WEC:トヨタ7号車がポール・トゥ・ウィンで今季2勝目 / スパ6時間
FIA世界耐久選手権(WEC)第3戦スパ・フランコルシャン6時間の決勝が4月29日(土)にベルギーで行われ、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)のGR010 HYBRID 7号車がポール・トゥ・ウィン。最後列からスタートした8号車は猛烈な追い上げを見せ2位でフィニッシュし、トヨタは開幕戦以来、今季2度目の1-2フィニッシュを達成した。

小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスのGR010 HYBRID 7号車は、アクシデントの多発するレースでポール・トゥ・ウィンを達成し、トヨタは開幕戦セブリング、第2戦ポルティマオに続き、今季開幕から3連勝となった。

セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮のGR010 HYBRID 8号車は、予選でのアクシデントにより最後列グリッドからの追い上げを強いられたが、見事に2位でフィニッシュ。ドライバーズ選手権では2位の7号車に5ポイント差で首位を守っている。

トヨタは、これでスパ7連覇を達成し、マニュファクチャラー選手権では2位のフェラーリに対し、33ポイントへとリードを拡大して、全7戦で戦われている2023年シーズン中盤戦となる第4戦、6月10日(土)から11日(日)にかけて行われるル・マン24時間100周年記念大会へと臨むことになる。

チームの本拠地があるドイツ・ケルンから僅か120kmしか離れていない、1周7.004kmの壮大なスパ・フランコルシャン・サーキットへ多くのチーム関係者とその家族も含む7万2千人もの大観衆が現地を訪れ、今季最多となる13台のハイパーカーを含む、37台のレーシングカーによる迫力のバトル、また、読めない「スパ・ウェザー」と様々なチーム戦略、そして、数多く発生したアクシデントと、今大会も多くのファンの皆様を魅了した。

雨はほぼ止んでいるものの、路面はウェットで、コースのライン上は乾いてきているところもあるというタイヤ選択が悩ましい状況で、午後12時45分にレースがスタート。フォーメーションラップ中にもコースアウト車両が続出し、フォーメーションラップをもう1周延長し、2周目から本格戦が開始された。

7号車のコンウェイはスリックタイヤでのスタートを選択し、ポールポジションからスタートを切るも、レインタイヤを装着した後続勢にかわされ、7位へと後退。しかし、タイヤが十分に暖まると追い上げを開始した。一方、最後列36番手からのスタートとなった8号車は、こちらもスリックタイヤを選択し、ブエミが序盤から猛プッシュ。1周で15ものポジションアップを果たした。

その後開始10分でセーフティカーが導入されたが、レースが再開されると2台のGR010 HYBRIDは猛プッシュでポジションアップ。7号車のコンウェイは僅か2周で首位を奪還。8号車のブエミもGTとLMP2クラスの車両をかわし、10周目には7位へ。勢いの止まらない8号車は、グリッケンハウスとポルシェ5号車もかわし、4位で最初のピットストップへと向かった。

首位を行くコンウェイは、一時2位のキャデラック3号車に30秒ほどの差をつけたが、レース開始から1時間半が経過したところで、このキャデラック3号車がクラッシュ。この日2度目のセーフティカー導入となった。これにより8号車は3位へ。2時間を過ぎると、今度は2位のポルシェ6号車がトラブルでコース上にストップ。GR010 HYBRIDは1-2体制となった。

7号車はロペス、8号車は平川が中盤を担当。車両のバランスに苦しむ8号車の平川に対し、7号車のロペスは順調にリードを広げ、その差は1分ほどにまで広がった。しかし、レースが3時間半の折り返しを過ぎる頃、3度目のセーフティカーが導入され、上位勢のマージンは帳消しに。残り2時間を切り、僅差で首位を行く7号車はロペスから小林へと最後のドライバー交代。8号車は平川からハートレーへと交代し、2台の首位争いになるかと思われたが、再度セーフティカーが導入され、このバトルは中断。

レースが再開されて残り45分、先に7号車の小林がピットへ向かい、最後の給油とタイヤ交換を行い、翌周に8号車ハートレーもピットイン。ハートレーは小林の前でコースへ復帰したが、小林がファステストラップの走りでこれをかわし、首位を奪還。さらにハイペースで走行を続け、8号車との差を広げていった。

小林の7号車は、低温で滑りやすく難しいコンディションとなった6時間レースで148周を走り抜き、トップでチェッカー。今季2勝目を挙げました。7号車から16.637秒遅れてハートレーの8号車がチェッカーを受け、トヨタは開幕戦以来今季2度目の1-2フィニッシュ。トヨタは、6月10日(土)11日(日)に行われるル・マン24時間レースへ向けた完璧な勝利を収めることができた。

