ホンダF1特集:スプリント予選に求められるアプローチ / F1イギリスGP
今週末のF1イギリスGPでは、これまでと大きくレースフォーマットが変わり、スプリントレースによって決勝のグリッドが決まる「スプリント予選」が実施される。これがどのような変化を及ぼすのか、ホンダF1でスクーデリア・アルファタウリ担当のチーフエンジニアを務める本橋正充が語った。
モータースポーツの最高峰であるF1。レースウイークは、どれもタフな戦いになる。
しかし、毎戦コースレイアウトや天候、標高などの違いはあっても、300㎞以上に及ぶレースを可能な限り速く走る、という最終目的に変わりはなく、そのために3回のフリー走行と予選セッションが存在している。
シルバーストーンでのレースウイークでは、そのフォーマットが変わる。史上初めて「スプリント予選」が導入され、レース形式での予選が実施される。日曜の「レース」はすでに存在しているので、“スプリントレース”とは呼ばず、「スプリント予選」の呼称となった。
このフォーマットでは、金曜日に60分間のフリー走行と、通常土曜日の午後に行われるQ1~Q3の予選セッションを実施。ここで決定したグリッドでスプリント予選をスタートする。通常週の予選との違いは、全員がソフトコンパウンドのタイヤを使用しなければならないという点だ。
土曜日は、午前に60分間のフリー走行を行い、午後にスプリント予選というスケジュール。レース距離は100㎞が目安となり、この順位が翌日の決勝のスターティンググリッドとなる。ポイントの付与対象でもあり、1位が3ポイント、2位が2ポイント、3位が1ポイントを獲得する。
日曜のレースは通常通りの進行で、スプリント予選で決まったグリッドでスタートするため、土曜日の勝者がポールポジション獲得として記録される。
戦いの内容に変化があるかはともかく、レースウイークへのアプローチは大きく変える必要がある。ホンダF1でスクーデリア・アルファタウリ担当のチーフエンジニアを務める本橋正充が語った。
「レースに向けて最適なセッティングを探っていろいろと試せるのはFP1だけになるので、ファクトリーでの事前シミュレーションが非常に重要です。FP1の直後にパワーユニット(PU)のセッティングを決定するというのは今まで経験がないですが、できる限り正確にシミュレーションをしようと取り組んでいます」
「スプリント予選で使う分、PUをレースモードにする時間が普段よりも長くなるので、信頼性の観点では厳しさが増します」
「これは、今週末すぐに影響が出るものではありませんが、年間を通じて使用できるPUの基数が決まっている以上、シーズンを通じた使用計画の中では考慮する必要があります」
これまでは、金曜のフリー走行では古いPUを使い、その後土曜日に向けて載せ替えるという運用も必要に応じて行っていたが、新フォーマットではパルクフェルメ(マシンのパーツやセッティングの変更を禁じるルール)が金曜の予選開始時から適用されるので、こうした対策も難しくなる。
土曜のFP2で新たな発見があっても、それが反映できる部分は限られてしうが、それでも予選後に走行機会があることに意味はあると本橋正充は語る。
「FP1と予選の間、FP2とスプリント予選・決勝の間にPU交換を行うことは、技術的には可能です。ただ、時間的な制約を考えると、FP1やFP2の後に交換するのは難しいでしょうね」
「すべてのセッティングをFP1終了後に完了しておかなければならないので、できることはあまりありません。そうすると、セッティングが変更できないFP2にはあまり意味がないように思えるかもしれませんが、チームも我々も、FP1と異なるコンディションで、マシンの挙動やタイヤの状態などレース戦略に関連する要素を理解しておくために、様々なことを試せる場でもあるんです」
通常のフォーマットでは、予選でQ3へ進出すると、Q2でベストタイムを記録したタイヤでレースをスタートしなければならない、新フォーマットではスプリント予選も決勝もスタートタイヤを自由に選択できるので、戦略の幅は広がる。目に見える変更以外にも、様々な点で変化が起こるはずだが、F1はさらなるエンターテインメントとエキサイティングな展開をファンに届けることを目指しており、レースモードで走る距離が増え、フリー走行が少なくなるなど、新たな課題への対処が見どころになるはずだ。
