ホンダ | 2019年 インディ500 予選レポート
世界で最も長い歴史を誇り、世界最多のファンを決勝日に集めるインディ500は、第103回目の開催を迎える今年も2日間に渡る予選が行われた。
予選1日目の土曜日には、全員にタイムアタックのチャンスが少なくとも1回は与えられる。最初はくじ引きで決めた順番で1台ずつがコースインし、全長2.5マイルのオーバルコースを4周回り、その平均スピードを競う。
予選は午前11時から夕方の5時50分までと時間はたっぷりと用意され、全員にアタックの機会が一度与えられた後は、時間の許す限り、希望者は何度でもアタックを行ってよいルールとされている。そして、予選1日目にトップから9番手までに入ると、予選2日目にポールポジションをかけた”ファスト9・シュートアウト”に進む権利が与えられる。
予選1日目は気温が30℃以上にも達した上、風も吹く難しいコンディションとなったが、コルトン・ハータ(Harding Steinbrenner Racing)が19歳のルーキーとは思えない活躍を歴史あるコースで披露した。キャリア2戦目にして初優勝を果たしているハータは、最初のアタックで229.033mphを記録した。彼はそれに満足することなく2度目のアタックに挑み、229.478mphへとスピードアップして予選5番手につけた。同じように2度のアタックを敢行した2016年インディ500ウイナーのアレクサンダー・ロッシ(Andretti Autosport)は、229.268mphで予選8番手につけた。そして、ベテランのセバスチャン・ブルデー(Dale Coyne Racing with Vasser-Sullivan)は、228.800mphを記録し予選9番手となった。Honda勢からはこの3人がファスト9のポールポジション争いに臨むことになった。
予選2日目は朝から雨模様で、ファスト9・シュートアウトは行われない可能性もあった。しかし、幸いにも雨は午後3時すぎにやみ、4時すぎになってコースが走行可能な状態まで乾いたことで、無事に予選が行われた。ファスト9・シュートアウトは、前日のスピードの遅かった順に1台ずつ、1度だけアタックを行う。湿度が高く風も強かったため、スピードは予選1日目を下回ったが、コンディションにマシンを合わせるチームのエンジニアリング能力が試され、ドライバーもセッティング変更やコンディションの違いに臨機応変に対応するテクニックが求められる、非常にエキサイティングな、見応えある予選となった。
この2日目にも光る走りを見せたのがハータだった。2日連続でHonda勢の最速となる229.086mphを記録し、彼は自身初となるインディ500決勝に2列目中央のグリッドから挑むこととなった。そして、ブルデーは228.621mphで予選7番手、ロッシは228.247mphで予選9番手となった。
ファスト9の予選が行われる前、夕方4時半から最後尾のグリッド11列目を埋める3台を決める”ラストロー・シュートアウト”が行われた。インディ500に出場できる33台を決めるバンプ・アウト合戦を凝縮した形で残そうと今年から始められたもので、今年は6台が1回ずつアタックを行い、このうちの3人が決勝進出となる。
このグリッド争奪戦も緊張感に満ちたものだった。予選1日目のアタック中にアクシデントを起こしたジェームズ・ヒンチクリフ(Arrow Schmidt Peterson Motorsport)は、バックアップカーに乗り換えたことから予選1日目にスピードアップを十分に果たせず、ラストロー予選に出場。最初のアタッカーとしてコースインした彼は6人中で2番手のスピードを記録し、予選32番手で決勝進出を決めた。これによりHondaエンジンで戦う18台は全員が決勝進出を果たした。
2度のF1タイトル獲得歴を持つフェルナンド・アロンソ(McLaren Racing)もラストロー予選を戦った。彼は3人目のアタッカーとして走り、227.353mphを記録してとりあえずは2番手につけた。しかし、もう1人が彼より速く走って3番手となり、最後のドライバー、2度目のインディ500出場を狙うカイル・カイザー(Juncos Racing)が227.372mphを記録し、アロンソは4番手となった。最後の最後で元F1チャンピオンが33台のグリッドから弾き出されることが決まった瞬間、会場は大きくどよめいた。アロンソが渾身のアタックで記録した2分38秒3440というタイムをカイザーはわずかに0.0129秒上回り、決勝進出を果たした。
このように予選方式に小さな変更が加えられた今年の2日間に渡る予選では、史上最もスピード差の小さい33台のグリッドが形成されることとなった。ポールシッターと最後尾33番グリッドのスピード差は2.620mphで、タイムにすると4周=10マイルで1.8秒という僅差だ。