小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー)
チーム全員が素晴らしい仕事をしてくれたおかげで、最高の結果を得ることができました。チームと、今回の結果を達成するために大変な努力でサポートしてくれたみんなに感謝します。ここスパをGR010 HYBRIDで走るのはとてつもない体験で、特に大観衆が見守る中では格別でした。今日は特に、ここスパではこれまで見たことがないほどの大観衆で、多くの応援を感じることができました。今大会は、特にタイヤマネージメントの面で難しい挑戦となりました。新品タイヤは素晴らしいグリップ力を発揮してくれますが、摩耗してくるとどのくらいプッシュできるか判断するのが難しくなります。困難なレースだったことを考えれば、トラブル無く、1-2フィニッシュを果たせたのは本当に嬉しいです。私のスティントでは、8号車とのバトルになり、チームメイト同士の戦いということで簡単ではありませんでしたが、良いレースを見せられたと思います。ル・マンでもこの勢いが維持できることを望んでいます。

マイク・コンウェイ(7号車 ドライバー)
大変なレースでしたが、我々2台共に素晴らしい結果になりました。レーススタート時のタイヤ選択が難しかったですが、恐らくもう雨は降らないだろうと思っていました。とにかく全力でコース上に留まり、トラブルなく生き残らなくてはなりませんでした。スタート直後は大きく順位を落としましたが、コースが乾き始めると、我々のタイヤ選択が正しく、前走車をパスしていくことができました。レースは順調でしたが、後続とのギャップを築いた途端にセーフティカーが導入され、そのギャップが失われてしまうので大変でした。我々はピットの判断も良く、可夢偉とホセも素晴らしい走りで最後までプッシュしてくれました。また、8号車も素晴らしい走りで2位に入り、チームとしてこのような結果が得られて本当に満足しています。

ホセ・マリア・ロペス(7号車 ドライバー)
こんな難しいレースで、チームとして1-2フィニッシュが果たせて本当に嬉しいです。いつも通りスパはコースコンディションが難敵でした。我々はまだ濡れているところが残っている路面でスリックタイヤスタートという難しい選択をしましたが、マイクが素晴らしい走りをしてくれたおかげで、それが実を結びました。また、耐久レースでは良くあることですが、今日のレースは様々な感情が湧く展開となりました。首位で充分なリードを保っていたと思っていたら、セーフティカー導入でそれがゼロにリセットされてしまったり、後続車が自分のクルマよりも良いタイヤを装着し、それを抑えなくてはならないこともありましたが、エンジニアやピットクルー、そして、マイク、可夢偉と、もちろん8号車のチーム全員が最高のパフォーマンスを発揮してくれました。この週末は、ハードに働き続けた全員のためにも、本当に素晴らしい結果です。簡単なことではありませんでしたが、努力が報われました。

セバスチャン・ブエミ(8号車 ドライバー)
最高の追い上げで2位フィニッシュを果たせました。36番手グリッドからのスタートで2位まで順位を上げ、最後は勝利を争っての2位というのは、本当に素晴らしい結果です。優勝した7号車は完璧なレースを展開していましたし、チームのためにも本当に嬉しいです。波乱のレースで、特にスタート直後のウェットコンディションは大変でしたが、トラブルに見舞われないよう、慎重に順位を上げていきました。6月のル・マンへ向けて良い準備になったと思います。

ブレンドン・ハートレー(8号車 ドライバー)
我々は大幅なポジションアップを果たし、チームにとっても最高の結果となりました。セバスチャンは難しいコンディション下で素晴らしいスタートを切り、見事に順位を上げました。タイヤ選択は本当に難しかったですが、結果的には正しい判断でした。7号車は、特にレース中盤では我々8号車よりも僅かにペースが良く、優勝に値する走りでした。我々の2台は異なる方向性のセットアップであったこともあり、終盤、可夢偉に付いていくことはできませんでした。我々は予選のアクシデントでタイヤを1セット失っていたこともあり、2位でフィニッシュし、多くのポイントを獲得できたことに本当に満足しています。

平川亮(8号車 ドライバー)
スターティングポジションを考えれば、とても満足のいく結果です。簡単ではないレースウィークでしたが、決して諦めることなく戦い続けました。エンジニア、メカニック、そして、もちろん素晴らしい走りをしてくれたセバスチャンとブレンドンの全員へ、本当に感謝しています。残念な結果となった予選のあとに取り戻すことができた、みんなの頑張りによる素晴らしい結果です。チームの1-2フィニッシュは完璧で、ル・マンへ向けた最高の準備になったと思います。ル・マンが今から楽しみです。

トヨタ WEC(FIA 世界耐久選手権)

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カテゴリー: F1 / トヨタ / WEC (FIA世界耐久選手権)