F1スキッドブロック規定改訂 チタン継続も火災対策でステンレスを予備指定

今年4月のF1日本GPでは、いくつかのマシンのチタン製スキッドブロックが乾いた芝生に引火し、フリー走行中に複数の赤旗中断を引き起こす事態が発生。FIAはこれを重く見て、代替素材の導入を検討してきた。
特に2025年のレギュレーションでは、マシンが従来より低い車高で走行可能となり、地面との接触頻度が増すため、スキッドブロックの火災リスクが高まっていた。
チタン継続も、ステンレスを予備指定「スズカ再発時は即時切替」
FIAは、バルセロナでの実走評価を踏まえて以下のような声明を出した。
「バルセロナでのステンレス製スキッドブロック試験結果を分析した結果、TD015で示されていた実施計画を見直した。
今シーズン残りのレースでは、現行のチタン製スキッドブロックを引き続き義務付けとする。ただし、日本GPのような芝生火災が再発した場合には、ステンレス製の使用を義務化する可能性があるため、全チームは常に両方の素材を持参するよう求める。
また、今後の一部イベントではステンレス製スキッドブロックの追加試験を継続し、評価を進める。」
これにより、現時点での実戦使用は見送られたものの、再発リスクを踏まえた“即時切替”体制が整えられた形だ。
ただし、ステンレス製スキッドブロックはチタンよりも重く、空力バランスや摩耗特性に影響を及ぼす可能性があり、各チームにとっては開発・輸送面での負担増となる。
特に、低車高セッティングに依存するチームほど影響を受けやすいとの見方もある。

主要チーム代表は冷静な反応「技術的影響は限定的」
一方、FIAの柔軟な対応について、スペインGP前の記者会見に登壇した主要チームの代表者らは比較的冷静な見解を示している。
スクーデリア・フェラーリのフレデリック・バスール代表はこう語る。
「重要なのは、摩耗の違いや影響をきちんと理解するための時間を確保することだ。FP1を1回ないし2回利用して、チームが評価できるようにする必要がある」
また、マクラーレンF1のアンドレア・ステラ代表は、今回の素材変更が競技勢力図に与える影響については軽微だとみている。
「これが話題になったとしても、それは“シャボン玉”のようなもので、(以前の)フロントウイング柔軟性に関するTD(技術指令)ほどの影響はないと思う」
「素材を変えれば摩耗率が下がる一方で、スパーク(火花)も減る。今回の変更は、火災を防ぐ目的で導入された措置であって、パフォーマンスや順位に与える影響はごく小さいと見ている」
柔軟性を増すF1技術規則 2025年型の“安全と性能の両立”象徴に
今回の決定は、2025年のF1におけるレギュレーション運用の特徴――すなわち「状況に応じて即応的に調整を行う姿勢」を象徴するものとも言える。
現時点ではチタン製スキッドブロックが継続されるが、安全面での懸念が再燃すれば即時ステンレスに切り替えられる体制が整った。今後も一部のプラクティスセッションでは、評価目的でステンレス素材がテストされる予定だ。
競技性と安全性のバランスを図りながら、F1は次の進化フェーズへと歩みを進めている。
カテゴリー: F1 / FIA(国際自動車連盟) / F1マシン