第103回インディ500の予選はこれで終了。月曜日には決勝に向けた2時間のプラクティスが、決勝2日前の金曜日に1時間半のファイナルプラクティスが行われ、500マイルレースのスタートは日曜日の午後0時30分に切られる。
コルトン・ハータ(予選5番手)
「2日間の予選、その両方をチームにとってすばらしい日とできました。私たちは2日続けて最大限の力を発揮したと思います。予選1日目を終えた時点で、5番手に入れれば満足だと考えていました。予選1日目にトップ4だったライバルたちに対抗できるだけのスピードは自分たちにはないと見えていたからです。インディカーシリーズに出場しているドライバーとチームは、全員の競争力が本当に高いと感じています。ですからインディ500というレースでは、どのスターティングポジションからでも勝利のチャンスはあります。スターティンググリッドは5番手でも25番手でも大きな差はありません。私自身、グリッドはどこでもいいと考えていたほどでした。チームのクルーたちが本当に一生懸命に働いてきてくれているおかげで、私たちはグリッドを確保し、決勝に進出できることになりました。次なる挑戦となる500マイルの決勝レースはどんなものになるのか、今から楽しみです」
佐藤琢磨(予選14番手)
「予選ではまずまずの成功でした。プレッシャーが高まる、いつも通りのエキサイティングな予選日で、厳しい1日ともなっていました。暑く、風も吹いていたコンディションのため、おそらくマシンを完ぺきに仕上げられたチームはなかったでしょう。午前中に走ったドライバーたちは、コンディションの面で少しアドバンテージがありましたが、それ以降に走ったドライバーたちはみんな高い気温や路面温度に悩まされました。私の満足度は半分でした。持っている力を完全に引き出すことができなかったためです。3ラップ目には風に煽られてスロットルをわずかに戻し、平均速度が0.1mphほど下がりました。あのスロットルのリフトがなくても順位は変わりませんでしたが、全力を出し切れなかった点では少し残念でした。それでも、今回のような難しいコンディションの下、チームはすばらしい力を発揮してくれ、まずまずのスピードを記録することができました。明日からは、決勝用のマシンセッティングをベストに仕上げることに集中します」
カテゴリー: F1 / インディカー
予選1日目の土曜日には、全員にタイムアタックのチャンスが少なくとも1回は与えられる。最初はくじ引きで決めた順番で1台ずつがコースインし、全長2.5マイルのオーバルコースを4周回り、その平均スピードを競う。
予選は午前11時から夕方の5時50分までと時間はたっぷりと用意され、全員にアタックの機会が一度与えられた後は、時間の許す限り、希望者は何度でもアタックを行ってよいルールとされている。そして、予選1日目にトップから9番手までに入ると、予選2日目にポールポジションをかけた”ファスト9・シュートアウト”に進む権利が与えられる。
予選1日目は気温が30℃以上にも達した上、風も吹く難しいコンディションとなったが、コルトン・ハータ(Harding Steinbrenner Racing)が19歳のルーキーとは思えない活躍を歴史あるコースで披露した。キャリア2戦目にして初優勝を果たしているハータは、最初のアタックで229.033mphを記録した。彼はそれに満足することなく2度目のアタックに挑み、229.478mphへとスピードアップして予選5番手につけた。同じように2度のアタックを敢行した2016年インディ500ウイナーのアレクサンダー・ロッシ(Andretti Autosport)は、229.268mphで予選8番手につけた。そして、ベテランのセバスチャン・ブルデー(Dale Coyne Racing with Vasser-Sullivan)は、228.800mphを記録し予選9番手となった。Honda勢からはこの3人がファスト9のポールポジション争いに臨むことになった。
予選2日目は朝から雨模様で、ファスト9・シュートアウトは行われない可能性もあった。しかし、幸いにも雨は午後3時すぎにやみ、4時すぎになってコースが走行可能な状態まで乾いたことで、無事に予選が行われた。ファスト9・シュートアウトは、前日のスピードの遅かった順に1台ずつ、1度だけアタックを行う。湿度が高く風も強かったため、スピードは予選1日目を下回ったが、コンディションにマシンを合わせるチームのエンジニアリング能力が試され、ドライバーもセッティング変更やコンディションの違いに臨機応変に対応するテクニックが求められる、非常にエキサイティングな、見応えある予選となった。
