アストンマーティンF1の親会社に“上場廃止危機” 非公開化観測が浮上

同社は2025年第3四半期において「2025年下半期のフリーキャッシュフローはプラスを見込めない」と発表しており、卸売台数は前年比で中〜高い1桁台の減少を見込む厳しい状況が続く。
“非公開化”の可能性とサウジPIFの関与
関係筋はアストンマーティン・ラゴンダが「近い将来に上場を取り下げる可能性がある」と指摘している。
非公開化は、煩雑な四半期報告や情報開示義務から解放され、経営判断を迅速化できる利点があるため、選択肢として浮上しやすい。
英Financial Timesは、会長ローレンス・ストロールがサウジアラビア政府系ファンド「PIF」と予備的な協議を行ったと報じている。
PIFはすでにアストンマーティン・ラゴンダ株の19.5%を保有する主要株主だが、PlanetF1.comの問い合わせに対し「非公開化に向けた協議は行っていない」と否定した。
現在の主要株主は以下の通り。
■ PIF:19.5%
■ シュウ・フー・リー(Geely/Volvo会長):14.09%
■ エルネスト・ベルタレッリ:13.82%
■ メルセデス:7.547%
“上場維持の負担”が企業を追い詰める構造
デリストは「事実上の撤退」ではなく、企業戦略上の再編という側面もある。
上場企業には以下のような負担が存在する:
■ 四半期ごとの財務報告義務
■ 一定の株価・財務基準の維持
■ 投資家向け開示を通じた“絶え間ない監視”
アストンマーティン・ラゴンダは、こうした義務が経営の足かせになっている可能性があり、非公開化によって「株主構造の変更や事業再構築がより柔軟になる」と専門家は指摘している。
F1チーム株を売却し現金確保 ― だが抜本対策には至らず
2025年第3四半期、同社はF1チームのマイノリティー株を1億800万ポンドで売却し、グループ流動性は約2億5000万ポンドまで改善した。
ただし企業価値は全盛期の49.5億ドルから8.93億ドルへと大幅に縮小しており、財務再建には依然として課題が多い。
ロードカー部門は依然としてアストンマーティンF1の商業パートナーとしてブランド契約を継続するものの、経営面では完全に切り離されている。
また、2024年〜2025年に深刻化した米国の関税問題や中国市場の低迷も重荷となっており、事業環境の改善が見えづらい状態だ。
CEOホールマーク「製品計画の見直しに着手」
アストンマーティン・ラゴンダCEOエイドリアン・ホールマークは、Q3決算発表に際し次のように述べた。
「今年は米国の関税や中国の弱含む需要など、大きなマクロ経済的逆風に直面している。これに対応するため、コストと投資を最適化しつつ、革新的でクラスをリードする製品を提供するため、将来の製品サイクル計画を見直している」
非公開化を巡る報道について、PIFはPlanetF1.comからの再問い合わせに応じずコメントはなかった。
カテゴリー: F1 / アストンマーティンF1チーム
