F1元スチュワードのティム・メイヤーがFIA会長選の公約の第一弾を発表

彼は、公約の冒頭で「我々の使命は、現FIA指導部に代わる説得力ある選択肢を加盟クラブに提供することだ」と述べ、FIAの倫理的かつ効果的な運営を強調した。
今回発表された内容はFIA全体のガバナンス体制に焦点を当てたもので、「ガバナンス」ではなく「インパクト(影響力)」に言葉を置き換えるという演出も含まれている。プレゼン資料では「FIAのガバナンスは国際評価で継続的に低下中」と主張し、2028年までに「世界のスポーツ統治機関の上位20%」にFIAを押し上げると宣言している。
「支配型」から「サービス型」への転換を宣言
メイヤーの改革案は、「支配型カルチャーからサービス型カルチャーへの転換」を掲げ、いくつかの段階的マイルストーンを提示している。
■ 初日(Day 1):「会長の過剰な権限を撤廃」
執行委員会や監査委員会に対する会長の即時解任権の削除を含む。
■ 100日以内:「会長の執行権限を再構築」
会長はFIAの象徴的な存在とし、実務執行から距離を置く。また、各加盟クラブの成長を支援する「助成金サポート部門」や、財務監査の独立委員会を設置。「真実と和解の仕組み」を創設し、過去の内部的な圧力・倫理違反などを外部の第三者の手で調査できる体制を整えるという。
この「真実と和解」の枠組みは「報復ではなく癒やし」を目的とし、「外部支援を伴うプロセス」として提案されている。
F1依存の脱却と財政改革も目指す
1年目の目標としては、FIAの経費の効率化、収益の一定割合を加盟クラブへの投資に振り向けること、そして特定カテゴリー(暗にF1)への過度な依存を減らす収益多様化戦略を掲げた。ただし、FIAは商業部門と統治部門を明確に分離する義務があるため、ここは制度上も慎重な対応が求められる部分だ。
実際、現体制が世界ラリークロス選手権の商業権を取得すると発表した際には、競争法上の問題が浮上していた。
選挙制度改革にも踏み込む
2〜4年目にかけては、加盟クラブの拡大や成長支援に注力しつつ、ジャン・トッドおよびビン・スライエム体制下で導入された「現職優遇」の制度の見直しにも言及。特に、選挙直前のルール改変を抑制するため、「あらゆる規約変更は120日前に公表され、加盟クラブによる議論と理解の機会を確保すべき」としている。
この提案は、6月の総会で選挙規定が一部改正された際に、オーストリア自動車クラブなどから「議論不十分」との批判が出たことを受けたものだ。
副会長リストとスポーツ・モビリティ政策は未公表
メイヤーは、「提案内容へのフィードバックを加盟クラブから募る」というオープンソース型の戦略形成を強調しているが、まだ重要な構成要素が欠けている。それが、スポーツおよびモビリティ分野に関する具体策と、副会長候補のリストだ。
関係者によれば、副会長チームはすでに内定しているが、反対勢力による牽制や妨害を避けるため、現時点では匿名とされている。これは、2013年にデビッド・ワードがジャン・トッドへの対立候補を断念した背景として、北米のモータースポーツクラブ12団体のうち11団体がすでにトッド支持を表明していたことが教訓となっているという。
今後、加盟クラブが支持候補を決めるにあたっては、倫理やガバナンスの理念も重要ではあるが、より実利的な「我々に何をしてくれるのか」が判断材料となる。したがって、メイヤーが提示するモビリティおよびスポーツ政策の中身こそが、今後の勝敗を左右する決定的要素となるだろう。
カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟)