F1イギリスGP WINNERS & LOSERS:角田裕毅のレッドブルは敗者選出
ランド・ノリスが母国グランプリで優勝し、ニコ・ヒュルケンベルグが239戦目にしてついに表彰台に立った一方で、ほかにもシルバーストンで印象を残した人物たちがいた。

ライバルたちがこれほど温かくヒュルケンベルグの初表彰台を祝福したのは、彼の才能の高さを物語っている。15年の努力が実を結んだ瞬間だった。だが、彼が難しいコンディションを見事に乗りこなす一方で、ほかのドライバーたちは苦戦を強いられた。ローレンス・バレットが、F1イギリスGPの勝者と敗者を選出した。

勝者:ニコ・ヒュルケンベルグ
239戦目にして、ついにニコ・ヒュルケンベルグがその才能にふさわしい表彰台を勝ち取った。

しかも19番手スタートという状況からの快挙だった。今季8回目のQ1敗退を喫していたが、ウェットとドライが入り混じる難しいコンディションの中で、その経験が光った。

37歳のドイツ人ドライバーは、2012年の日本GPで小林可夢偉が3位に入って以来となる、ザウバーにとっての表彰台をもたらした。また、1973年スペインGPでジョージ・フォルマー(当時39歳)が初表彰台を獲得して以来、最年長の初表彰台獲得者となった。

表彰台圏内で走ったことはこれまで177周にのぼるが、それをついに実らせた。これでドライバーズランキングは9位に浮上し、チームはコンストラクターズランキング6位へと順位を上げた。見事だった。

イギリスGP F1 ニコ・ヒュルケンベルグニコ・ヒュルケンベルグはF1イギリスGPでキャリア初の表彰台を獲得

敗者:レーシングブルズ
金曜のプラクティスでは速さを見せていたレーシングブルズだが、ウェットコンディションは最悪の敵だった。今季初のダブルリタイアに終わり、無得点でシルバーストンを後にした。

リアム・ローソンは、F1のキャリアにおいて初めて決勝のオープニングラップでリタイア。エステバン・オコンとの接触が原因だった。その後、チームメイトのアイザック・ハジャーは、雨による視界不良の中でキミ・アントネッリの後方に追突。激しくクラッシュしたが、幸い無事だった。

勝者:ランド・ノリス
ランド・ノリスは週末前に「1戦だけ勝てるなら母国GPがいい」と語っていたが、2025年にそれを実現するのは簡単ではなかった。チームメイトのオスカー・ピアストリが序盤を支配していたからだ。

だが、ピアストリがリスタート直前の「急なブレーキ」で10秒ペナルティを受けると、ノリスがトップに浮上。そのまま一度も首位を譲ることはなかった。

ノリスは、F1イギリスGPを制した13人目のイギリス人ドライバーとなり、自身初の連勝を達成。これでドライバーズランキングでは首位のピアストリとの差をわずか8ポイントに縮めた。

イギリスGP F1 ランド・ノリスノリスの母国優勝により、ドライバーズ選手権でチームメイトとの差はわずか8ポイントに

敗者:オスカー・ピアストリ
冷静沈着で知られるオスカー・ピアストリだが、シルバーストンではその仮面がはがれた。セーフティカー先導中のブレーキング違反で10秒ペナルティを受け、無線ではフラストレーションを露わにしていた。

本来なら、あの走りで優勝してもおかしくなかった。状況が目まぐるしく変わる中で安定した走りを披露していたからだ。そのぶん、納得がいかなかったのも無理はない。

これで2週連続でチャンピオンシップのリードを削られたが、週末を通してパフォーマンスを取り戻した点は自信につながるはずだ。

勝者:ピエール・ガスリー
今季厳しいシーズンを送っているアルピーヌだが、母国レースでピエール・ガスリーが笑顔をもたらした。

今季7度目のQ3進出を果たし、スタート位置はP8。これはチームにとって今季2番目に高いグリッドだった。

決勝では、フェルナンド・アロンソ、ルイス・ハミルトン、マックス・フェルスタッペンらと激しいバトルを展開し、6位でフィニッシュ。

これはチームにとって今季最高の順位であり、今季3回目のポイント獲得となった。まだコンストラクターズランキング最下位だが、1つ上のハースとの差は10ポイント以内に縮まった。

イギリスGP F1 ピエール・ガスリーガスリーはシルバーストンで印象的な6位フィニッシュを記録

敗者:レッドブル
マックス・フェルスタッペンは、アンダーステアを抑えたローダウンフォースのセットアップで今季4回目のポールポジションを獲得。

だが、日曜に雨が降ると、そのセットアップが裏目に出た。リスタート時には珍しくスピン。そこから追い上げたものの、最終的には5位止まりだった。

チームメイトの角田裕毅はさらに厳しいレースに。2戦連続で最下位完走となった。

マクラーレンと比べてインターミディエイトタイヤの摩耗が激しく、レッドブルは直近2戦で合計10ポイントしか獲得できていない。

勝者:ランス・ストロール
ランス・ストロールとアストンマーティンは、スリックタイヤへの切り替えタイミングで見事な判断を下し、レース序盤には久々に表彰台圏内を走行。

その後、タイヤマネジメントの差でポジションを落としたものの、最終的に7位でフィニッシュ。これは開幕戦オーストラリア以来の自己最高リザルトだった。

チームメイトのフェルナンド・アロンソも9位に入り、今季初めて2台揃ってポイントを獲得した。

敗者:メルセデス
メルセデスは戦略面で失敗。ジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリは早めにスリックタイヤへ切り替える賭けに出たが、これが裏目に出て後方に沈んだ。

10周目に雨が再び降ったため、インターに戻す必要があり、完全にレースから取り残される形となった。

さらにアントネッリはハジャーとの接触でマシンにダメージを負い、これが今季6戦中4回目のリタイアとなった。

ラッセルは一時トップ10まで挽回したが、その後スピンし、最終的には10位で1ポイントのみ。メルセデスがシルバーストンで表彰台を逃すのは2012年以来初めてだった。

勝者:ルイス・ハミルトン
ルイス・ハミルトンは、2戦連続で予選フロントロウを逃したが、それでもフェラーリのチームメイト、シャルル・ルクレールに対しては4戦中3回目の予選勝利を収めた。

決勝ではマクラーレン勢には届かず、ヒュルケンベルグとの表彰台争いにも敗れたが、それでもP4は今季の自己ベスト。2戦連続での最高順位更新となり、調子を上げてきている。

イギリスGP F1 ルイス・ハミルトンハミルトンはF1イギリスGPで4位に入り、表彰台には一歩届かず

敗者:シャルル・ルクレール
ルクレールはフォーメーションラップでスリックタイヤに賭け、P6スタートを捨てて最後尾からの追い上げを選んだが、これは裏目に出た。

ドライで機能するよう極端なセットアップを施していたため、ミックスコンディションではペースが上がらず、トップ10入りも果たせなかった。

今年初めて、完走しながら無得点となり、今季2度目のノーポイント(1度目は中国GPで失格)となった。

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カテゴリー: F1 / F1イギリスGP