F1モナコGP:木曜記者会見 Part.2 - フェルスタッペン、アルボン、ボルトレト

一方、ここ数戦で好調のアルボンは「トップチームとの戦いを楽しめている」と手応えを口にし、ボルトレトは「F1マシンで走るモナコは夢だった」と高揚感をあらわにした。また、2026年の新規則に向けた準備や、フェルスタッペンとボルトレトの“兄弟のような関係”にも話題が及び、和やかな一幕も。進化を続けるマシンとシーズンの行方を左右する週末を前に、3人の言葉にはそれぞれの現在地と未来への意志がにじんでいた。
Q:マックス、まずあなたから。モナコというイベントの特別さはどこにあると思いますか?
フェルスタッペン:予選でこのサーキットを攻略するのがとにかく難しい、ということだと思う。その中で限界を引き出す。それに、日曜のレースではオーバーテイクが難しいから、予選がさらに重要になる。ものすごく狭くて、チャレンジングで、路面もバンピーだしね。そしてもちろん、モナコという場所の歴史も特別。このレースは、誰もが勝ちたいと思う一戦なんだ。ここでレースできること自体が本当に特別だし、正直、ちょっと狂ってる。でも表彰台の一番上に立ったとき、「最高の週末だった」と思えるよ。「やったぞ!」って感じになる。
Q:イモラでは素晴らしい週末でした。マシンの進化も感じられますが、モナコで3勝目は狙えそうですか?
フェルスタッペン:うーん、マイアミとイモラの平均を取ると、そこまで良くは見えないね。だから冷静でいないと。イモラはすごく良かったけど、「週末全体」で見ると、金曜日はひどかった。マシンについてもっと理解を深める必要があるし、セッティングでもう少し詰めたい。ここは全然違うサーキットだし、今シーズンを見ても、僕たちが本当に競争力を発揮できているのは高速コーナーが中心の場所だけ。モナコはその逆だから、今週末はちょっと慎重な気持ちでいるよ。たとえマシンが良くても、ここで予選を完璧にまとめるのは本当に難しい。明日どうなるかを見てから考えるしかない。今のところ、自分たちがどの位置にいるのか全く分からない。過去を見ても、ストリートでは特に強くはなかったしね。それを少しでも変えられたらいいけど、どうなるかはまだ分からない。
Q:チャンピオンシップについても聞かせてください。シーズンの3分の1が終わって、オスカー・ピアストリに22ポイント差。マクラーレンとの戦いで、本気で戦えているという実感はありますか?
フェルスタッペン:実感というより、結局はレースごとの結果次第だよ。毎戦改善を目指して全力でやっている。いろんなことが起こる可能性はある。去年の今ごろなら「問題なく勝てる」と言ってたと思うけど、実際にはその後でいろんなことが変わった。今シーズンも簡単に行くとは限らない。まだ改善すべきところがあるけど、それは大丈夫。改善点を見つけようとしてるところだよ。
Q:モナコはあなたにとってのホームレースのようなものでもありますが、お子さんのリリーちゃんはサーキットに来ますか?
フェルスタッペン:いや、家にいた方がいいね。彼女にとってもその方が落ち着けると思う。
Q:アレックス、あなたにも。まずは昨夜のF1映画の試写会についてどう思いましたか?
アルボン:ああ、それならマックスに聞いた方が…(笑)。でも、すごく良かったよ。バランスが取れてると思う。正直、細かいところが気になっちゃうけど、単純に「映画」として楽しむのがいいと思う。あなたも観てたよね?僕はハリウッドとF1の両方の要素をうまく融合させていたと思うよ。
Q:ガブリエル、あなたの感想も聞かせてください。
ボルトレト:とてもハリウッド的だったけど、それが良かったと思う。F1をあまり知らない人たちにとっては、すごくいい入門になる。僕たちドライバーにとっては日常の世界だけど、そうじゃない人たちにとっては新鮮で面白いはず。細かいところは分かるけど、それでもスポーツにとってはすごくいいこと。もっと多くの人がF1を知って、関わってくれると思う。
Q:アレックス、イモラでのレースについて。かなり攻めて走っていたように見えましたが、あれはウィリアムズでのベストレースだと思いますか?
アルボン:うーん、ベストレースとは言えないかな。正直、週末を通してずっと後手に回ってた感じだったし、マシンにあまりフィーリングがなかった。だからこそ、それでもP5でフィニッシュできたのは意味が大きい。ここ数戦、僕たちは明らかに進歩している。通常は土曜の予選が良くても、レースになるとトップ勢との差が開くけど、最近はその差が小さい。フェラーリやメルセデスと同じ位置で戦えているのがすごく楽しいよ。トップチームと本気で競い合えるっていうのは、今までになかったことだから。
Q:最近の好調はサーキットごとの特性によるものでしょうか?それとも、どこでも通用するレベルに達したと思いますか?