シルバーストーン以降、さらに2レースでスプリント予選が導入される予定となっている。モンツァでのイタリアGPがその一つとして発表されている。F1のスポーツ担当マネージングディレクターを務めるロス・ブロウンは、この施策が新規と既存のファンそれぞれにどう受け止められるのか楽しみにしていると語る。
「これは、レースウイークのコンテンツを増やす試みです。スプリント予選だけを指しているのではなく、金曜の午後に予選、土曜にスプリント予選、そして日曜に決勝レースが実施されることで、すべての開催日で順位を争うセッションが行われることになります」
「これによって、レースウイーク全体への関心を高めていきたいですし、土曜日のスプリント予選は今までにない試みなので、それがどのように受け入れられ、どう進化していくのかは誰にも分かりません。でも、F1はこうしたイベントを受け入れることで、自らに先見の明があることを示すことができていると思います」
「3レースで導入しますが、これは成功かどうかを評価するとともに、間違った点を是正するのに十分な数だと思います。ただ、土曜の午後に、30~40分の真剣勝負を見せられる機会になるはずです。ピットストップの影響はありませんし、ほとんどのドライバーがそのコースに持ち込まれた一番柔らかいタイヤで戦うと想定していますが、とてもストレートな勝負になると思います。土曜日のスプリント予選では、チームの戦略が結果に大きく影響を及ぼすことはありません」
「また、これまでとは違ったファンの皆さんにも楽しんでもらえるようなレースにしたいと思っています。既存のファンを疎外したいとは思っていませんが、彼らにも興味深く、魅力的なものを提供することで、新しいファン層の関心を引き出せるかどうかを見極めたいと思っています」
「土曜の午後に30~40分のレースが見られるというのは、私はとてもエキサイティングだと思います」
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / F1イギリスGP / スクーデリア・アルファタウリ
モータースポーツの最高峰であるF1。レースウイークは、どれもタフな戦いになる。
しかし、毎戦コースレイアウトや天候、標高などの違いはあっても、300㎞以上に及ぶレースを可能な限り速く走る、という最終目的に変わりはなく、そのために3回のフリー走行と予選セッションが存在している。
シルバーストーンでのレースウイークでは、そのフォーマットが変わる。史上初めて「スプリント予選」が導入され、レース形式での予選が実施される。日曜の「レース」はすでに存在しているので、“スプリントレース”とは呼ばず、「スプリント予選」の呼称となった。
このフォーマットでは、金曜日に60分間のフリー走行と、通常土曜日の午後に行われるQ1~Q3の予選セッションを実施。ここで決定したグリッドでスプリント予選をスタートする。通常週の予選との違いは、全員がソフトコンパウンドのタイヤを使用しなければならないという点だ。
土曜日は、午前に60分間のフリー走行を行い、午後にスプリント予選というスケジュール。レース距離は100㎞が目安となり、この順位が翌日の決勝のスターティンググリッドとなる。ポイントの付与対象でもあり、1位が3ポイント、2位が2ポイント、3位が1ポイントを獲得する。
日曜のレースは通常通りの進行で、スプリント予選で決まったグリッドでスタートするため、土曜日の勝者がポールポジション獲得として記録される。
戦いの内容に変化があるかはともかく、レースウイークへのアプローチは大きく変える必要がある。ホンダF1でスクーデリア・アルファタウリ担当のチーフエンジニアを務める本橋正充が語った。
「レースに向けて最適なセッティングを探っていろいろと試せるのはFP1だけになるので、ファクトリーでの事前シミュレーションが非常に重要です。FP1の直後にパワーユニット(PU)のセッティングを決定するというのは今まで経験がないですが、できる限り正確にシミュレーションをしようと取り組んでいます」
