F1 フェルナンド・アロンソ、ラリーレイド初の実戦で“横転”&“鳥と衝突”
フェルナンド・アロンソとマルク・コマは、9月13日(金)と14日(土)にかけて南アフリカを舞台に行われたラリーレイド「リヒテンバーグ400」にTOYOTA GAZOO Racingのトヨタ・ハイラックスで出場し、2020年のダカールラリー参戦に向けて貴重な経験を重ねた。アロンソとコマのスペイン人コンビは、今大会への参戦に先立って実施されたナミビアとポーランドでのテストセッションを順調に終え、南アフリカ・クロスカントリーシリーズの第5戦となる今大会で、ハイラックスによる初のラリーレイド実戦出場を果たした。

9月12日(木)は、実際にラリーで走るコースの一部を用いた300kmに及ぶシェイクダウンが行われ、様々な路面でのトレーニングをこなした。2人は更なる走行を重ね、特にコマはラリー中に用いられるコース図や車載ナビゲーションシステムへの習熟を高めていった。

13日(金)はプロローグランが行われ、本戦でのスタート順が決定された。55kmで競われるプロローグランを、10番手でスタートしたアロンソとコマは、前走車が巻き上げる砂埃に苦しめられながらも序盤からハイペースでの走行を続け、前走車をパス。以降は砂埃の少ない中でタイムを上げた。アロンソとコマのハイラックスは、トップと32秒差の3番手タイムをマーク。彼らよりも上位につけた2台は、同じハイラックスを駆るヘンク・ラテガンとジニエル・ド・ヴィリエールだった。

14日(土)、3番手から本戦のスタートを切ったアロンソとコマのハイラックスは、スタートから27km地点で転倒を喫し、フロントガラスを破損。これを取り除くための作業でタイムをロスしてしまった。その後、2名はフロントガラスのないまま、最初のループセクション190kmの残りを走り続けた。砂埃の中で視界を確保すべくゴーグルをかけての走行となったが、良い区間タイムをマークするなど好走を見せた。

昼にTOYOTA GAZOO Racingのサービスへと戻って来たハイラックスは、フロントガラスを交換。限られた時間の中で車体のダメージ修復も行った。イベント主催者の判断により、午後の2度目のループセクションは埃の少ない先頭でのスタートを切ることとなった。

2度目のループセクションでは、スタートして5km地点で鳥が衝突して再びフロントガラスを破損。しかしアロンソとコマはこのような厳しい条件下でもドライブとナビゲーションを続け、190kmのセクションを走破。区間タイムでも速さを見せ、総合16位でフィニッシュした。

アロンソとコマはこのリヒテンバーグ400で、トウモロコシ畑、起伏に富んだ草原、干上がった川の横断など様々なコンディションのコースを走破し、トータル728kmにわたる走行トレーニングをこなした。しかし、走行距離以上に重要なのは、この新たなスペイン人コンビが、ラリーレイドというこれまでとは異なるモータースポーツのカテゴリーに挑戦し、実戦で経験を積んだことだ。

リヒテンバーグ400で優勝したのは、TOYOTA GAZOO Racing South Africaのドゥヴィリエとナビゲーターのデニス・マーフィのコンビ。2位もチームメイトのラテガンとナビゲーターのブレット・カミングスだった。この結果により、今季の南アフリカ・クロスカントリーシリーズにおいてラテガンとカミングスはドライバーとコ・ドライバー、そしてトヨタはマニュファクチャラーのシリーズタイトルを、最終戦を待たずに確定した。

アロンソとコマの次なるトレーニングブログラムは、10月3日(木)から9日(水)にモロッコのフェズ近郊で開催されるラリー・モロッコ。昨年の同大会では、ダカールラリー2019の勝者であるナッサー・アル-アティヤとナビゲーターのマシュー・バウメルが、TOYOTA GAZOO Racing South Africaのハイラックスで2年連続となる勝利を飾っている。

ダカールラリーの前哨戦的な位置づけとなる2019年ラリー・モロッコのコースは、5つのコンペティティブ・ステージが全てフェズをスタートしてフェズへと戻る、クローバーの葉を思わせるレイアウトとなる。総走行距離は2500kmで、そのうち1868kmがタイムドスペシャルステージ(競技区間)として競われ、荒れたグラベルや砂丘横断など、様々な状況での走破力と、難しいナビゲーションが求められる。

グリン・ホール(チーム代表)
この週末、我々はフェルナンドのスピードと、マルクのコ・ドライバーとしての能力の高さを確かに証明しました。様々なことが起こった週末でしたが、彼らにとってかけがえのない経験を積むことが出来たでしょう。我々は、世界最高のレーシングドライバーが経験したことのない世界で戦うために最短での準備を行う必要があります。世界で最も厳しいモータースポーツのひとつであるダカールラリーに、わずか5か月の準備で挑むには、多くの課題が待ち受けています。プロローグランでフェルナンドは、世界レベルに匹敵する南アフリカでも最高のドライバーたちと遜色ない速さを持っていることを示してくれました。このレベルのスピードで戦えるようになるまでの、急速な成長の途中では逆境に見舞われることもありますが、それは間違いなく経験しておかなければならないもので、大きなレースで起きても驚くことではありません。今日のフェルナンドとマルクの判断は本当に印象的でした。彼らはトラブルに見舞われた後クルマに戻ると、砂埃の中でフロントガラスのないまま最初のループセクションを走り抜き、2度目のループセクションは壊れたフロントガラスを手で押さえながらステージの大部分を走り抜きました。

フェルナンド・アロンソ
クルマに乗るたびに、常に何かを学び、どんどんハイラックスに馴染んでいます。残念ながら今日は我々にとって厳しい一日となってしまいました。午前中、我々は転倒でフロントガラスを破損してしまいました。それにより視界が悪化してしまったので、我々はフロントガラスを取り払いました。その後の走行はゴーグルをして、ほかの車両が巻き上げる砂埃の中を走ることとなりました。午後のループでは主催者が先頭でのスタートを許可してくれたので、クリアな視界で走行することが出来ました。数km走行したところで、フロントガラスに鳥が衝突して再びフロントガラスを破損してしまいました。その後は、200km近くの間、片手でフロントガラスを押さえ、もう片手でステアリングを握っての走行を強いられました。最高の一日だったとは言えませんが、ハイラックスで多くの距離を走破出来、今後の重要なレースへ向けて良い経験を積むことが出来ました。

マルク・コマ
昨日は好調だったのですが、今日はとても大変な一日でした。スタートは順調だったのですが転倒を喫してしまい、その後は走り切ることに専念しました。午後は更なる経験を積むために新しいフロントガラスを装着しましたが、数km走ったところで鳥が衝突し再びフロントガラスが破損しました。風と砂埃が車内に侵入し、最後まで走り切るのは本当に困難でした。フロントガラスを押さえながら、同時にナビゲーションも行うのは容易ではありませんでした。そんな状況でもフェルナンドと共に最後まで走り抜きました。今日我々は多くのトラブルに直面したにもかかわらず、長距離を走れたことは貴重な体験です。この経験の全てが我々にとって糧となるはずです。

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カテゴリー: F1 / フェルナンド・アロンソ / トヨタ