アルボン:興味深いところなんだよね。マイアミは合うと分かってたけど、イモラは予想外だった。セッティングは少しずつ変えてきたけど、あそこまで速くなるとは思ってなかった。だから、モナコでも同じくらい速くても不思議じゃないって思える。でも、前の2戦だけが良かっただけかもしれないから、慎重な楽観ってところだね。
Q:ガブリエル、あなたにもお聞きします。前戦のサウバーはペースが良く見えました。今週末のモナコでもそれが再現できると思いますか?
ボルトレト:ちょっと自信はないですね。マイアミでは少し良かったと思います。Q1ではある程度の余裕を持ってQ2に進めた。でもイモラは僕たちにとってベストなサーキットではなかった。Q2には進めたけど、正直なところ言えば、角田選手がクラッシュして、ベアマン選手はラップを抹消された。だから純粋な予選ペースが良かったというわけではない。レースペースは少し良くなっていたけど、チャンスを最大限に活かすことができず、結局ポイントは取れなかった。とはいえ、少しずつ前進しているのは確かだと思う。バルセロナでは新しいアップグレードもあるし、そこではもう少し期待できるかもしれない。
Q:昨年のF2モナコでは表彰台に立ちました。F1マシンでこのサーキットを走るのはどんな感覚になると思いますか?
ボルトレト:すごく狭く感じると思います。F1マシンは本当に大きいし、シミュレーターで走っていてもそれがはっきり分かる。F1マシンのスピードでこの狭さを走るのは、驚きの体験になるでしょうね。若いドライバーにとって、F1のモナコGPはずっと夢見てきた舞台の1つ。早く週末が始まって、このコースをF1マシンで学びたい。F2で走ったことはあるけど、F1でのアプローチはまったく別物。とても興味深い経験になると思うし、楽しみにしてる。
メディアからの質問
Q:マックス、今週末のモナコ予選は今季で最も重要な予選になるかもしれません。あなたの予選アプローチについて教えてください。Q1から攻めていくのか?Q3ではどこまでリスクを取るのか?角田選手は、あなたのアプローチが独特だと言っていました。
フェルスタッペン:それはグリッド上のどこにいるかにもよるよね。もし後方にいるなら、Q1から全開で行く必要がある。まず自分たちの位置を確認しないといけない。モナコは特殊で、走れば走るほど路面コンディションが良くなるから、タイミングがすごく重要になる。Q1では台数が多いからトラフィックも問題になるし、どこまでリスクを取るかのバランスが難しい。大事なのはリズム。普通のサーキットならもっと直感的に走れるけど、モナコでは常にギリギリ。だからこそ、セッションの中でリズムを掴むこと、クルマの感触を整えること、タイヤを適切なウインドウに入れることが重要になる。簡単そうに聞こえるけど、実際は全然簡単じゃない。しかも今回はC6タイヤが使われるから、その反応もまだ誰にも分からない。それを見極める必要がある。
Q:マックス、今週末は2ストップ義務ルールが導入されますが、レースの展開にどう影響すると考えていますか?
フェルスタッペン:どう転ぶか分からないね。普通の展開になるかもしれないし、セーフティカーのタイミングや戦略判断で完全に狂う可能性もある。少なくとも、1ストップの時よりはちょっと展開に変化が出ると思う。通常は1回ピットして、あとは集中して壁に当たらないように走るだけ。でも2ストップになると、ピットのタイミングを賭けに出るチームも出てくるだろうし、少しスパイスが加わることに期待してる。
Q:マックス、2023年モナコのQ3で記録したラップがよく取り上げられます。あれはあなたにとって最高の予選ラップでしたか?
フェルスタッペン:あのラップは良かった。でも、モナコで「完璧だった」と言うのは難しい。いつもギリギリだし、快適に感じることなんてないからね。でもあの時は、セクター1と2で遅れていたのが分かっていたから、セクター3ではリスクを取るしかなかった。それがうまくいった。もちろん嬉しかったよ。なぜなら、モナコではポールを取れば大体勝てるから。まあ、今は2ストップもあるし、何が起こるか分からないけどね。でもあの2023年の予選は、間違いなく良い年で、楽しいラップだった。
Q:アレックス、モナコの予選をドライバーとしてどう感じますか?
