2027年F1パワーユニット規則に妥協案浮上 出力増は13%ではなく5%か

FIA(国際自動車連盟)は2026年から導入された内燃エンジン(ICE)と電動システムの50対50という出力配分を見直し、2027年から60対40へ変更する案を推進している。しかし、この計画には大きな反発があり、現在は「13%増」ではなく「5%増」に抑える妥協案が検討されている。
なぜFIAは出力配分変更を目指しているのか
2026年の新レギュレーションでは、内燃エンジンと電動システムがほぼ同等の出力を担う設計となった。
しかし一部サーキットでは、バッテリーの充電不足による「クリッピング」や「スーパークリッピング」が問題視されている。FIAはこれを解消するため、燃料流量を増やして内燃エンジン側の出力を高め、約70馬力の上積みを実現したい考えだ。
当初、この方向性には6社すべてのパワーユニットメーカーが原則的に同意していた。
ところが具体的な規則案が示されると状況は一変した。
メーカー間で意見が真っ二つに分裂
現在の勢力図は大きく二つに分かれている。
■ 賛成:メルセデス、レッドブル・パワートレインズ
■ 反対:アウディ、ホンダ、フェラーリ、キャデラック
記事によると、PUAC(パワーユニット諮問委員会)で必要な「スーパー・マジョリティ(特別多数)」が得られないため、F1コミッションやFIA世界モータースポーツ評議会へ進めることができない状況となっている。
反対派が懸念する技術的な問題
反対派の主張は単なる政治的駆け引きではない。
出力を約70馬力増やす場合、現在設計されているパワーユニットでは対応が難しくなる。
まずV6エンジンそのものを再設計する必要が生じる。
さらに現在のギアボックスも限界近くまで軽量化・最適化されているため、トランスミッションの再設計が必要になる可能性が高い。
問題はそれだけではない。
燃料流量が増えれば現在の燃料タンク容量では不足する恐れがあり、シャシー設計そのものにも手を加えなければならなくなる。
つまり影響はエンジン単体ではなく、マシン全体に及ぶというわけだ。
時間不足も大きな障害
技術面以上に深刻なのがスケジュールである。
現在はすでに2026年シーズンの中盤に差し掛かっており、多くのメーカーはADUO(性能差是正のためのアップデート制度)への対応にリソースを割いている。
エンジン開発は半年程度で完了できるものではない。
そのためホンダやアウディなどは、2027年向けの大規模改修とADUO対応を同時進行させることに強い懸念を示している。
メルセデスとレッドブルが有利になるとの見方
反対派には別の警戒感もある。
現状で競争力の高いパワーユニットを持つメルセデスとレッドブル・パワートレインズは、ADUOによる大幅な性能改善を必要としていない。
そのため2027年用パワーユニット開発へより多くの人員や資金を投入できる可能性がある。
一方で他メーカーは性能改善と新開発を並行して進めなければならず、開発競争で再び差が広がるリスクがある。
ADUOの目的が勢力均衡の実現にあることを考えると、この懸念は無視できない。
浮上した「5%増」の妥協案
こうした対立を受け、現在は中間案が検討されている。
それが出力増加幅を13%ではなく5%程度に抑える案だ。
この案であればエンジン、ギアボックス、燃料タンク、シャシーの全面的な再設計を回避できる可能性がある。
そして2028年に正式なホモロゲーションを実施する際に、当初予定していた13%増へ段階的に移行するという考え方である。
背景にあるV8移行構想
今回の議論の裏側では、将来的な自然吸気V8エンジン復活構想も影響している。
現在の計画では2030年までパワーユニットを凍結する方向だが、一部では2.6リッター自然吸気V8エンジンに小型KERSを組み合わせた新世代パワーユニットを2029年にも前倒し導入する可能性が取り沙汰されている。
そのためメーカー側には、短期間しか使用しないかもしれない2027年仕様のために大規模投資を行うことへの抵抗感もある。
モナコが重要な交渉の場に
現時点では最終決定には至っていない。
ただし各メーカーによる妥協点探しは続いており、モナコで行われる協議が重要な転換点になる可能性がある。
現在はメルセデスとレッドブル・パワートレインズが当初案を支持し、アウディとホンダが妥協案を推進。フェラーリは依然として反対姿勢を維持しているが、最終的には妥協案側へ加わるとの見方もある。
最大の敵は時間だ。
交渉が長引けば長引くほど、2027年に向けた設計変更の余地は失われていく。今回の議論は単なる出力配分の問題ではなく、F1の次世代パワーユニット時代の勢力図そのものを左右する重要な分岐点となりそうだ。
カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟) / F1マシン
