フェラーリF1技術陣の思考を変えたロイック・セラの発想と2026年設計哲学
フェラーリの2026年F1プロジェクトに関して、前向きな兆しが伝えられている。ロイック・セラは、プロジェクトにおいて「純粋なパワー」中心の発想から、「システム全体の効率」を重視する思考様式への転換を提案した。

この方針は承認され、実際に技術陣によって新車の設計思想として実装されている。新たな規則体系に挑むうえで、あえて踏み込んだ決断だ。

フェラーリがロイック・セラを信頼する理由
ロイック・セラはスクーデリア・フェラーリのテクニカルディレクターだ。マラネロ加入当初、彼に想定されていた役割は現在とは異なっていた。実際、当時そのポストはフレデリック・バスールが暫定的に兼任していた。その後、他チームからトップクラスの技術者を引き抜く試みが実らず、フェラーリは方針転換を決断する。

これが、加入から約1年2か月が経過した現在に至るロイック・セラの立ち位置だ。期待値と比べると、これまでの成果は必ずしも際立っていたとは言い切れない。ただし、問題の多かったSF-25は彼の統括下で生まれたマシンではなく、その点を踏まえれば、ナンシー出身のフランス人技術者に対する信頼が揺らいでいないのも当然だ。2025年シーズンにおいて、タイヤ関連の貢献が十分でなかったという評価があるにせよ、だ。

タイヤ問題とセラの経歴が示すもの
セラはミシュランで15年間勤務したのち、メルセデスに移籍し、ブラックリー拠点で車両ダイナミクス部門の中核を担った。そこでの評価は高く、専門性は疑いようがない。一方で、2025年型フェラーリはシーズンを通してタイヤマネジメントに苦しみ続けた。これは否定しようのない事実だ。

そもそもフェラーリは、タイヤを適正な作動領域に入れ、それを維持する能力を欠いていた。状況を好転させるのは容易ではなく、しかも作業の大半は2026年型マシンに割かれていた。この点を踏まえると、新レギュレーションに向けてセラに託す判断は、理にかなっている。

創造性を重視する2026年型フェラーリの技術姿勢
近年の議論で明らかになっているように、フェラーリは2026年型マシンを設計するにあたり、いくつかの明確な軸を据えている。そのひとつが、タイヤコンパウンドを最大限に活用できる能力の確立だ。マシンが路面と接する唯一の要素であるタイヤを使い切ることは、不可欠な課題となる。

この文脈で注目されるのが、フロントサスペンションの柔軟性に関する取り組みだ。動的キャンバーを積極的に扱うため、前輪サスペンションの特性に手が加えられている。キャンバー制御は、タイヤの挙動に応じてサスペンション全体を最適化し、グリップと安定性を高める鍵となる。

セラは最近、レギュレーションの「グレーゾーン」を抜け道ではなく、創造性を発揮する機会だと語っている。ここで言う柔軟性は、カーボンファイバーの積層構造により、異方性を持たせることで実現される。

この手法により、サスペンションアームはFIAの静的検査には適合しつつ、荷重方向が変わった際には制御された変形を示す。結果として、規則の枠内で性能を引き出す余地が生まれる。この発想こそが、2025年に欠けていた先見性だ。

スクーデリア・フェラーリ F1

過去を断ち切り、2026年に備える論理
失敗した技術的選択を忘れることは前進の条件だが、その経験は将来の修正点を教えてくれる。2025年に導入されたフロントのプルロッド化は、新たな設計思想への扉を開く試みだったが、結果的には機能しなかった。

SF-25には他にも構造的欠陥があり、それが開発計画を破綻させた。だが2026年の規則はまったく異なる領域を提示している。重要なのは、初年度から大きな成長余地を持つ技術的ダイナミクスを正確に捉えることだ。

2022年のF1-75は序盤戦で高い競争力を示したが、開発余地は限られていた。その反省を踏まえ、現在セラが率いる技術陣は、2026年規則初年度に向けた進化志向の設計論理を選択している。バスールも、新世代マシンの性能曲線は急峻になると繰り返し強調してきた。

避けるべき失敗と他チームの成功例
最後に重要なのは、創造性と現実の裏付けをどう両立させるかだ。大胆な発想は必要だが、事実に支えられていなければ逆効果になる。

その好例がマクラーレンだ。ロブ・マーシャルは2024年からマクラーレンF1のテクニカルディレクターを務め、アンドレア・ステラ自身が認めるほど、チームの思考様式を一変させた。元レッドブル・レーシングのDNAを、リスク管理と開発手法の両面で持ち込んだ形だ。

このアプローチは、2026年以降のフェラーリにも導入されると見られている。戦略的・運用的にリスクを特定し、評価し、管理・軽減する体制だ。マクラーレンやレッドブルと同じ水準でそれを実行できるかどうかが、ロイック・セラ率いるフェラーリの真価を決めることになる。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / スクーデリア・フェラーリ