マクラーレンが史上初の快挙 レッドブルを圧倒/F1マイアミGP戦況総まとめ

メルセデスのラッセルはVSCを活かした戦略で表彰台を獲得。ウィリアムズのアルボンは今季ベストの5位に入り、サインツもポイント圏内を守った。フェラーリやハース、アルピーヌは中団でもがき、アストンマーティンに至っては2台とも下位に沈むなど、チームごとの明暗が大きく分かれる結果となった。
以下では、各チームの戦況と代表者たちのコメントを網羅的に振り返る。
■ McLaren(マクラーレン)
戦況:
ピアストリが予選・スプリント・決勝すべてで非の打ち所がないパフォーマンスを見せて3連勝を達成。ノリスはスタートで順位を落としたものの、持ち前のペースと冷静なオーバーテイクで挽回し2位を獲得した。スプリントと決勝でともに1-2フィニッシュを果たしたことで、マクラーレンはスプリント週末に両レースで1-2を達成した史上初のチームとなった。マシン、戦略、ドライバーのすべてがかみ合い、まさに完璧な週末だった。
アンドレア・ステラ(チーム代表)
「今日はマクラーレンにとって並外れた結果となり、素晴らしい週末の締めくくりとなった。昨日のスプリントでの1-2フィニッシュに続き、今日のマイアミGPでも1-2を達成したことで、スプリント週末において両レースで1-2を飾った史上初のチームとなった。大量のポイントを獲得できたことも大きく、また明日は我々がこの新たな時代で初優勝を飾った記念日であり、チームの方向性と発展において重要な節目となった日だ。今シーズン何度目かになるが、設計、製造、組立、そしてこの素晴らしいマシンで戦ってくれている人々に改めて感謝したい。また、我々の技術パートナー、商業パートナー、そしてこのエキサイティングな旅路をともにするファンの皆さんにも心から感謝している。予選では非常に僅差の争いとなったが、レースではマシンが非常に良く機能し、オスカーとランドが支配的な走りを見せてくれた。オスカーは冷静かつ正確に、チャンスを的確に掴んで素晴らしいペースを発揮した。ランドはスタート直後の混乱で遅れたが、その後は見事な追い上げを見せ、終盤にはマックスをオーバーテイクした。もしスタートで遅れがなければ、勝利争いに加わっていた可能性もあった。これは今後のシーズンに向けて素晴らしい土台になるが、同時に今回のレースが特別な条件だった可能性もあることを自覚している。我々は浮かれることなく地に足をつけて、MCL39をさらに進化させるべく努力を続けていく。そして、ヨーロッパラウンドへと舞台を移すこれからの戦いに臨んでいきたい。」
■ Mercedes(メルセデス)
戦況:
ラッセルはハードスタートとVSCを最大限に活かした戦略で3位表彰台を獲得。マシンの仕上がりに苦しむ場面もあったが、要所を締める走りで今季4度目の表彰台に上がった。一方のアントネッリは好スタートから2位を走るも、ピットタイミングに恵まれず最終的には6位。それでもルーキーとしては高い水準を維持しており、今後の伸びしろに期待が持てるパフォーマンスだった。
トト・ヴォルフ(モータースポーツ統括責任者)
「今日はジョージが素晴らしいレースをしてくれて、3位という結果を手にした。今週末はこれまで以上に苦戦し、マシンのフィーリングも過去のレースほど良くなかったが、それでも肝心なところで力を発揮し、マシンの持てる性能を最大限に引き出してくれた。とはいえ、マクラーレンとの差が大きかったことは事実であり、それは非常に残念だ。我々はこの差を埋めるべく、アップデートに取り組んでいる。今季最初の6戦では、週末によって勢力図が変動する傾向も見られるが、現時点ではマクラーレンが倒すべきチームとなっている。キミに関しては、その才能を改めて証明した週末だったが、今日のレースでは多くの学びを得ることになった。これは18歳のルーキードライバーとしてはごく自然なことであり、レースマネジメントも今後の経験の積み重ねとともに向上していくだろう。次のイモラはキミにとって初めての母国GPとなるので、きっと彼にとっても特別な週末になるはずだ。」
アンドリュー・ショブリン(トラックサイド・エンジニアリング・ディレクター)
「ジョージが今季4度目の表彰台を獲得できたことを嬉しく思う。我々はハードタイヤでスタートする戦略を選び、レース中にバーチャル・セーフティカー(VSC)が出れば有利になると見込んでいたが、その通りになり、マックスの前に出ることができた。また、レース前は雨が降る可能性が50%程度と予測していたが、最終的に雨雲はコースのすぐ近くを通過しただけだった。一方で、キミはVSCの直前にピットインせざるを得ず、ウィリアムズのアンダーカットを防ぐための対応だったが、その判断によりVSCの恩恵を受けられなかった。さらにピットレーンの混雑でタイムを失い、最終的にはハードタイヤでのペース不足が響いて6位にとどまった。それでも、キミにとっては成長の機会が多く得られた週末だった。マクラーレンは再び圧倒的なパフォーマンスを見せており、我々もこの差を縮めるべく取り組み続けている。ポイントでレッドブルとフェラーリを上回ることができたのはポジティブだが、毎週のように優勝争いを繰り広げるにはまだ改善が必要だ。特に決勝のロングランペースを強化する必要があり、イモラでの改善に向けて全力を尽くす。」
■ Red Bull(レッドブル)
戦況:
フェルスタッペンは序盤首位を守ったが、ピアストリとノリスの猛追を受けて後退。VSCのタイミングにも見放され、最終的には4位にとどまった。マシンのバランスとロングランペースに苦しみ、全体として支配力を欠いた週末となった。角田裕毅はピットスピード違反で5秒加算のペナルティを受けながらも、粘り強い走りで10位に滑り込んだのは評価に値する。
クリスチャン・ホーナー(チーム代表)
「今日、我々は全力を尽くしたが、マクラーレンにはまったく歯が立たなかった。彼らは別のカテゴリーにいるかのようだった。だから、4位とダブル入賞というのは、この混沌としたマイアミGPにおいて、我々が得られる最善の結果だったと思う。マックスは序盤にポジションを守るために必死のディフェンスを見せたが、バーチャル・セーフティカーによって、マックスよりも後にピットインしたドライバーたちにチャンスを与える結果となり、最終的に表彰台を逃すことになった。ユウキは10位で最後のポイントを守り切ったが、あれは立派な走りだった。このレースは、我々がまだ最終的なレースペースという点でやるべきことが多く残っていることをはっきり示している。今後のレースに向けて、ミルトン・キーンズに持ち帰って分析し、全力で巻き返していくつもりだ。2週間後のイモラは、我々にとってF1参戦400戦目となる特別なグランプリでもあるから、なおさらだ。」
■ Williams(ウィリアムズ)
戦況:
アルボンが今季ベストとなる5位入賞を果たし、好調な流れを継続。サインツは1周目の接触でフロアにダメージを負いながらも、持ち前の経験でペースを保ち9位でフィニッシュした。開幕から6戦で5戦ポイント獲得という安定感は、今のウィリアムズの進化を端的に示している。コンストラクターズ争いでも確実に上位をうかがうポジションにある。
ジェームズ・ボウルズ(チーム代表)
「本当に波乱万丈な週末だったが、今日の結果にはとても満足している。昨日の午前中にはいくつかの問題があり、出遅れてしまったが、それを乗り越えて、予選では両マシンをトップ10に入れることができ、最終的に決勝でもダブルポイントフィニッシュを果たせた。これはチーム全体にとって非常に価値のある成果だ。シーズンはまだ長く、各チームがアップグレードを持ち込んでくるだろう。今後数戦で勢力図がどう変化していくかを見るのが楽しみだが、今のところ、開幕6戦のうち5戦でポイントを獲得できているというのは、これまでとまったく異なる世界に我々がいることの証明でもある。チームのメンバーと、アレックス、カルロスというワールドクラスのドライバーたちには誇りしかない。彼らはチームのために全力を尽くしてくれており、我々は今、確かな前進の道を歩んでいる。」
■ Ferrari(フェラーリ)
戦況:
予選からマシンバランスに苦しみ、決勝でも思うような展開に持ち込めず苦戦。チーム内の順位入れ替えも混乱し、ルクレール7位、ハミルトン8位と最低限のポイント確保にとどまった。レースペースでは中団上位には位置したものの、勝利争いには程遠く、アップデートの成果が問われる内容だった。
フレデリック・バスール(チーム代表)
「今週末は、特に予選でバランスをうまく取ることができず、今日の決勝でも中団で苦戦することになった。結果として、これ以上の順位を狙うチャンスは少なかった。だが、クリーンエアを走れたときのペースを見れば、我々はメルセデスやレッドブルに近い水準にいたと思う。こうしたレースの後には、どうしてもフラストレーションが残るが、重要なのは集中力を切らさず、一つひとつ課題を解決していくことだ。我々にはやるべきことがまだたくさんある。戦略面では、両ドライバーをVSC中にピットに入れるという判断は正しかった。その結果、ルイスがリスタート後にシャルルのすぐ後ろにつけることができた。そして、ルイスがミディアムタイヤを履いており、前を行くアントネッリを追う可能性があったため、後ろにいたシャルルにリスクがないと判断した時点で順位を入れ替えた。だが、それがうまく機能しなかったので、我々の標準手順に従って最終的には元に戻した。」

■ Racing Bulls(レーシング・ブルズ)
戦況:
ハジャーは終盤、角田裕毅のペナルティを活かしてポイント圏内を狙うも、わずか0.1秒及ばず11位でフィニッシュ。ローソンはスタート直後の混乱に巻き込まれてリタイアとなった。週末を通して速さは見せたが、あと一歩届かない場面が続いており、実戦での戦略遂行やトラフィック対処が今後の鍵となる。
ローラン・メキース(チーム代表)
「マイアミは我々にとって非常に特別な週末となった。まず、ファンからの我々の特別カラーリングへの素晴らしい反応があり、それがピットレーンの雰囲気を盛り上げた。そして、サーキット上では、イサックとリアムにとって目まぐるしく展開する週末になった。イサックは金曜日のスプリント予選でトップ10入りを果たし、リアムはスプリントレースで14番手から7位まで追い上げたが、残念ながらペナルティでポイントを失った。日曜のGP予選では、イサックがわずか0.02秒差でQ3を逃した。そして本戦では、角田に0.1秒差で届かず、ポイントを逃したが、非常に力強い走りを見せてくれた。リアムのレースは、残念ながら1周目の接触により水泡に帰した。だが、全体を通して、我々のマシンとドライバーが今週末も競争力を持っていたことは良いニュースだ。ポイントこそ手にできなかったが、今後に向けて多くの収穫があった。次戦のイモラは我々の母国レースの一つでもあり、再び全力で臨む準備ができている。」
■ Haas(ハース)
戦況:
オコンは中団で粘り強いレースを展開し12位。ピット戦略の誤算とタイヤ摩耗に苦しみ、ポイントには届かなかった。ベアマンはPUトラブルによって序盤でリタイア。週末を通じてQ1突破やロングランでは改善も見えたが、総合的には苦しい内容が続いている。
小松礼雄(チーム代表)
