マックス・フェルスタッペン、インディカー王者パロウに「F1転向はやめておけ」

パロウは過去5年間のインディカーにおいて、まさにフェルスタッペンがF1で果たしてきたような存在だ。
2025年シーズンも圧倒的な強さを見せ、17戦中8勝を挙げ、勝率はほぼ50%に到達。さらに、史上初のスペイン人として第109回インディアナポリス500マイルレースを制した。
ヨーロッパのジュニアフォーミュラから日本のスーパーフォーミュラを経てインディカーへと渡ったパロウは、当初F1参戦の夢を抱いていた。しかし、フェルスタッペンはポッドキャスト『Pelas Pistas』で次のように語っている。
「F1で走るチャンスを得るに値するかって? もちろんそうだと思う。でも僕が彼の立場なら行かないね。なぜ行く必要がある? 勝てるチャンスを持って、しっかり稼げるドライバーなんてほんの一握りなんだ。人間は生きていかなきゃならないし、お金も稼がなきゃいけない。支配的な立場にいられるなら、良い生活を確保できる。わざわざそれを捨ててまで数年間のリスクを負う理由はない。どうせトップチームから始めるわけじゃないし、むしろ逆に悪い方向に転がることもある」
フェルスタッペンは続けてこう付け加えた。
「もちろん、『もういいや、挑戦してみよう』って思うのもひとつの選択だけどね」
パロウはかつてマクラーレンとインディカーとF1の両立契約を結んでいたが、約束不履行を巡って関係が悪化し、マクラーレン側が2,000万ドル(約30億円)の損害賠償訴訟を起こしている。裁判は先週ロンドンで最終審理を終え、結果待ちの状態だ。

フェルスタッペン「パロウ獲得はレッドブルの方針に反する」
今年8月、レッドブルが2026年のマックス・フェルスタッペンのチームメイトとしてアレックス・パロウを検討しているという報道がインディスター紙で流れた。当時、角田裕毅がパフォーマンスに苦しんでいたことから、パロウの名が浮上したが、本人とチップ・ガナッシ代表はすぐにこれを否定している。
フェルスタッペンは同ポッドキャストで、トップF1チームがパロウにアプローチしない理由を問われ、レッドブルのジュニアドライバープログラムの存在を指摘した。
「いくつかのチームにはジュニアプログラムがある。僕たちのチームでも、時々プログラム外のドライバーを起用することもあるけど、それを繰り返したら何のためのプログラムなのか分からなくなる。だからある程度は方針に忠実でいないといけないんだ」
とはいえ、フェルスタッペンは「パロウのような才能がF1チームの関心外なのは奇妙だ」とも感じている。
「確かに少し変だとは思う。でも僕が彼の立場なら、もうF1を目指すことすら考えないね。ただ、もし本人が本気で信じていて『やってみたい』と思うなら、それはそれでいいと思う」
今年のインディ500優勝後、パロウはインタビューで「もうF1には興味がない」と語り、自らの居場所をインディカーに見出したと明かしている。
フェルスタッペンの視点:安定と栄光のバランス
フェルスタッペンのコメントには、トップドライバーとしての現実的な視点が表れている。彼はパロウの才能を高く評価しつつも、「安定した成功を維持すること」と「夢への挑戦」の間にあるリスクを冷静に見極めている。レッドブルのジュニア育成哲学を踏まえれば、パロウのような“外部からの即戦力”獲得は構造的に難しい。
フェルスタッペン自身もレッドブル育成の純粋な成果としてF1の頂点に立っただけに、その発言にはチーム哲学への忠誠と、同業者への現実的な助言が込められている。
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