F1回顧録:ホンダF1第三期の唯一の勝利となった2006年ハンガリーGP
ホンダF1の第三期の9年間で唯一の勝利となった2006年のF1ハンガリーGPを振り返る。

2006年のF1ハンガリーGPでは、Honda Racing F1 Teamのジェンソン・バトンが、ついに初優勝を果たし、チームに記念すべき初勝利をもたらした。ホンダにとって参戦301戦目にして、通算72勝目。また、Hondaワークスチームとしての優勝は、1967年第9戦イタリアGPでジョン・サーティースが獲得して以来、39年ぶりとなった。

予選では、ルーベンス・バリチェロが、サンマリノGP以来、今季2度目となる3番グリッドを獲得。ジェンソン・バトンも、僅差で4番手のタイムを出したものの、午前中のフリー走行でのトラブルによるエンジン交換で、10番降格のペナルティを受け、14番グリッドからのスタートとなった。

決勝当日は、前夜からかなりの雨。その後いったんは止んだものの、午後2時のレース開始時点で、路面は完全にウエット状態。レース中、いつ再び降り出してもおかしくない空模様で、今季初のウエットレースとなった。

好スタートを決めたバリチェロが、フェリペ・マッサ(フェラーリ)をかわして2番手に上がる。バトンも14番グリッドから、11番手、さらに8番手へと3周目までに一気に順位を上げる。

序盤、バリチェロは、4周目にペドロ・デ・ラ・ロサ(マクラーレン)に抜かれ、次の5周目、バリチェロはピットインし、浅溝タイヤに交換。10番手に後退する。一方、バトンは、6周目にミハエル・シューマッハ(フェラーリ)を抜いて、4番手に立った。周回ペースは、すぐ前を走るフェルナンド・アロンソ(ルノー)と、ほとんど変わらず。10周目には、最速タイムを叩き出した。

中盤、バトンは4番手を維持。バリチェロも5番手に上がった。そして26周目。キミ・ライコネン(マクラーレン)のクラッシュで、セーフティカーが導入される。その頃から雨はほぼ止み、路面は急速に乾いていく。さらに、バトンの前を走る2番手のデ・ラ・ロサがピットに入り、バトンは2番手、バリチェロは4番手に。バトンは、首位のアロンソとのタイム差も徐々に縮め、最速タイムを更新する。バトンのペースは安定し、5秒以上あった両者の差は、43周目にはついに0秒8まで縮まった。

51周目に、2度目のピットを終えたばかりのアロンソが、コースアウト。そのままリタイアを喫し、52周目にバトンがトップに立ち、そのまま快走を続ける。そしてついに70周を走りきり、念願の初優勝を飾り、同時にチームに記念すべき初勝利をもたらした。表彰式では21世紀初の君が代が流れた。バリチェロも、混乱のレースの中、果敢な走りを見せ、4位入賞を果たした。

この勝利は、ホンダにとって、通算72勝目(F1参戦301戦目)、マクラーレンMP4/7・ホンダを駆り、ゲルハルト・ベルガーが獲得した1992年第16戦オーストラリアGP以来、14年ぶりの快挙となった。さらに、Hondaワークスチームとしての優勝は、1967年第9戦イタリアGPでジョン・サーティースが獲得して以来、39年ぶりとなった。

ジェンソン・バトンにとっては参戦115戦目(出走113戦目)で待望のF1初優勝。その時点において、125戦のルーベンス・バリチェロ、119戦のヤルノ・トゥルーリに次いで、史上3番目に遅い初優勝であった。

Honda Racing F1 Team コメント
ジェンソン・バトン (優勝)
「なんという一日だろう! この瞬間のために、僕のモーターレースにおける全キャリアを捧げてきたんだ。本当にすばらしい瞬間だよ。このチームとなら、一緒に目標を達成できるとずっと信じていた。この勝利によって、その信念を証明することができた。感謝しなければいけない人たちがたくさんいるよ。チームのみんな、本田技研工業、パートナーたち、そしてファンのみなさんありがとう。また、勝利への最初の一歩を踏み出す手助けをしてくれた僕の家族にも特別な感謝を伝えたい。14番グリッドからスタートしながら、このタフでチャレンジングなレースに勝てたなんて、信じられないぐらいすごいことだし、何よりも、実力で勝てたということが大事なんだ。今日のHonda Racing F1チームは完ぺきだった。そのことを否定できる人は誰もいないだろう」

福井威夫 (本田技研工業株式会社 代表取締役社長)
「今日の勝利は、何事にも代えがたい喜びです。今シーズンは初戦から優勝を目標にやってきましたが、ようやく13戦目のハンガリーGPで、正々堂々と戦った結果、勝利をつかめて、大変うれしく思います。ドライバー、チームのメンバーも本当によくがんばってくれました。今日はこの勝利をみんなで喜び、そして明日からは、F1の世界で勝利を重ねていくために、再びチャレンジして参ります。これまで応援してくださった皆様、ありがとうございました。引き続きご声援をよろしくお願い致します」

ルーベンス・バリチェロ (4位)
「ジェンソンと、Honda Racing F1チームにとって、本当にうれしい一日だ。スタートで間違ったタイヤを選んでしまったことが悔やまれる。それさえなければ2人で表彰台に上がれただろう。今週末チームは本当によくがんばってくれたし、これからさらなる勝利を重ねるために、その努力を生かしていきたいね」

ニック・フライ (Honda Racing F1 Team CEO)
「この感動は、言葉で表しきれるものではない。Hondaにとって歴史的な一日であり、チーム全体と仲間たち、世界中のファンにとって、信じられないぐらいすばらしい出来事だ。このすばらしい勝利を受け止め、味わうために、みんなとても長い間戦ってきた。そして、今日は、ここハンガリーで、Hondaの福井威夫社長が、私たちを代表し、トロフィーを授与されたことで、常にポジティブな意識を持ち続けたジェンソンとチームを、私は本当に誇りに思う。こうして重要な一歩を記した今、我々はこれからの戦いを見据え、何度でも勝利を実現していかなければならない」

ジル・ド・フェラン (Honda Racing F1 Team スポーティングディレクター)
「今日はHonda Racing F1チームにとって、忘れられない日となるだろう! このすばらしい結果は数年にわたるチームメンバーたちのハードワークと専心、徹底的に追及してきたことによるものであり、完ぺきな形となって表れたものだ。ジェンソンにとってレースでの勝利は時間の問題であったが、こうした厳しいコンディションの中で彼は全世界に対し、チームの誰もが信じて疑わなかったその才能とレベルの高さを証明してみせた。スタートからフィニッシュまで、ジェンソンのレースはパーフェクトであり、非の打ち所のない走りで速さを見せた。戦略的見地から、非常に難しいレースだったことは言うまでもなく、スタートからどのタイヤを選ぶべきか悩まされた。ルーベンスはエクストリームウエットを選び、ジェンソンはウエットを選んだ。序盤はルーベンスが有利だったが、ほんの数周でピットインを迫られることになった。レースの鍵となったのは、ジェンソンがリーダーに追いついてからのパートだった。46周目に2度目のピットインを行ったときはまだウエットタイヤがふさわしい状態だったが、最後までそのコンディションが続くとは考えにくかったため、我々は最終スティントを分けることにした。1位と4位という結果は、信念を失わず、ハードワークをこなしながらも集中し続けたジェンソンとルーベンスはもとより、チーム全体への報いである。トルコまで、この喜びをゆっくりと味わいたい!」



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カテゴリー: F1 / ホンダF1