フェルスタッペン F1の冷却ベスト義務化案に猛反発「選択の自由が必要だ」

2023年のカタールGPで酷暑によりエステバン・オコンがコックピット内で嘔吐し、ランス・ストロールが意識を失いかけたことを受け、FIAは2024年シンガポールGPで「ヒートハザード」を宣言。最大50メートルのチューブを通して冷水を循環させる専用冷却ベストの装備を義務付けた。
「ヒートハザード」宣言は今週末のF1アメリカGPでも発令され、FIAは2026年以降、これを正式にルール化する方針を示している。
しかし、ドライバーの多くはベストの着用を不快に感じており、導入には慎重な姿勢を示している。
フェルスタッペン「FIAは安全を持ち出すが優先順位が違う」
フェルスタッペンはシンガポールGP前のメディア取材で、冷却ベストの義務化に断固反対の立場を表明した。
「僕はそのベストを使ったことがないし、使うつもりもない。これはドライバー自身の選択であるべきだと思う」とフェルスタッペンは語った。
「もちろんFIAは安全のためだと言うだろうけど、安全面で改善すべきことは他にもたくさんある。たとえば特定のサーキットのピットエントリーとかね。そっちの方がよっぽど優先順位が高いと思う」
「僕は体にチューブを巻きつけるのが嫌なんだ。ハーネスのすぐ横にチューブがあるのも気に入らない。『設計が悪い』と言う人もいるけど、そうは思わない。これはあくまでドライバーが選択できるようにすべきだ」
「好きな人もいれば、嫌いな人もいる。それでいいじゃないか。選択の自由があってしかるべきだ。今年はまだ使わなくてもいいけど、おそらく来年は義務になる。正しい方向だとは思わない」
「GTカーやプロトタイプのようにスペースがあるならいいけど、F1のコックピットはとても狭い。チューブや機材を置く余裕なんてほとんどないんだ」
「それにドライアイスをどこに置くんだ? そもそもマシンはそんなスペースを想定して設計されていない。15〜20周もすれば冷却効果も切れて、あとはぬるま湯かお茶のような状態になるだけだ」

ラッセルも慎重「完璧な解決策ではない」
GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)のディレクターを務めるジョージ・ラッセルも、冷却ベストの導入について慎重な見解を示した。
「完璧な解決策とは言えない。しかも実際にテストできるのはレース環境だけなんだ」とラッセルは語る。
「バーレーンでは問題なかったし、サウジアラビアでも快適だった。でもシンガポールのような高温下では、ドライアイスがあっという間に溶けてしまう」
「チームは車体の冷却自体を大きく改善してくれた。以前はコックピット内に60度を超える熱気が流れ込んでいたけど、電装ボックスや120度に達する油圧ラインの位置を少し変えるだけで、熱の影響は大幅に減ったんだ」
冷却ベスト義務化は再考されるべきか
FIAが掲げる「安全の徹底」は理解できるが、フェルスタッペンが指摘するように、冷却ベスト義務化には構造的・実用的な課題が多い。狭いF1コックピットに追加装備を組み込むことは容易ではなく、性能への影響も懸念される。
また、ドライバーの体格や好みによって適性が異なるため、「選択制」とする案も十分に現実的だ。安全性と自由のバランスをどう取るか──F1の“ヒートハザード”対策は、2026年に向けて重要な議論の焦点となりそうだ。
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