F1モナコGPの抜本改修案をGPDA会長が提案「ヌーヴェルシケインを動かせ」

義務付けられた2回のピットストップにもかかわらず、先週末のレースではオーバーテイクはわずか2回しか発生せず、マクラーレンのランド・ノリスを先頭としたトップ4のドライバーはスタート順位のままフィニッシュした。
ヴルツは、自身のトラック設計会社「Wurz Design」(2027年からサウジアラビアGPの開催地となる予定のキディヤ・スピードパークを設計)を通じて、ソーシャルメディアに投稿した動画で、F1で最も象徴的なイベントに必要なダイナミズムを注入し、オーバーテイクの機会を切り開くことを狙った3つの回収案を示した。
ヌーヴェルシケインをより下流へ移動させる
元F1ドライバーであるヴルツの最初のアイデアは、モナコで実質的に唯一オーバーテイクが可能な場所とされるヌーヴェルシケインへの進入を強化することに焦点を当てている。彼の提案は、オーバーテイクの可能性を高めるためにシケインをタバココーナー寄りに移動させるというものだ。
「シケインを後方に動かせば、オーバーテイクを準備したり仕掛けたりする確率が高くなる」とヴルツは説明した。「現在このコーナーは、ディフェンスが非常に容易なんだ。キンクやバンプの影響で守りやすい構造になっているからね。だけど、これを難しくすることができる」
重要なのは、この提案はモナコの限られた空間内でも実行可能であるとヴルツが考えている点だ。鍵となるのは、コースを少し広げ、縁石を調整し、彼がカレンダー上で最も好きだと語るコーナーの性格を維持することにある。
「タバコは私の好きなコーナーだ。本当に難しい。いまだに全開では走れず、少しブレーキを踏む必要がある――その感覚が大事なんだ。その特徴を残しつつタイミングを調整することが必要なんだ」
飛び込みバトルのために再構成されたラスカス
ヴルツが注目するもうひとつのボトルネックはラスカスだ。コーナーの頂点を2~3メートル外側にずらすことで、袋小路のようなこの場所を戦場へと変貌させられると彼は主張する。
「もっと大胆な飛び込みができるようにコーナーが開ける」と彼は説明した。「つまり、前にいるドライバーは守るか、ドアを開けるかの選択を迫られる」
「守ろうとすれば、コーナー出口では大きく減速することになるから、後続に列ができ、全体としてプレッシャーが高まるんだ」
「これはちょっとした工夫に過ぎないけれど、実現は比較的簡単で、もっと激しい戦い、より強いプレッシャー、そしておそらくはオーバーテイクに繋がるんだ」
この調整は全面的な再設計を必要とせず、しかしながらスペースが限られたこの区間でレースを左右する局面を生む起爆剤となりうるとヴルツは考えている。

有名なフェアモント・ヘアピンの拡幅
最後にヴルツが提案するのは、F1で最も遅く、おそらく最も象徴的なコーナーであるフェアモント・ヘアピンに対する控えめながらも重要な変更だ。彼の案は、主に内側の縁石を取り除くことでこのコーナーを約2.4メートル拡幅し、利用可能なアスファルトを最大限に活用するというものである。
「このコーナーのキャラクターを変えることなく、オーバーテイクのための飛び込みを可能にする」と彼は語った。
「このヘアピンは非常にタイトだから、右側のスペースも拡張して、縁石を失くし、物理的な壁までアスファルトで覆う必要がある。そうすれば回頭半径が広がるんだ」
「仮に飛び込みが失敗しても、追加されたアスファルトが救済になる。その結果、守りの動きが増えてフィールド全体に波及効果が生まれる」
この変更はヘアピン自体の改善にとどまらず、その先の改良されたヌーヴェルシケインへと繋がるレース展開をセットアップするポイントにもなるとヴルツは見ている。

モナコの魂を守り、レース性を高める
ヴルツにとって、この提案の目的はモナコのDNAを書き換えることではなく、その伝統を尊重しつつ、現代F1の要求に適応させることにある。
ヌーヴェルシケイン、ラスカス、フェアモント・ヘアピンという3つの重要な箇所に手を入れることで、ヴルツは、モナコGPがその華やかさにふさわしいオン・トラックの戦いを提供できるようになると信じている。
F1およびFIA、さらにはモナコ自動車クラブが彼のビジョンを採用するかどうかは今後次第だが、変革を求める声は日に日に高まりつつあり、経験と実現性に基づいた彼の青写真はその先駆けとなるかもしれない。
カテゴリー: F1 / F1モナコGP / アレックス・ブルツ