アルボン:マックスが言ったことと近いよね。今のF1マシンは重くて大きいから、モナコみたいな狭いサーキットでは本当に難しい。ソフトタイヤもあって、実は「オーバードライブ(攻めすぎ)」になりやすいんだ。トラックが自分に寄ってくるのを待たなきゃいけないし、自分のドライビングにもかなりの規律が必要になる。予選では「限界までリスクを取る」って思うかもしれないけど、実際には“制御できる範囲で攻める”ことが大切。Q3での最終ラップこそが、本当にギリギリの世界。テクニック、ラップタイム、タイヤの状態、それらを天秤にかけていくようなメンタルゲームだよ。
Q:アレックス、2ストップ義務化について、ドライバーとしての懸念は?例えば1周目や2周目にみんながピットに殺到するような事態も想定されますが。
アルボン:一番の懸念は…まあ、このルールはレースを変化させようとしているわけだけど、結局変わらず、むしろ悪化する可能性もあるってことだね。今おっしゃったように、1周目や2周目に皆が一斉にピットに入って、2周目・3周目・4周目…と、早めに押し出し戦略を仕掛ける可能性がある。でも正直言って、チームも戦略担当者も誰もその展開を読めていない。特にミッドフィールドでは、チームメイト同士の協力が重要になってくる。例えば去年のジェッダでは、ケビン(・マグヌッセン)が“バスを停める”ような走りをして、ニコ(・ヒュルケンベルグ)にフリーストップを与えたよね。モナコであれをやれば、2ストップ戦略の意味が変わってくる。こういう試みが悪いとは思っていないよ。何かを変えようとするのはいいこと。でも、それがレースを本質的に変えるかどうかは、まだ分からない。
Q:マックス、今季も金曜は調子が上がらず、マクラーレンに抜かれる展開が多いですが、翌日には立て直してポール争いをしています。なぜ毎回、金曜のベースが崩れていても巻き返せるのですか?また、シミュレータードライバーの役割についても教えてください。
フェルスタッペン:なぜ金曜に苦しむのか、僕にも分からないんだ(笑)。わざとやってるわけじゃないよ。ここ最近は、マシンを正しいウインドウに入れるのが難しくなってる。でもイモラではかなり学びがあったし、何が必要か少し見えてきた。今回のようなストリートコースでそれを生かせるかはまだ分からないけど、有意義な学びだったよ。それがあったから、自信を持って攻められた。
シミュレーターでは、専任ドライバーと密に連携してる。僕らが何を望んでいるか、どうしたいかをフィードバックして、それに応じたセッティングを進めてもらう感じ。ただ、過去1年半~2年くらい、僕たちのマシンは“動作領域(ウインドウ)”がすごく狭い。少しでもズレると一気に扱いづらくなる。それが金曜の不安定さにつながってるんだと思う。でもチームがしっかり分析して、翌日には改善してくれる。イモラでもそれがうまくいった。
Q:3人に質問です。皆さん来年も同じチームに所属し、異なるエンジンを搭載することになります。現時点でどれくらい2026年に向けた準備に関わっているか、また自信はどの程度ありますか?まずはマックスから。
フェルスタッペン:ここ数日もファクトリーにいてピストンを設計してたからね(笑)。いい妥協点を見つけられたと思う。ロケットのようなマシンになりそうだよ、もう準備万端さ!…冗談はさておき、どんなに自信を持っていたとしても、結局は来年になってみないと分からない。重要なのは、実際に何を届けられるか。だから、時間が証明してくれると思う。
アルボン:僕たちはワークスチームじゃないから、たぶんレッドブルほど情報にアクセスできてるわけじゃない。だからこそ、PU(パワーユニット)よりも自分たちのマシンにフォーカスしてる。設計的には、車体のジオメトリがどうなるかはある程度分かってきているけど、それ以上はまだ先の話だね。
Q:アレックス、2026年仕様のシミュレーター作業はどれくらい進んでいますか?
アルボン:本当に最近になってようやく着手し始めたところだよ。今後、シーズンが進むにつれて本格化するはず。今はまだ今年に集中してる。ここまでいいシーズンスタートを切れているから、シミュレーターの時間も2025年の週末準備に重点を置いている状況だ。
ボルトレト:この段階では、まだ他のチームと比較しても情報は少ないと思う。マックスに聞こうとしても、何も教えてくれないし(笑)。
フェルスタッペン:君が何をしているか教えてくれたら、僕も少しは話すよ。
ボルトレト:でも今は状況が違うからね。僕よりあなたが僕を助けられる立場(笑)。
フェルスタッペン:じゃあシミュレーターは任せて。僕が最初に“バンカーラップ”を出して、君が100周かけてそれを抜こうとするんだ。
ボルトレト:100周じゃなくて50周だってば(笑)。まあ、今は2025年のクルマの改良に集中してるけど、遠くないうちにニコ(・ヒュルケンベルグ)と一緒に本格的に2026年の作業に入っていくよ。
Q:マックス、今季はマクラーレン2台とレッドブル1台の構図になっているように見えます。角田裕毅選手がより前で戦うことで、戦略的な援護や防衛役になってくれることを望みますか?