この2日目にも光る走りを見せたのがハータだった。2日連続でHonda勢の最速となる229.086mphを記録し、彼は自身初となるインディ500決勝に2列目中央のグリッドから挑むこととなった。そして、ブルデーは228.621mphで予選7番手、ロッシは228.247mphで予選9番手となった。
ファスト9の予選が行われる前、夕方4時半から最後尾のグリッド11列目を埋める3台を決める”ラストロー・シュートアウト”が行われた。インディ500に出場できる33台を決めるバンプ・アウト合戦を凝縮した形で残そうと今年から始められたもので、今年は6台が1回ずつアタックを行い、このうちの3人が決勝進出となる。
このグリッド争奪戦も緊張感に満ちたものだった。予選1日目のアタック中にアクシデントを起こしたジェームズ・ヒンチクリフ(Arrow Schmidt Peterson Motorsport)は、バックアップカーに乗り換えたことから予選1日目にスピードアップを十分に果たせず、ラストロー予選に出場。最初のアタッカーとしてコースインした彼は6人中で2番手のスピードを記録し、予選32番手で決勝進出を決めた。これによりHondaエンジンで戦う18台は全員が決勝進出を果たした。
2度のF1タイトル獲得歴を持つフェルナンド・アロンソ(McLaren Racing)もラストロー予選を戦った。彼は3人目のアタッカーとして走り、227.353mphを記録してとりあえずは2番手につけた。しかし、もう1人が彼より速く走って3番手となり、最後のドライバー、2度目のインディ500出場を狙うカイル・カイザー(Juncos Racing)が227.372mphを記録し、アロンソは4番手となった。最後の最後で元F1チャンピオンが33台のグリッドから弾き出されることが決まった瞬間、会場は大きくどよめいた。アロンソが渾身のアタックで記録した2分38秒3440というタイムをカイザーはわずかに0.0129秒上回り、決勝進出を果たした。
このように予選方式に小さな変更が加えられた今年の2日間に渡る予選では、史上最もスピード差の小さい33台のグリッドが形成されることとなった。ポールシッターと最後尾33番グリッドのスピード差は2.620mphで、タイムにすると4周=10マイルで1.8秒という僅差だ。
第103回インディ500の予選はこれで終了。月曜日には決勝に向けた2時間のプラクティスが、決勝2日前の金曜日に1時間半のファイナルプラクティスが行われ、500マイルレースのスタートは日曜日の午後0時30分に切られる。
コルトン・ハータ(予選5番手)
「2日間の予選、その両方をチームにとってすばらしい日とできました。私たちは2日続けて最大限の力を発揮したと思います。予選1日目を終えた時点で、5番手に入れれば満足だと考えていました。予選1日目にトップ4だったライバルたちに対抗できるだけのスピードは自分たちにはないと見えていたからです。インディカーシリーズに出場しているドライバーとチームは、全員の競争力が本当に高いと感じています。ですからインディ500というレースでは、どのスターティングポジションからでも勝利のチャンスはあります。スターティンググリッドは5番手でも25番手でも大きな差はありません。私自身、グリッドはどこでもいいと考えていたほどでした。チームのクルーたちが本当に一生懸命に働いてきてくれているおかげで、私たちはグリッドを確保し、決勝に進出できることになりました。次なる挑戦となる500マイルの決勝レースはどんなものになるのか、今から楽しみです」
佐藤琢磨(予選14番手)
「予選ではまずまずの成功でした。プレッシャーが高まる、いつも通りのエキサイティングな予選日で、厳しい1日ともなっていました。暑く、風も吹いていたコンディションのため、おそらくマシンを完ぺきに仕上げられたチームはなかったでしょう。午前中に走ったドライバーたちは、コンディションの面で少しアドバンテージがありましたが、それ以降に走ったドライバーたちはみんな高い気温や路面温度に悩まされました。私の満足度は半分でした。持っている力を完全に引き出すことができなかったためです。3ラップ目には風に煽られてスロットルをわずかに戻し、平均速度が0.1mphほど下がりました。あのスロットルのリフトがなくても順位は変わりませんでしたが、全力を出し切れなかった点では少し残念でした。それでも、今回のような難しいコンディションの下、チームはすばらしい力を発揮してくれ、まずまずのスピードを記録することができました。明日からは、決勝用のマシンセッティングをベストに仕上げることに集中します」
カテゴリー: F1 / インディカー