F1モナコGPの未来は?「抜けないサーキット」の限界と提案される改革案

2024年の極端にスローでプロセッショナルな展開のあと、今年のモナコGPでは強制的な2ストップ制が導入された。
メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは「むしろ悪化した」と認める。
現世界王者マックス・フェルスタッペンはViaplayに笑いながら語った。
「すごく面白かったよ。本当に楽しめた。とても素晴らしかった」
「来年は3回ピットストップにすれば?いや、4回でも5回でもいい。少なくともチームはピット作業の練習にはなる」
「僕に関しては、4回ピットに入っても4位で終われただろう。僕たちフロント勢にとっては、あまり意味がなかった」
実際、上位陣こそ本当のレースをしていたが、それ以外のグループは列を意図的に減速させていたか、そうした列に詰まっていた。
ジョージ・ラッセルはアレクサンダー・アルボンの“移動式シケイン”を避けるため、港のシケインをショートカットして抜き、30秒のペナルティを受けた。
「どうせポイント圏外だったし、ただモナコを全力でプッシュして楽しみたかった」とラッセルは語った。
「皮肉だけど、25周分の予選ラップを決勝で走って、ペナルティを受けなかった場合より上でフィニッシュできた。つまり、この仕組み自体が破綻しているんだ」
ニコ・ヒュルケンベルグも同意した。
「2ストップ制という試み自体は評価するけど、まったく機能しなかった」
「いろいろ戦略的なことは起きていたけど、それはレースとはまったく別物だった」
カルロス・サインツJr.はDAZNに対して語った。
「このレースとF1というスポーツ全体に本当に腹が立っている」
「15年前なら、レース操作に対してペナルティがあった。でも今では、レース全体が操作されている」「あんなにゆっくり走るのは本当に嫌だった。けど(リアム)ローソンのせいで自分たちは後方スタートだったし、やらざるを得なかった」
2ストップ制が失敗だったという点で一致した今、次はどうするべきか?
フェルスタッペンは冗談交じりに提案する。
「マリオカートみたいにバナナを投げるってのはどう?」
「どうせここではレースできない。1回でも10回でもピットインしても変わらない。今のマシンじゃ、F2カーしか追い抜けないよ」
ポールポジションから優勝したランド・ノリスは、モナコGPの日曜に“ショー”を求める風潮自体に疑問を投げかけた。
「勝つべきレースをした人が勝てばいいんだと思う」「なぜ皆がそんなに期待してるのか分からない。これはエンタメじゃなくて、スポーツだよ」
実はフェルスタッペンはかなり遅くまでピットインせず、赤旗によって“フリーピットストップ”が得られる展開を狙っていた。
「こういうやり方を続ければ、いつかそういう結果が出るかもしれない」とオスカー・ピアストリは語った。
「でも、それって本当に望む光景なのか?」
レッドブルF1代表のクリスチャン・ホーナーは、唯一の解決策はモナコのレイアウト自体を変えることだと主張する。
「トンネル出口や第1コーナーにブレーキングゾーンを作るようなことを検討すべき」「今のマシンは大きすぎて、前のマシンを抜くチャンスがない」
ヴォルフは「あるいは最大ラップタイム制限を導入して、戦略的な減速行為を封じる手もある」と提案した。
日曜に意図的にスローペースをとったアルボンは観客に謝罪し、ホーナーの意見に同意した上で「F1とモナコはレイアウトの変更を検討すべき」と述べた。
マクラーレンF1代表のアンドレア・ステラは「必要なのはもっと小さく軽いマシンだ」と語った。

レーシングブルズのCEOピーター・バイエルは、日曜の“戦略ゲーム”を実行した側のひとりだが、2ストップ制の導入はF1コミッションで真剣に議論された結果だと主張する。
「次に何をすべきかは正直思いつかない」とSky Deutschlandに語り、「もしサーキット自体を変えられないなら、レギュレーションで介入するしかなかった」
「C6やソフトタイヤ限定といった案もあるが、現実としてここでは追い越しは不可能。どんなに速くても、今のマシンじゃ抜けない」
「モナコの週末は、チームやF1にとって非常に重要だ。ファンやパートナー企業も愛してくれている。我々はスポーティング面の改善に取り組む必要がある」
元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは警告する。
「このままでは観客が離れて、GPそのものが終わりを迎える可能性がある」
元F1ドライバーのニック・ハイドフェルドも提案を加える。
「“ジョーカ―ラップ”のような仕組み――レース中に1~2回だけショートカットを使えるような仕掛けを検討してもいいかもしれない」
一方ヴォルフは、「モナコはユニークなままでいい」との立場で、「オーバーテイク至上主義の批判者は、年に1回くらい“レース用メガネ”を外すべきだ」と皮肉った。
そしてヒュルケンベルグはこう締めくくった。
「モナコに来てる人の99%は、ヨットでシャンパンを飲むために来てる。レースの中身なんて気にしてないさ」
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