シーズンここまでRB21に8戦ほど乗ってこられて、その適応には1シーズンくらいかかるものなのでしょうか?あるいはマックス選手以外のドライバーには時間が必要だとお感じですか?

角田裕毅: そうですね、ドライバーにもよると思いますけど、同時に、これまで誰もこのマシンにすぐ慣れたという感じは見たことがないです。なので、それが現実なんだと思います。

ただ、ショートランに関しては少しずついい方向に行っている感触はあります。オーストリアではQ1を通過できませんでしたけど、ギャップ自体はかなり僅差でしたし、マックス選手との比較で言えば、今後投入される予定のアップデートもあります。フルパッケージが揃えば、求められているレベルには届く自信はあります。そこを目指して努力しています。

ロングランについては、まだ課題が多いですけど、改善の糸口は見つかってきています。これまで試したことのないドライビングスタイルもいくつか見つけていて、それをこれから試すつもりです。

あとは、コンディションが毎回変わる中で、VCARBにいたときのように最初の1周から全開で行けるほど自信を持てる状態ではないというのもあります。でもレッドブルでは、まず自分の中でビルドアップしていくのが正しいアプローチだと思っていて、間違っているとは思っていません。ただ、少し時間がかかるだけかなと思っています。1シーズンかかるかどうかは分かりませんけど、少なくとも良い方向に進んでいるのは確かです。

Q:ルクレール選手に伺います。今後投入される予定のアップグレードで、マクラーレンとのギャップは縮まるとお考えですか?

シャルル・ルクレール: そう思ってなかったら不安になる。僕たちはそのギャップを縮めるためにすべての努力をしているし、今後投入予定のアップグレードでも、今の弱点に対処できるはずだ。それで差はある程度縮まると思う。

ただ、完全にギャップを埋められるかというと、それは違うと思う。今の彼らの優位はかなり大きいし、それは1つのパーツや1回のアップデートだけでどうにかなるレベルじゃない。いくつもの要素が積み重なって、今の速さがあるからね。

でも少しずつギャップが縮まれば、彼らにプレッシャーをかけることができる。今のマクラーレンは余裕を持ってレースをしているから、僕たちがもう少し近づければ、ミスを引き出せるかもしれない。そういう戦い方ができるといいなと思ってる。

Q:角田選手にお伺いします。ドクター・マルコはこれまで何度か、今季中に他のドライバーと交代させるつもりはないとおっしゃっていました。そのような言葉を受けて、今季のシートが確保されているという安心感はございますか?

角田裕毅: はい、もちろん「2戦以内に交代する」と言われるよりは、安心感があります(笑)。でも、そう言ってもらえているとはいえ、やっぱり毎戦で結果を出さなきゃいけないのは変わりません。

オーストリアのレースについては、ヘルムートさんはもちろん満足していなかったですけど、それでも引き続きサポートしてくれています。自分のスピードや才能を信じてくれているので、あとは自分がそれをコース上で証明しないといけません。

彼は昔からずっと率直な方で、良かったレースは褒めてくれるし、悪かったときは何がダメだったかハッキリ言ってくれます。そのプレッシャーが逆に自分の能力を引き出してくれることもあって、それはジュニア時代から変わっていません。今はそのサポートに感謝しています。

Q:角田選手にもう一つお伺いします。ザク・ブラウンさんが「マックス選手がいなければレッドブルはレーシングブルズよりも下」と発言されました。これについてどのように感じられましたか?

角田裕毅: たしかに、それは事実かもしれないです。でも、どういう意図でそう言ったのかはちょっと分からないです。

現時点の自分のパフォーマンスだけを見れば、たしかにそう言われても仕方ないかもしれません。ただ、自分はレッドブルのプレシーズンテストには出ていないので、正直まだ100%全体像を把握しているわけではないです。

VCARBに関しては、シーズン序盤からかなりいいパフォーマンスを見せています。オーストラリアでは運が悪かったですけど、ちゃんと戦略が決まっていれば、中国も含めてもっとポイントを獲れていたはずです。そこは良かったと思っています。

でも今は完全にレッドブルに集中していますし、このクルマはちゃんと機能すれば強いです。大事なのは、もっと理解を深めて、エンジニアとしっかり連携して、自分のドライビングをさらに合わせ込んでいくことです。そのために努力していますし、もっと引き出せると思っています。

Q:最後に3人のドライバー全員にお伺いします。今年は現行レギュレーションの最終年ということで、上位4チーム間の競争がより接近することを期待されていた方も多かったと思います。ですが実際には、皆さんのチームはマクラーレンに後れを取っている印象です。なぜこのような差が生まれてしまったとお考えでしょうか?