「スプリント予選で使う分、PUをレースモードにする時間が普段よりも長くなるので、信頼性の観点では厳しさが増します」
「これは、今週末すぐに影響が出るものではありませんが、年間を通じて使用できるPUの基数が決まっている以上、シーズンを通じた使用計画の中では考慮する必要があります」
これまでは、金曜のフリー走行では古いPUを使い、その後土曜日に向けて載せ替えるという運用も必要に応じて行っていたが、新フォーマットではパルクフェルメ(マシンのパーツやセッティングの変更を禁じるルール)が金曜の予選開始時から適用されるので、こうした対策も難しくなる。
土曜のFP2で新たな発見があっても、それが反映できる部分は限られてしうが、それでも予選後に走行機会があることに意味はあると本橋正充は語る。
「FP1と予選の間、FP2とスプリント予選・決勝の間にPU交換を行うことは、技術的には可能です。ただ、時間的な制約を考えると、FP1やFP2の後に交換するのは難しいでしょうね」
「すべてのセッティングをFP1終了後に完了しておかなければならないので、できることはあまりありません。そうすると、セッティングが変更できないFP2にはあまり意味がないように思えるかもしれませんが、チームも我々も、FP1と異なるコンディションで、マシンの挙動やタイヤの状態などレース戦略に関連する要素を理解しておくために、様々なことを試せる場でもあるんです」
通常のフォーマットでは、予選でQ3へ進出すると、Q2でベストタイムを記録したタイヤでレースをスタートしなければならない、新フォーマットではスプリント予選も決勝もスタートタイヤを自由に選択できるので、戦略の幅は広がる。目に見える変更以外にも、様々な点で変化が起こるはずだが、F1はさらなるエンターテインメントとエキサイティングな展開をファンに届けることを目指しており、レースモードで走る距離が増え、フリー走行が少なくなるなど、新たな課題への対処が見どころになるはずだ。
シルバーストーン以降、さらに2レースでスプリント予選が導入される予定となっている。モンツァでのイタリアGPがその一つとして発表されている。F1のスポーツ担当マネージングディレクターを務めるロス・ブロウンは、この施策が新規と既存のファンそれぞれにどう受け止められるのか楽しみにしていると語る。
「これは、レースウイークのコンテンツを増やす試みです。スプリント予選だけを指しているのではなく、金曜の午後に予選、土曜にスプリント予選、そして日曜に決勝レースが実施されることで、すべての開催日で順位を争うセッションが行われることになります」
「これによって、レースウイーク全体への関心を高めていきたいですし、土曜日のスプリント予選は今までにない試みなので、それがどのように受け入れられ、どう進化していくのかは誰にも分かりません。でも、F1はこうしたイベントを受け入れることで、自らに先見の明があることを示すことができていると思います」
「3レースで導入しますが、これは成功かどうかを評価するとともに、間違った点を是正するのに十分な数だと思います。ただ、土曜の午後に、30~40分の真剣勝負を見せられる機会になるはずです。ピットストップの影響はありませんし、ほとんどのドライバーがそのコースに持ち込まれた一番柔らかいタイヤで戦うと想定していますが、とてもストレートな勝負になると思います。土曜日のスプリント予選では、チームの戦略が結果に大きく影響を及ぼすことはありません」
「また、これまでとは違ったファンの皆さんにも楽しんでもらえるようなレースにしたいと思っています。既存のファンを疎外したいとは思っていませんが、彼らにも興味深く、魅力的なものを提供することで、新しいファン層の関心を引き出せるかどうかを見極めたいと思っています」
「土曜の午後に30~40分のレースが見られるというのは、私はとてもエキサイティングだと思います」
カテゴリー: F1 / ホンダF1 / F1イギリスGP / スクーデリア・アルファタウリ