F1マイアミGP前にレギュレーション変更 FIA「進化であって革命ではない」

今回の変更は大規模な刷新ではなく、あくまで現行パッケージの補正という位置づけだ。
FIAシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスも「進化であって革命ではない」と説明しており、レースの魅力自体は維持しつつ、問題点にピンポイントで手を入れる形となる。
トンバジスが語る“進化”という位置づけ
「重要なのは、誰も“患者である我々のスポーツ”が集中治療室にいるとは考えていなかったということだ。明らかに取り上げるべき問題はあったが、集中治療室にいたわけではない」
「もしかすると患者はもう少し運動をして、毎日リンゴを食べて、ビタミンを摂る必要があるのかもしれない。そして我々がやってきたのはまさにそれだ。これは進化であって革命ではない」
「我々は基本的に良いパッケージを持っていると信じているし、状況に応じて調整を行うのは当然のことだ」
鈴鹿でのオリバー・ベアマンのクラッシュ以降、安全性が議論の最優先事項に浮上した一方で、レース内容そのものへの介入は最小限に抑えられている。トト・ヴォルフも「必要なのはメスであってバットではない」と述べ、大幅変更に否定的な姿勢を示していた。
スーパークラッピング拡大の狙い
今回の調整のひとつがスーパークラッピング上限の引き上げだ。従来250kWに制限されていた領域が、350kWまで拡大される。
この変更についてトンバジスは次のように説明している。
「それは明らかに安全の話題であり、我々はどのように解決するかを議論してきた。主なポイントは、コーナーやよりツイスティな区間など、サーキットの特定の場所では、クルマが持てる最大の電力、つまり電力出力を350キロワットから250キロワットへと制限するということだ」
また、ドライバーの負担軽減にもつながるとされる。
「ドライバーがブーストボタンを押したときでも、出力を増加させることはできず、ゼロの状態からでも150キロワットを超えることはない」
予選のエネルギー制限とその意図
予選ではエネルギー回収上限が8メガジュールから7メガジュールへと引き下げられる。この決定についてもトンバジスは詳細に説明している。
「これらすべての変更は、単なる数ページのレギュレーション以上のものだと理解することが重要だ。何千ものシミュレーション、多くの会議、多くの分析、そして“もしこうだったら”というシナリオが関わっている」
「スタッフは、我々が投票した最終パッケージをまとめ上げるために、数週間にわたって休むことなく働いてきた」
この変更によりラップタイムは約1秒遅くなると見積もられているが、ドライバーはエネルギー管理よりも純粋なアタックに集中できるようになる。

ベアマンの事故を受けた安全対策
今回の変更の背景には、鈴鹿での重大事故がある。エネルギー展開の差による速度差が問題視され、安全対策が強化された。
トンバジスはその効果について明言している。
「その点に関して言えば、鈴鹿でオリー・ベアマンのクラッシュで見られたような問題は、基本的には次のレース以降は回避されるはずだ」
スタート時の新安全システム
マイアミGPではスタート時の安全対策も試験導入される。低出力状態を検知し、自動的にMGU-Kが補助する仕組みだ。
トンバジスはその運用についてこう説明している。
「次のレースから、いくつかのテストを行う予定だ。完全導入には2〜3レースかかる可能性がある。マイアミとカナダでテストと調整を行うことになるが、実質的にはセーフティネットのようなものになるだろう」
政治的制約の中での最適解
F1におけるルール変更は常に政治的な制約と隣り合わせだ。各チームやメーカーの利害が絡む中で、合意形成は容易ではない。
トンバジスはその難しさについても率直に語っている。
「我々がドライバー、チーム、パワーユニットメーカーについて話しているかに関わらず、F1は非常に競争の激しいスポーツであることを理解することが重要だ」
「人々は常にトラック上で互いに戦っており、賭けられているものは非常に大きい。そのため、全員の合意を得るのは簡単ではない」
「FIAの役割は最良の妥協点を見つけることにあり、それが我々が非常に努力してきたことだ」
今回の変更はあくまで“調整”にとどまるが、予選の性質と安全性には確実に影響を与える。マイアミ以降も状況を見ながら、さらなる修正が検討されることになる。
カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟) / F1マイアミGP