フェルスタッペン:もちろん、チームとしては2台ともできるだけ前にいてほしい。でも、例えば2023年みたいに、マシンが本当に良ければ自分たちの力で戦略を無視して勝てる。だからまずは、自分たちを再びその位置に戻すことが重要。イモラではうまくいった。マシンがうまく機能し、ドライバーが快適なら、周囲の戦略に惑わされず自分たちの最適解を貫ける。でももちろん、チームとしては毎週末1-2フィニッシュしたい。ただ、今はマクラーレンがとても強い。だから自分も裕毅も、チーム全体として改善を続けないとね。
Q:マックス、映画の試写会に来なかった唯一のドライバーでしたね。お子さんのこともありプライベート優先だったとのことですが、映画は観る予定ですか?
フェルスタッペン:FOMにはちゃんと伝えてあったよ。あの夜はプライベートな時間にしたかった。それだけ。映画は6月27日に公開されるんだっけ?そのときにAppleでダウンロードして観る予定だよ。今すぐ観ても、3~4週間後に観ても同じこと。いい評判も聞いてるし、楽しみにしてるよ。
Q:マックス、ショー要素の強いマイアミやラスベガスに対して、モナコは歴史的な意味合いが強いグランプリです。バランスは取れていると思いますか?
フェルスタッペン:僕がF1に来てから今まで、モナコ自体はそんなに変わっていない。すごくエキサイティングだよ。何より予選が重要だし、コースは非常に狭い。今のF1マシンは個人的には大きすぎると思ってる。もっと小さくて細い方がモナコに向いてる。将来的にはそういう方向に戻ってくれたらいいと思う。2026年から少し小さくなるとは聞いてるけど、まだ十分じゃない。さらに小さくなれば、もっと良くなるはず。
Q:マックス、昨年モナコではマシンが跳ねすぎて「カートみたいだ」と話していました。今年のマシンはその点で改善されていると思いますか?
フェルスタッペン:うーん、正直まだ分からない。明日走ってみないとね。僕たちは昔からストリートで強くない傾向があるから、どう反応するかはまだ読めない。
Q:マックス、タイトル争いを続けるにはコンスタントな結果が必要ですが、ウインドウが狭いマシンで安定性を保つのはどれくらい難しいですか?
フェルスタッペン:もちろん、タイトルを獲るにはコンスタントであることが重要。でも、結局は「速さ」が全て。パフォーマンスがあれば、すべてが楽になる。だから僕たちはもっとパフォーマンスを求めている。タイヤの持ちとか、すべてを向上させたい。それが今後の焦点だよ。もちろん他のチームも同じことをやってるけどね。
Q:マックス、あなたは今がF1キャリアで最高の状態だと思いますか?
フェルスタッペン:うまくいってるのは確かだけど、「これがベストだ」と言い切れるものではないね。毎週末は違うし、常に改善したいと思ってる。ポジティブな週末でも「もっとできた」と思うし、ネガティブな週末ならなおさら。F1では学びは尽きない。それがこの世界の面白さだよ。
Q:マックスとガブリエル、あなたたちの関係は「兄弟のよう」とも言われています。マックスが「自分のほうがシムで速い」と言っていますが、それについてガブリエルは?
ボルトレト:まず、それはウソだよ(笑)。一緒に走ると、僕が先にタイムを出して、それを見てマックスがマシンのセットアップを全部変える。それで僕はまた何時間もかけてタイムを抜こうとする。で、彼は周囲に「ガブリエルをまた抜いた」って言い回る(笑)。
フェルスタッペン:でも楽しいよ。僕たちは彼がF3、F2にいた頃からこういう競争をしてた。今はF1で一緒に戦ってるし、空いた時間には一緒にレースをする。F1カーでもゲームでも何でもね。僕たちは同じCRGカートで育ってきたし、ボスのジャンカルロとも思い出がある。だから彼に何かアドバイスできるなら、僕は隠し事しない。シミュレーターでのバトルも楽しいし、ラップを競い合うのも最高だよ。
Q:将来的にシムレースでチームを組む可能性は?
フェルスタッペン:それはガブリエル次第だね。僕はもう競ってるけど、彼がどれくらい時間を割くかにかかってる。
ボルトレト:僕ももうかなりシムに時間かけてるよ(笑)。だから、マックスが耐久レースとかに誘ってくれたら、喜んで参加するつもりさ。
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