ダニエル・リカルドのF1低迷をクルサード考察「速さではなく必要性を失った」
元F1ドライバーのデビッド・クルサードは、ダニエル・リカルドのキャリアが失速したのは、レッドブル離脱後に「成功への欲求」を失ったためだと考えている。

リカルドはレッドブル時代に7勝を挙げ、卓越したオーバーテイクスキルと明るいキャラクターで大きな人気を得たが、2018年末に同チームを去ってからは、107戦でわずか1勝と2度の表彰台にとどまり、その成績低下は近年のF1で最大の謎のひとつとされてきた。

レッドブルのアンバサダーとしてリカルドのキャリアを追ってきたクルサードは、ポッドキャスト『High Performance』で次のように語った。

「人生が進むにつれて人は進化していく。うまく進化できるドライバーもいれば、成功によって影響を受け、その後の軌道を狂わせる者もいる」

「ダニエル・リカルドはその一例だ。F1に登場した若き有望株のひとりで、同世代でも屈指のオーバーテイカーだったし、見ていて本当にワクワクする存在だった」

「レッドブルを離れてから、ルノーは“まあまあ”だった。マクラーレンではランド(・ノリス)に2年連続で負けたし、レースに勝ったとはいえ、それ以外の部分では上手くいかなかった」

「アルファタウリでも結局は結果が出なかった。そして今は、恐らく裕福な身となって、満足して引退した状態だと思う。全体的に見て、彼のキャリアはあまりに短い期間に凝縮されすぎていたように感じる」

リカルドが後年に苦戦した理由について問われると、クルサードは次のような哲学的な視点を示した。

「人生において、人は時間とともに“荷物”を背負っていく。貧しい者なら、それはテスコの袋に少しばかりの服が入っているようなもの。裕福な者なら、それはルイ・ヴィトンのバッグかもしれない」

「どんなバッグであれ、それを運ばなければならない点では同じ。富や成功の“荷物”であれ、貧困や困難の“荷物”であれ、それを背負って次のチャンスに向かう必要がある」

「だが中には、そういったものを手放せず、自分が最も自由で、最高のパフォーマンスを見せていた頃の状態に戻れない者もいる」

「我々は進化するにつれ、次の人生のフェーズに移っていく。そこでは、もはや“必要性”や“渇望”が失われてしまうのだ」

「マーティン・ブランドルが言っていた。“スピードを失うんじゃない、必要性を失うんだ”ってね。これはボクシングにも似ている」

「どんなボクサーでも、どこかのタイミングで倒された経験があるだろう。若いうちは起き上がって、どこが痛いか確認する間もなく戦おうとする。でも年を取って、成功して、裕福になると、倒れたときにこう思うんだ。『いまカウント何秒だった? 5か6か? ……もう少しこのままでいいか』と。そして立ち上がれない」

「パンチを受ける“必要性”を失ってしまうんだ」

ダニエル・リカルド F1

リカルドのキャリアを振り返る
リカルドは2010年代前半のF1界で最も有望なタレントのひとりとされ、V6ハイブリッド時代の幕開けと共にレッドブルへ昇格すると、4度の世界王者セバスチャン・ベッテルを上回る活躍を見せた。

その後、レッドブルの次なる天才マックス・フェルスタッペンとも好勝負を繰り広げ、年間ランキングでフェルスタッペンを上回った唯一のチームメイトとなった。

だが2018年末、レッドブルを離れて競争力に劣るルノーへ移籍。この決断は高額契約に裏打ちされたものだったが、ルノーでは2年で表彰台2回にとどまり、2021年からは再建中のマクラーレンへ転籍した。

2021年ベルギーGPではチームに9年ぶりの優勝をもたらしたが、それは例外的な結果にすぎず、全体的には不振が続いた。そして2022年末にF1から姿を消した。

2023年末にはレッドブルの支援でアルファタウリ(現レーシングブルズ)から復帰を果たしたが、2024年のシンガポールGPを最後に解雇され、F1キャリアに終止符が打たれた。

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カテゴリー: F1 / ダニエル・リカルド / デビッド・クルサード