ロマン・グロージャン F1での役割復帰に意欲「機会があれば」
F1でのキャリアに終止符を打つことになった事故から5年が経つが、ロマン・グロージャンは、自身を世に送り出した世界から完全に離れたことは一度もなかった。テレビ解説者として複数のグランプリに帯同し、インディカー、そしてIMSAにも参戦してきたこのフランス人ドライバーは、今もパドックの周辺に身を置き続けている。そして近年、より能動的な形でF1に関わりたいという思いが、少しずつ表に出てきている。

9月26日、グロージャンはハースF1チームのマシンをドライブし、1日限りのテストでF1のコクピットに戻る機会を得た(下の写真)。2020年のバーレーンで起きた大事故から、ほぼ5年後に実現したこの走行は、象徴的な意味を持つものだった。炎に包まれたマシンから奇跡的に脱出したあの事故を経ての復帰走行は、2016年に始まったハースとのプロジェクトに関わった多くのメンバーに囲まれながら行われ、長く胸の奥にしまわれていた感情を呼び覚ました。

「今年の中でも、最も大きな出来事のひとつは、間違いなくハースとともにF1カーに戻れたことだったと思う。」

「事故からほぼ5年が経っていた。そして、2016年にハースで初めてレースをした時にすでにいた人たちの多くが、その場にいた。あの日は、チームにとって初めての“ファミリーデー”でもあった。だから、ハースの最初のドライバーとしてムジェロに戻り、マシンをドライブできたことは、本当に強い意味を持っていた。レースやパフォーマンスの話ではなく、ただ仲間と一緒に過ごす、とても良い一日だった。」

ロマン・グロージャン F1

39歳となったグロージャンは、この特別な時間が、自分の中に眠っていたある欲求を呼び起こしたことを認めている。それは、何らかの形でF1に戻るという考えだ。解説者として、友人として、そしてチームとの関係を通じて、彼は一度もF1とのつながりを断ってこなかった。もし将来、魅力的な機会が訪れるのであれば、迷わず手を挙げるつもりだという。

「人生において、“絶対にない”とは言わないほうがいいと思う。いつか何らかの形でF1に戻ることがあるのかどうか、それは分からない。ただ、F1は自分がとてもよく理解している世界だし、ここで働いている非常に良い友人たちがいる。フランスのテレビ局のコンサルタントとして、年に6戦ほどグランプリに行っているから、そこでまた皆と会っている。でも確かに、将来、チームの中で興味深い役割を担える良い機会があれば、それはぜひやってみたいことだ。自分にとってチャレンジになるし、何かをもたらせると思っている。断ることはないだろう。」

“復帰”ではなく“関与”という選択肢
グロージャンの言葉からは、ドライバーとしての現役復帰を強く求めるというよりも、F1という舞台に自分の経験を生かす場を探している姿勢がにじむ。長年にわたりF1の内側を知り、事故という極限を経験し、その後も第一線のレースカテゴリーで戦い続けてきた視点は、チームにとって独自の価値を持つ可能性がある。

ハースとの再会が示したもの
ハースF1チームでのテストは、単なるノスタルジーでは終わらなかった。家族や旧知のスタッフに囲まれた環境での走行は、グロージャンにとって「結果」や「速さ」とは別次元のF1との向き合い方を再確認する機会となった。その体験こそが、彼に再びF1での役割を思い描かせるきっかけになったと言える。

機会があれば、という静かな意欲
「決してノーとは言わない」という一言に象徴されるように、グロージャンは自ら積極的に席を求めるのではなく、価値ある役割が提示されたときに応える準備があるという立場を取っている。F1をよく知る人物が、今後どのような形でこの世界に関わるのか。その行方は、まだ静かにパドックの片隅に置かれている。

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カテゴリー: F1 / ロマン・グロージャン