「今日は非常に厳しいレースだった。オリーは20番手スタートという状況から少しでも順位を上げようと挑んだが、PU(パワーユニット)のトラブルでリタイアとなった。エステバンの最初のスティントは良かった。ハミルトンとしばらく激しい攻防を繰り広げ、彼を抑え続けたのは立派だった。だが、ピットストップのタイミングが良くなかった。我々は角田のペナルティの情報を把握しておらず、ハジャーにアンダーカットされてしまったことで、最終的にオーバーテイクもできず、タイヤが厳しくなってしまった。あの展開であれば、角田の前でフィニッシュできていた可能性もあったので、とても悔しい。今週末、Q2でエステバンを好位置に持ち込めた点など、良かった場面もあったが、Q1やQ3は不完全だった。レースペースやピット判断など、改善すべき点は多く、イモラで挽回したい。」
■ Alpine(アルピーヌ)
戦況:
ガスリーはピットスタートから13位まで追い上げる健闘を見せたが、ポイントには届かず。予選後のマシン調整が裏目に出た格好となった。ドゥーハンはターン1での接触によりレース早々に姿を消した。マイアミではスプリントでの1点以外に明るい材料が少なく、次戦へ向けて立て直しが急務となる。
オリバー・オークス(チーム代表)
「我々はマイアミを後にするにあたり、総じてパフォーマンス不足だったという思いを抱えている。とはいえ、スプリントで1ポイントを獲得できたのは予想外だったし、何も得られなかったわけではない。ピエールは予選後にマシンのフィーリングに満足しておらず、それに伴いセッティング変更を行い、ピットレーンスタートを選択した。天候が荒れてくれれば戦える可能性があったが、結局雨は降らず、通常のドライレースではポイント圏内まで届かなかった。ジャックのレースは、1周目のターン1でリアムとの接触により終わってしまった。次のレースまで少し時間があるので、この週末に起きたことを分析し、より良いパフォーマンスでヨーロッパラウンドに臨めるよう、準備していく。」
■ Kick Sauber(キック・ザウバー)
戦況:
ヒュルケンベルグは混戦の中でも安定したラップを刻み14位でフィニッシュ。ボルトレトは燃料系トラブルにより無念のリタイア。チーム全体の作業精度は高かったものの、VSC活用の判断やストラテジーで一歩及ばず、トップ10進出はならなかった。
ジョナサン・ウィートリー(チーム代表)
「今日のレースでは、両ドライバーが良いスタートを切り、第1スティントでは安定した走りを見せてくれた。残念ながら、ガブリエルは技術的な問題――おそらく燃料システム関連の不具合――によりリタイアとなった。ただ、詳細な原因はマシンを完全に調査してから明らかになるだろう。ニコは16番手スタートから果敢にポジションを上げようとした。結果論だが、VSC中にピットインしていれば、もっと良い結果になったかもしれない。その点は今後の分析課題だ。とはいえ、チームは非常にクリーンな2回のピット作業を行ってくれた(2.2秒と2.5秒)、これはクルーの努力の賜物だ。この週末に向けて懸命に取り組んできたことを誇りに思うし、ここで得られた教訓を活かして、次のヨーロッパラウンドに備えたい。」
■ Aston Martin(アストンマーティン)
戦況:
アロンソは序盤に単独スピンを喫し、追い上げの糸口を失った。ストロールも淡々と走り切るのみで、終始下位を走行。マシンの総合力不足が顕著に表れ、競争力の改善なくしてポイント争いに絡むのは難しい状況が続いている。
アンディ・コーウェル(チーム代表)
「マイアミGPでの今日の結果は、我々が今のところマシン性能において大きく劣っていることを改めて示したレースとなった。スタートポジションからポジションアップを狙えるチャンスもほとんどなく、レース全体が一貫して単調な1ストップ戦略の展開となった。昨日のスプリントでランスが4ポイントを獲得できたのは救いだが、通常のドライコンディションでは、我々のマシンはポイント争いを戦えるレベルにない。全体的な改善が急務であり、イモラで少しでも前進できるよう、引き続き分析と開発を進めていく。」
カテゴリー: F1 / F1マイアミGP