ジョージ・ラッセル: もしその理由が分かっていたら、僕たちは遅れていなかったと思う。正直なところ、明確な理由は分かっていない。彼らはタイヤの扱いがすごく上手いし、高温のレースでも速い。アップデートが期待通りに機能しているんだと思う。

一度、開発の正しい方向性を掴めれば、得られるリターンは非常に大きい。マクラーレンはその完璧なラインに乗ったんだろうね。

でも今のマシンやレギュレーションは簡単じゃない。来年の変更もあるけど、あれも簡単ではないと思う。ただ、クルマはもっと普通の構造に近くなるかもしれない。その代わり、パワーユニットやバッテリーの問題が加わってくる。それはまた別のチャレンジになる。

シャルル・ルクレール: ジョージの言ったことにはすごく同意する。マクラーレンが今年ここまで大きく前進するとは、たぶん多くの人が予想してなかったと思う。というのも、レギュレーション最終年って、通常はみんなのパフォーマンスが収束してくるからね。

でも今年は、彼らだけが大きなステップを踏んできた。たぶん何か一つの要素で速くなったわけじゃなくて、いろいろな要素を他のチームよりうまく組み合わせているんだと思う。

特に暑いコンディションでの改善が著しい。今年のバーレーンのFP3だったと思うけど、あの暑さの中でオスカーが出したラップタイムには本当に驚かされた。言葉を失うような速さだったし、なぜあのタイムが出せたのか理解できなかった。

つまり、彼らは何かを見つけたんだと思う。特に暑さの中で、タイヤの使い方も含めて、僕たちがまだ理解しきれていない何かをね。

角田裕毅: 自分は去年レッドブルで走っていなかったので、正直なところ、比較するのは難しいです。

Q:ジョージ選手にお伺いします。来年について、いつまでに結論が出る必要があるとお考えでしょうか? トト・ヴォルフさんとはその件で話し合っておられますか?

ジョージ・ラッセル: 正直に言うと、具体的な期限があるわけじゃない。もちろん自然な流れとしては、サマーブレイク前には決まっていたいとは思っているけど、僕はメルセデスにマネジメントされている立場なので、自分の手で進められる話ではない。

だから今のところは特に何も考えていないし、もちろんこうして毎回聞かれるけど、話せば話すほど進展がなくなる気もする。タイミングが来たら決まるだろうし、おそらく数週間以内には何かしら起きるとは思うけど、今は様子を見ている段階だ。

Q:ジョージ選手にもう一つお伺いします。仮に来年メルセデスとの契約がまとまらなかった場合、F1で自身の目標や地位に見合う代替プランについては、どの程度の自信をお持ちでしょうか?

ラッセル: かなり自信がある。これまでの自分のパフォーマンスを見れば、それだけで十分だと思っている。あまり多くを語る必要はないね。

過去に他チームから接触があったときも、「僕はメルセデスに忠誠を誓っている。未来もそこにある」と伝えてきた。実際、マネジメントもメルセデスだから、まずはメルセデスを通して話す必要があるし、それが前提だ。

ただ関心がなかったわけじゃない。でも僕は常にメルセデスに集中してきたし、今もそう。最終的にはすべてうまくいくと信じている。そして来年僕がメルセデスにいない可能性は、極めて低いと思っている。

Q:ルクレール選手にお伺いします。2026年マシンをシミュレーターで走らせた際の印象について、あまり好感を持たれなかったとおっしゃっていましたが、現在のレースと並行してそのような準備を進めることの難しさについてどうお感じでしょうか?

シャルル・ルクレール: 並行して走っていても、あまり混乱するようなことはない。それくらいまったく違うクルマだからね。

で、あのとき僕が言ったコメントを少し補足しておきたいんだけど、あれは別に僕たちのチームだけに当てはまる話じゃない。他のチームがどうこうという話ではなく、あくまでレギュレーションそのものが、僕らドライバーにとって少し魅力に欠けるという意味だった。

でも、だからと言ってモチベーションが下がっているわけじゃない。むしろ、新しいレギュレーションでいかに速くするかというチャレンジにはやる気を感じている。もしその中で競争力があれば、きっと好きになれるだろうし、逆にそうでなければ、嫌いになるかもしれない(笑)。でも、そうならないことを願っている。

Q:ルクレール選手にもう一つお伺いします。鈴鹿のあと、フレデリック・バスール代表が「この選手権は予選で決まる可能性がある」とおっしゃっていました。実際、今季は日曜の優勝者のうち8回がポールポジションスタートでした。ここまでの流れについて、どうお考えでしょうか?

ルクレール: たしかに、そう思う部分もある。残念ながら、僕たちは予選で遅いから余計にそう感じてしまう。

でも、それがそう見えるのは、マクラーレンが今年ほとんどのレースでポールを取っていて、彼らが圧倒的に速いからだとも思う。予選で一番速いクルマがそのままレースでも勝つ――それは当然の流れでもあるよね。

数字を見れば、たしかにその傾向はある。だからフレッドの言うことにも一理あるとは思う。僕たちとしては、まずは予選を改善しないと、勝利争いに絡むのは難しい。それを何とかしなければならない。

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カテゴリー: F1 / F1イギリスGP / F1ドライバー