F1スペインGPで導入されるフロントウイング技術指令の全容を解説
今週末のF1スペインGPから、FIA(国際自動車連盟)はフロントウイングに対する負荷試験を強化する。この変更はなぜ行われるのか?なぜ今なのか?そして具体的にどのように実施されるのか?F1公式サイトがその詳細を伝えている。

今回の規制強化は、空力性能をめぐるチーム間の競争が激しさを増すなかで導入される。

特に、フロントウイングの柔軟性を利用して直線での空気抵抗を抑えたり、速度域によってダウンフォースの特性を変えるといった“グレーゾーン”の開発が問題視されており、FIAはこれを明確に取り締まる姿勢を示している。

スペインで何が変わるのか?
FIA(国際自動車連盟)は、F1マシンのフロントウイングに対する負荷試験をさらに強化し、フレキシビリティ(柔軟性)とそこから得られる空力的優位性への懸念に対応しようとしている。

2024年シーズンを通じて、いくつかのチームが高速域での空気抵抗を軽減したり、速度域に応じて空力バランスを変化させる設計を追求しているのではないかという疑念が持たれていた。

そのため、FIAは2025年シーズンの第9戦にあたるスペインGPから、「フロントウイング、リアウイング上段、ビームウイングに対して新たな、あるいはより厳格な負荷変形試験を導入する」と発表していた。

スペインGPスペインGP週末はフロントウイングに注目が集まる

FIAのシングルシーター部門責任者であるニコラス・トンバジスは「選手権争いが激化すると、チームは互いのマシンに強い関心を持つようになり、自然と懸念が高まる。2024年後半の段階で、我々は2025年のテストをさらに厳格にする必要があると結論づけた」と説明した。

なぜ今、変更されるのか?
では、なぜこの技術指示がシーズン開幕時ではなく、今になって導入されるのか?

トンバジスは次のように説明する。

「2024年のベルギーGP以降、数戦にわたってすべてのマシンのフロントウイングにカメラを設置し、動きを監視した。その結果として、テスト強化が必要だと判断した。ただしその結論が出たのがかなり年末に近かったため、シーズン開幕時にこれを導入すれば、すでに製作されたウイングが無効となり、コスト負担も大きくなると考えた」

「したがって、導入を延期する方が理にかなっていると判断した」

FIA 国際自動車連盟FIAによるフロントウイング負荷試験の様子

リアウイングでも同様の措置がすでに実施されていた?
実際にリアウイングではすでに規制強化が行われている。

2025年テクニカルレギュレーション第3.15.17条では、「リアウイング主翼の端部に垂直方向に75kgの荷重を加えた際、主翼とフラップの間隔(スロットギャップ)が2mm以上変化してはならない」と規定されていた。

これを確認するために、開幕戦オーストラリアGPのフリー走行時に車両へカメラを取り付けて検証した結果、FIAはこの規制でも不十分だと判断。第4戦中国GPからは許容変化量を0.75mmに、第5戦日本GPではさらに0.5mmにまで縮小した。

トンバジスは「2025年のレギュレーションは、昨年秋に話題となったいわゆる“ミニDRS効果”を抑制することを目的としていた。だが、実際に運用してみると不十分だったことが明らかになった」と語る。

自動車競技FIAは今季すでにリアウイングの規制を強化している

新たなフロントウイング試験はどう実施されるのか?
今回の強化により、2025年テクニカルレギュレーションの第3.15.4条(フロントウイング本体の柔軟性)および第3.15.5条(フロントウイングフラップの柔軟性)が改訂される。

第3.15.4条では、これまで「両側に100kgの荷重をかけた場合、垂直方向の変形量は15mm以下」「片側だけにかけた場合は20mm以下」とされていたが、スペインGP以降はそれぞれ「10mm以下」「15mm以下」となる。

また第3.15.5条では、従来は「フロントウイングフラップのトレーリングエッジ(後端)は、6kgの荷重をかけた際、軸方向で5mm以上たわんではならない」とされていたが、今週末からはこの許容変位が3mmに縮小される。

スペイングランプリFIAによるリアウイングの負荷試験の一例

テストはどのくらいの頻度で実施されるのか?
FIAは「シーズンを通して定期的に」コンポーネントテストを実施し、規則違反がないかを確認する。

トンバジスは「我々はシーズン中のさまざまなタイミングでチームに特定のコンポーネントの持ち込みを求め、個別にあるいは車両全体に対してテストを行う」と述べる。

「テストはしばしばパルクフェルメの条件下で、土曜の予選後や日曜の朝に実施される。これは、チームがテスト用に硬いウイングを装着し、レースでは別の柔らかいウイングを使うといった抜け道を防ぐためだ」

「また、必要に応じて決勝後にも検査を行うことがあり、その場合もレギュレーション第3.15条に定められた静的荷重試験となる」

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カテゴリー: F1 / F1スペインGP / FIA(国際自動車連盟)