レッドブルF1とマクラーレンが非公開協議 ランビアーゼ移籍騒動の内幕

発端となったのは、マクラーレンがランビアーゼを「チーフ・レーシング・オフィサー」として迎えることを発表した後、マイアミGPでローラン・メキースが「彼は向こうでチーム代表になる」と語ったことだった。
これに対し、マクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンは「彼は私の知らないことを知っているらしい」と受け流し、現在のチーム代表アンドレア・ステラへの支持を改めて強調した。
移籍時期と役職を巡る両チームの温度差
ランビアーゼの移籍が4月初旬に発表された際、レッドブルは「現在の契約が満了する2028年に退団する」と説明した。一方、マクラーレンは「遅くとも2028年までに」と表現し、一般的な人材移籍と同じように、何らかの妥協によってより早い加入が可能になるという期待をにじませていた。
この発表はオランダメディアへのリーク後に行われたもので、当初は両チームが協力して公式発表を整え、F1の4月中断期間が終わる前にそれぞれメディア対応も行っていた。その段階では、両者の間に目立った対立はなかった。
しかしマイアミGPでメキースがスカイスポーツF1に対し、ランビアーゼがマクラーレンでチーム代表になると発言したことで、マクラーレン側は驚かされることになった。
マクラーレンが否定したステラ退任説
マクラーレンとステラは、この見方を明確に否定している。ステラはブラウンと同じく長期契約を結んでおり、昨年チームを両選手権制覇へ導く上で中心的な役割を果たした人物で、チームを離れる意向はないとされている。
マクラーレン側の立場は、ランビアーゼの「チーフ・レーシング・オフィサー」という役職は変わらないというものだ。ランビアーゼは、現在ステラがチーム代表職と兼任している業務の一部を引き継ぐ予定であり、ステラ自身もその兼務を長期的に続けるのは持続可能ではないと考えている。
マイアミで行われた“空気を清める”話し合い
レッドブル側にとって、ランビアーゼの退団はここ数年続く「人材流出」の文脈に組み込まれやすいニュースだった。クリスチャン・ホーナー、ヘルムート・マルコ、エイドリアン・ニューウェイ、ロブ・マーシャル、ウィル・コートニーらの離脱に続く動きと見られたからだ。
一方、マクラーレンの発表文では、近年レッドブルから加入したロブ・マーシャルとウィル・コートニーにも触れており、それがメキースにとって「事実関係を正したい」という思いにつながった可能性がある。
その結果、マイアミGPの日曜日にブラウン、メキース、レッドブル親会社側のオリバー・ミンツラフがこの件について話し合った。双方は現在、問題は整理されたと受け止めており、ブラウンと前任のホーナー時代に見られたような敵対的な関係に戻るのではなく、敬意あるライバル関係を望んでいる。
「我々の誰も、この件で言い合いをしたかったわけではない。いつものように良い話し合いができたし、我々は前に進む」とメキースは語った。
ステラが語った“毒入りビスケット”
ステラは4月にマクラーレン公式サイトで公開されたインタビューの中で、ランビアーゼを巡る初期の憶測にも触れていた。
「正直なところ、天文学的な給与や神話のような事前契約に関する最近の噂には笑ってしまった」とステラは語った。
「通常なら夏前に始まる“シリーシーズン”が、早く到来したように見える」
「私はこういうことにはかなり慣れているし、笑って受け止めている」
「まるで嫉妬深いパティシエが、マクラーレンの菓子工房で良いデザート作りを台無しにしようとしたようにも見える」
「だが、我々は良い材料と毒入りビスケットを見分ける方法をよく分かっている」
ステラが使う「毒入りビスケットを取らない」という表現は、ライバルからの雑音や揺さぶりに誘惑されないよう、マクラーレン内部に警告する際によく使われるものだ。今回の場合、最初のランビアーゼ移籍リークはマクラーレンやレッドブル・レーシングの直接の内部から出たものではないと見られている。
その含意は、両チームを不安定にし、さらにステラの古巣であるフェラーリまで巻き込む意図があった可能性だ。ステラは2015年にマクラーレンへ加入する前、フェラーリで長年働いており、同チームの論理的な獲得候補として名前が挙がってきた。
ランビアーゼ退団が示すレッドブルの世代交代
ランビアーゼがマクラーレンでどの役職に就くとレッドブルが考えているにせよ、その退団がチームにとって具体的な損失であることは変わらない。フェルスタッペンのレースエンジニアであり、チーム内でより広い職務も担ってきた人物の離脱は、レッドブルにとって小さな変化ではない。
メキースも「我々が何人かの才能を失ったという事実について、防御的になるつもりはない。それは事実であり、3年か4年にわたって存在してきた」と認めている。
ただし、メキースとミンツラフは、レッドブルを新たな方向へ進めようとしている。内部再編と外部からの採用を組み合わせ、チームの次世代体制を築く考えだ。
「ピットレーンで最高の才能を維持し、育成し、引き付けるための環境を作ることは、チームにとって最優先事項だ」とメキースは語った。
「我々にはすでに、各部門ごとに最高の才能がいると感じている。それはパワーユニット側のベン・ホジキンソンと彼のチームから始まり、シャシー側のピエール・ワシェと彼のチームにも当てはまる」
「可能なときには、常に内部昇格の方法を探る。我々はここ数年で多くの才能を生み出してきたし、それを誇りに思っている。今後も続けたい」
「特定のスキルや経験が必要になったときには、ピットレーンにいる親愛なる競争相手のところから獲得しに行く。我々がこれまでそうしてきたように」
「我々はそのように物事を見ている。まず自分たちの才能に最大のチャンスを与える。そして外部から注入する必要があれば、喜んでそうする」
人材流出ではなく“役割の再定義”を巡る攻防
今回の一件は、単なるランビアーゼ移籍話ではなく、レッドブルとマクラーレンがそれぞれ自分たちの物語をどう守るかという攻防でもある。レッドブルにとっては「また有力人材を失った」という印象を薄める必要があり、マクラーレンにとっては「ステラ退任」や「体制変更」という見方を封じる必要があった。
マクラーレンは、ランビアーゼ加入をステラ体制の強化として位置づけている。一方のレッドブルは、ランビアーゼにとって自チームでは得られない大きな機会だったと説明することで、退団を単なる内部崩壊の証拠として見られることを避けようとしている。
マイアミでの話し合いによって表面上の火種は収まったが、ランビアーゼが実際にマクラーレンへ加わる2028年までには、両チームの勢力図も役職の意味も変わっている可能性がある。その意味で、この移籍はまだ終わった話ではなく、レッドブルの新世代体制とマクラーレンの王者体制を測る長期的な材料になっていく。
Source: The Race
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / マクラーレンF1チーム
